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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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一年生の原稿を添削するぞ!・・・身内だからこそ厳しく指導しないと!なぁなぁだと二人の為にならないぞ!

「はい、添削できました。読んでみるね。

 “大人気のシェフ山本のどら焼きは、どうしたら手に入るのか。

 皆さんは、東和市内で人気のケーキ屋シェフ山本をご存じでしょうか?大変おいしいケーキを作るお店なので、東和高校の生徒の間でもよく話題に上ります。しかし、東和生が問題だと感じているのは、この店の人気商品である洋菓子風どら焼きが手に入らないことです。

 どの生徒に聞いても、何時も売り切れていて食べたことが無い、と言う人ばかりです。一体、どうすれば手に入るのでしょうか。

 実際にお店のパテシエ山本さんに何故何時も売り切れなのか、その理由を聞いてみました。山本さんによれば、毎日作ってはいるが、人気商品なので午後1時には売り切れてしまっているとのことでした。

 私達高校生は夕方にならないと買いに行けないので、夕方まで買えるようにもっと増産できないかと聞いてみました。

 残念ながら山本さんのお答えは、無理だと言うものでした。その理由は、ご夫婦で経営している小さな店なので、一日で作れるお菓子の総数は三百個が限界で、今以上どら焼きの生産数を増やすのは無理だからとのことでした。

 どうしても手に入れたい人は、休みの日の朝、開店時間の三十分くらい前から並ぶしか方法はなさそうですね。”・・・これでどう?」

 うん?なんか新鹿さん、絶望したような顔をしているな・・・。

「・・・先輩・・・原型を留めていません・・・。」

 あぁ、そういうことね。頑張って書いた内容を否定されたようなものだから・・・それであんな顔をしてるんだ。

「でも、比べてみてどっちの方が良かった?」

「うっ・・・先輩の方です。」

「でしょ?アナウンス原稿は、何についてこれから伝えるのかを、まず最初に表題として書くの。

 次に何故伝える内容を調べることになったのかを書いて、その後それをどう調べたのかを書く。今回はインタビューをしているから、その内容を簡潔に判り易く書くのよ。

 インタビューした時、相手のしゃべっている内容は、よく時系列が前後してたり、重複してたり、言葉足らずなところがあったりするから、聞き手にとって判り易いように整理してあげると良いのよ。何も相手のしゃべったまんまを書かなきゃいけない訳じゃないから。ただし、相手がしゃべってない内容を捏造したり創作したりしたら駄目だからね。これは注意すること。

 最後に結論を書いておしまい。制限時間から考えて四百字だと少ないし、六百字だと多すぎるから、五百字以内にまとめるといいよ。」

「はい・・・判りました・・・自分は全然至らないですね・・・。」

「何言ってるの!誰だって初めての時は要領を得ないのが当たり前よ。しょげない、しょげない!これからたくさん書いていけば、どんどん上手くなるよ!」

 私の言葉を聞いて、新鹿さんはちょっとばかし元気になったように見えるな。うんうん。彼女にもこれから色々と経験して強くなっていって欲しいよね。・・・まぁ、若輩者の私が言うのも何だけどさ・・・。

「さて、次は神志山さんの原稿か・・・えーと。」

 “勉強に行き詰まった生徒を対象に、個別指導塾を経営しているのは柳本茂さんです。

 柳本さんは、十年間有名進学塾の講師をしていたのですが、塾の授業について行くことができない生徒が次々に辞めていく姿に常に疑問を感じていたそうです。

 そこで、五年前に独立し、もっぱら学校の復習や定期考査対策の授業を行う、いわゆる補習塾を始めたそうです。

 柳本さんの塾の方針は、決して見捨てないことだそうです。

 どんな子も、時間を掛ければ理解できると言う信念のもと、柳本さんはこれまで多くの子供たちをみてきました。

 かく言う私も柳本さんの塾に通っていました。

 柳本さんは何時も根気強く、子供たちに向き合ってくれます。子供たちのつまづいているところは様々です。柳本さんは、一人一人、それぞれの個性や能力に合わせて指導方針を考えて指導しています。画一的な授業をすればよい進塾と比べると準備も授業も大変ですが、学校についていくことができるようになり、希望する進路に進むことができる様子を見ると、疲れも吹っ飛ぶそうです。

 是非、これからも頑張って欲しいと思います。”

 ・・・。

「先輩、いかがでしょうか?」

 神志山さんが私の顔を覗き込むようにして聞いてきた。

「うーん・・・文章が駄目・・・。えーとね、具体的にどこが駄目か説明するね。

 えーと、終わりが“だそうです”になっている文章が連続し過ぎ。同じ文末を繰り返し用いるのは悪手だよ。そもそも、原稿の内容は伝聞じゃ無く、柳本さんに直接確認したんでしょ?なら、事実なんだから“だそうです”は変だよ。

 それに、神志山さんがこの塾に通っていた、って文章が入っているけど、このエピソードの続きが書かれて無いから、なんで入っているのか判んないよ。どうしても入れたいんだったらこの話を展開させないと・・・。

 あと、これは人によるかもしれないけど、最後の“是非、これからも頑張って欲しいと思います”ってとこは、私には上から目線に見えるから、ちょっと不快かなぁ。」

 あちゃー。明らかに神志山さんも落ち込んでるよ。でも、身内だからこそ厳しく指導しないと。なぁなぁでは、彼女の為にはなんない。

「じゃぁ、新鹿さんの原稿と同じように、添削してみるからね。」

 私は赤ペンを持って書き直しを始めた。

 ・・・・・・。

「よしっ!添削できた!読んでみるね・・・。

 “落ちこぼれた生徒を一人でも多く救いたい。そう語るのは、個別指導の塾を経営している柳本茂さんです。

 柳本さんは、十年間有名進学塾の講師をしていました。しかし、塾の授業について行くことができない生徒が次々に辞めていく姿に疑問を感じ、五年前に独立しました。

 彼が作ったのは、進学を目的とはしない、もっぱら小中学校の授業内容の復習や定期考査対策を行う塾でした。

 塾の方針は、決して見捨てないと言うこと。どんな子も時間を掛けて教えれば理解できると言う信念のもと、柳本さんは何時も根気強く、子供たちに向き合ってくれます。

 子供たちがつまづいているところは様々です。柳本さんは、子供たち一人一人を分析して、それぞれに合わせた方針を考えてから指導しています。

 受験の為の画一的な授業をすればよい進学塾と比べると、柳本さんの塾は、準備も指導も大変です。

 しかし、学校の勉強についていけるようになった子供たちの姿を見ると、そんなことは苦にならないそうです。

 柳本さんは、子供たちのために、今日も熱い授業を行います。”

 ・・・どう?」

「・・・先輩!凄いです!・・・私のと比べて、圧倒的に判り易かったです。・・・なるほど・・・私の文章が下手だってことがよく判りました。」

 神志山さんの顔を見ると、お世辞ではなく本当にそう思っている、って表情をしているな。よかった、よかった。私の添削も満更ではないってことでいいよね。

「二人とも、私が添削した文章で完成ってことでOK?それとも未だ何か足したり引いたりする?」

「いえ!先輩の添削してくださったもので充分です。」

「はい、私も。」

「うん、うん。それじゃぁ、Nコン用の原稿用紙に清書してね。その後読みの練習だよ。」

「「判りました!」」

 その後、二人とも無言になって、ひたすら原稿用に転記している。本当に今年の一年生は熱心だなぁ。私も見習わないと・・・。

「先輩!できました!」

「私も!」

「うん、うん。では、読みの練習をしようか。」」

 私は、そう言いながら戸棚からストップウォッチを取り出した。

「はい、お待たせ。それじゃぁ、まずは新鹿さん、読んでみて?」

「はい!それでは・・・。

 “大人気のシェフ山本のどら焼きは、どうしたら手に入るのか。

 皆さんは、東和市内で人気のケーキ屋シェフ山本をご存じでしょうか?大変おいしいケーキを作るお店なので、東和高校の生徒の間でもよく話題に上ります。しかし、東和生が問題だと感じているのは、この店の人気商品である洋菓子風どら焼きが手に入らないことです。どの生徒に聞いても、何時も売り切れていて食べたことが無い、と言う人ばかりです。一体、どうすれば手に入るのでしょうか。

 実際にお店のパテシエ山本さんに何故何時も売り切れなのか、その理由を聞いてみました。山本さんによれば、毎日作ってはいるが、人気商品なので午後1時には売り切れてしまっているとのことでした。

 私達高校生は夕方にならないと買いに行けないので、夕方まで買えるようにもっと増産できないかと聞いてみました。残念ながら山本さんのお答えは、無理だと言うものでした。その理由は、ご夫婦で経営している小さな店なので、一日で作れるお菓子の総数は三百個が限界で、今以上どら焼きの生産数を増やすのは無理だからとのことでした。どうしても手に入れたい人は、休みの日の朝、開店時間の三十分くらい前から並ぶしか方法はなさそうですね。”・・・どうですか?」

 私はストップウオッチに示された時間を見ながら答えた。

「時間は“一分二秒”・・・駄目ね。全然早過ぎる。」

「早いですか・・・?」

「うん。早過ぎ。・・・原稿を貸して。私が一度読んでみるから。・・・計時を宜しく。」

 そう言って、私はストップウォッチを新鹿さんに手渡した。

「はい、判りました。」

「使い方は判る?」

「えっと・・・このスイッチを押せばいいんですよね?」

「そう。止める時はもう一度押せばいい。一度やってみて?」

 新鹿さんは、カチカチと何度かスイッチを押してみてから頷いた。

「はい!大丈夫です。判りました。リセットは、こっち側のスイッチを押せばいいんですね?」

「そう。・・・それじゃぁ、やってみますか・・・。」


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