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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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皆の参加部門が決まった。神倉先輩も参加するって。うん!俄然楽しみになってきたぞ。よーし!まずは、原稿作成だぁ!

「さぁて、一年生の諸君!部門は決まったかな?」

 次の日、響子ちゃんが挨拶抜きで、いきなり一年生に参加する部門の確認を始めたのだった。

「はい!私はアナウンスで参加します。」

 新鹿さんはやっぱりアナウンスか。何となくそうだと思ってたんだよねぇ・・・。彼女のイメージは朗読よりも断然アナウンスだ。

「私もアナウンスで!」

 おお!神志山さんもアナウンスなのか。これは意外だった。

「私は朗読で。」

「私も、です。」

 波田須さんと二木島さんは朗読か。じゃぁ、丁度二人ずつか。二人なら私だけでも指導できるかな・・・。

「と、なると・・・新鹿さんと神志山さんの指導を私が担当するから、波田須さんと二木島さんの指導は響子ちゃんと紙織ちゃんに任せてもいいかな?」

「おお!任せとけ!」

「ドルフィンちゃん、二人も受け持って大丈夫?」

 響子ちゃんはいつも通りのノリで答えてくれたけど、紙織ちゃんはちょっと心配そうな顔をしている。

「まぁ、大丈夫っしょ。」

「うん、なら良いけど。」

 突然、扉がノックされた。・・・いったい誰だろう?

「はい、どうぞ。開いてますよ。」

 扉を開けて入って来たのは、神倉先輩だった。

「お邪魔するわね。」

 うーむ、やはり先輩がいると、その場がぱーっと明るくなるような気がするなぁ。

「せ、先輩!な、何か御用ですか?」

「何って、昨日の返事を持って来たのよ。」

「わざわざ来て頂かなくても。此方から伺いましたのに。」

「只でさえ世話を掛けているのに、そこまで甘えてられないわ。・・・それで、結論だけど、三年生で参加するのは私だけ。部門はアナウンスで。」

「えっ?先輩だけなんですか?」

「そうらしいわ。皆、受験勉強で忙しいからって言い訳してたけど、本当のところは、二年生に勝てないからでしょうね。」

「私達に?」

「そう。あの子達は貴女達みたいに真面目に練習して来なかったもの。実力差は歴然だから、恥を掻きたくないんでしょう。」

「そうなんですか?うーん・・・でも、三年生は最後のNコンなんだから出ないのは損だと思うんですが・・・勿体無いなぁ・・・。」

「栗須さんだからそう思えるのよ。真剣に取り組んで来たからこそ、そう思えるんでしょうね。でも、あの子達はそうじゃないのよ。」

「・・・判りました。他の先輩方は残念ですが・・・私としては、神倉先輩と一緒に出られるので、とっても嬉しいです!」

「ふふっ・・・そう言ってくれると、私も嬉しいわ。お互い頑張りましょうね。」

「はいっ!頑張ります!」

「それじゃぁ、私は執務に戻るから。西町先生への報告はお任せしていいかしら?」

「はいっ!これからすぐに職員室に行ってきます!」

「ふふっ、お願いね。」

 神倉先輩は、そう言うととんぼ返りで生徒会室に戻って行った。相変わらず、生徒会長って忙しいんだなぁ・・・Nコンの練習、できるのかなぁ・・・でも、まぁ、先輩のことだから心配はいらないか・・・。

「じゃぁ、私、西町先生のところに行ってくるね。」

「宜しく。」

 響子ちゃんと紙織ちゃんが手を振ってくれた。

「「「お願いしますっ!」」」

 一年生の元気な声。うむ、盛り上がって来たぞ!いよいよNコンだぁ!

 ☆

「いい?アナウンス部門の原稿は、あくまでも校内放送を前提としたものだから。同じ高校生達に向けて情報を伝達する内容でないといけないの。因みに、これが去年私が書いた原稿よ。」

 そう言って、私は新鹿さんと神志山さんに去年のNコンで使った原稿を見せた。

「・・・先輩、この内容のソースはどうなさったんですか?」

 流石は新鹿さん。内容を鵜吞みにはしない、その態度や良し!

「これは実際に去年の二年生全員にアンケートを取って集計したものなの。当時の生徒会長と書記の先輩が協力してくれたから出来たことだけどね。」

「えっ?!本当に二年生全員にアンケートを取ったんですか?」

「そうだよ。アナウンスの原稿はきちんと調べた事実を述べたものでないといけないの。想像や推測で書いては駄目なんだよ。」

 私の答えを聞いてから、新鹿さんはしばらく考えた後、再度質問してきた。

「原稿は、アンケートを基にしたものでないと駄目なんですか?」

「いやいや、そんなことは無いよ。こっちは2月のコンテストで読んだ原稿だけど・・・。」

 そう言いながら、今度は二人に2月のコンテストの原稿のコピーを見せた。

「これは松永寺のお坊さんへのインタビューと、当時の書道部の部長さんへのインタビューを基に書いたものなんだ。きちんと当事者にインタビューをすれば、裏付けが取れた事実だから問題ないよ。」

「へぇー、インタビューですか。」

「原稿の書き方はいろいろあるけど、アンケートを基にしたものとインタビューを基にしたものが最もポピュラーかなぁ。他人によっては文献を調べて書いたものもあったよ。」

「ぶ、文献ですか?なんか、難しそうですね。」

「アンケートにしても、インタビューにしても、文献にしても、結局はどれもこれも事実を裏付けるためのものだよ。どう裏付けるかにその人の個性が出るんだよね。」

「なるほど・・・自分に合った方法で裏付けを取ればいいんですね?」

「そう言うこと。取り敢えず、書きたい事を考えてみて。自分が疑問に思っている事、不思議に思っている事、気になる事、何でもいいんだから。」

「判りました。」

「神志山さんも判った?」

「はい、よく判りました。」

「では、取材活動開始!」

 ☆

「先輩!インタビューしてきました!」

「私も!」

 って!?えっ!もう?まだ三日しか経ってないよ。どうなってんの???

「は、早いねぇ二人とも・・・で、原稿は起こしたの?」

「はいっ!これです!」

 新鹿さんが両手で持った原稿用紙を差し出した。

「私のはこれです!」

 まったく同じポーズで神志山さんも原稿を差し出した。

「うん。では順番に読んでみようか。まずは新鹿さんのから。」

 どれどれ・・・。

 “皆さん、市内でも有数の乗降者数を誇る駅、学園前の近くにあるケーキ屋さん、シェフ山本をご存じでしょうか?

 そうです。あのいつも行列ができている店です。

 私達は、この店オリジナルの洋菓子風どら焼きを買いにしょっちゅう行くのですが、何時も売り切れた後で、手に入った試しがありません。一体、何時買いに行けば良いのでしょうか?閉店直前の漸く行列が途切れたときを見計らって、パテシエの山本さんに何時買いに来れば手に入るのかを聞いてみました。

「人気商品だからねぇ、何時も遅くても1時頃には無くなってしまうねぇ。午前中に来てくれれば、あると思うよ。」

 午前中ですか。夕方まであるように、もっと増産できないものでしょうか。聞いてみました。

「他の商品も作らなきゃいけないからね。うちは夫婦でやっている小さな店だから、一日に作れるお菓子は、300個が限界だから、どら焼きだけ増やすのは無理だなぁ。」

 どうやら、無理のようです。頑張って、朝から並ぶしかないようですね。

「お客さんは、朝何時ぐらいから並んでいるんですか?」

「まぁ、都会の店とは違って、そこまでの列はできないからねぇ。開店時間の30分くらい前からかねえ。」

 頑張れば、無理ではなさそうです。皆さん、頑張りましょう!”

 ・・・これは・・・まるでアナウンス原稿になっていない!

「新鹿さん・・・これじゃぁ、まるでワイドショーのグルメコーナーだよ。」

「え?駄目ですか?」

「はい、駄目です。そもそも、何を伝えたいの?」

「えっと、シェフ山本の洋菓子風どら焼きをどうやったら買えるか、です。」

「どうしてその情報を伝えようと考えたの?」

「はい、友達皆がどうやったら買えるんだろう、って何時も話していたので。」

「なら、前提としてその事を入れないと・・・。何で調べることになったのか、って言うのは重要だよ。

 それから、テレビドキュメントでは無いんだから、インタビューの時の台詞をそのまま書かなくていいの。大意をまとめて、肝心なところを判り易くまとめないと。」

「そうなんですか?」

「うん・・・ちょっと待っててね。添削してみるから・・・。」

 うーん。こりゃ随分と手直しが必要だぞぉ・・・。

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