皆で台本内容の検討だ!番組作りは皆でやるから楽しい!楽しいからモチベーションが上がるんだよ!
「台本ができたよぉ!」
無事書道部の動画は完成した。
次の目標は、Nコンテレビドキュメント部門に出す動画の作成だ。そのための台本を、週末を利用して書き上げて来たのだ。
「うむ。では、早速読まして貰おうではないか。」
「響子ちゃん、今のはあんまし時代劇風じゃなかったね。・・・はい、これ。先生に頼んで、人数分コピーしてもらったからね。皆一部ずつ取って。」
鞄からコピーの束を取り出して机の上に置くと、新鹿さんがおずおずと聞いてきた。
「私達もいただいていいんですか?」
「勿論。一年生の分も刷って貰ったよ。」
一年生達の表情がぱぁーと明るくなった。うん、今から制作にも慣れてもらわなくちゃあね。
「少し時間を取るから、皆じっくりと読んでみて。その上で意見を出し合うからね。」
皆が台本を読んでいる間に、ホワイトボードとポストイットの準備をした。ホワイトボードには、台本のあらすじを時系列に沿って書き並べていった。
①書道部の日頃の活動の様子
②書道展等、通常の展覧会やコンクールの様子
③書道パフォーマンスの練習の様子
④書道パフォーマンスとは?
⑤書道部部長へのインタビュー。書道パフォーマンスを始めた切っ掛け、動機は?
⑥書道部顧問へのインタビュー。パフォーマンスへの参加についてどう思うか?
⑦昨年度の結果
⑧参加部員へのインタビュー
⑨今年のブロック大会突破を目標に頑張っている姿
これが、今回私が書いた台本のあらすじだ。
「皆、読めたかな?それじゃぁ、意見のある人はポストイットに書いて、意見のあるパートの所に貼っていってね。」
早速、響子ちゃんと紙織ちゃんがポストイットに意見を書き始めた。うん?一年生に動きが無いぞ。
「一年生も意見を出してくれていいのよ。」
四人は互いの顔を見合わせていたかと思うと、新鹿さんが代表して発言した。
「いえ、私達は未だよく判っていませんので。そもそも、どう意見すればいいのかも判りません。今回は勉強のため、黙って見学させていただきます。」
うーん、そう言うものかぁ・・・。まぁ、番組制作の経験がなければ、仕方ないかぁ・・・。
「判った。じゃぁ、今後の為に私達のやり方を見ておいてね。」
その間に、響子ちゃんと紙織ちゃんはホワイトボードに次々とポストイットを貼り付けていた。
「では、検討を始めましょうか。まずは番組の冒頭部分・・・何々、“③と④を冒頭に持ってくる”か・・・二人とも同じ意見なんだね。」
響子ちゃんが腕を組んだまま、うーんと唸った。
「正確には、ちょっと違う。③をそのままじゃぁなく、先週私達が作った動画の一部を冒頭に持ってくる、って言う意見だよ。」
「私も同意見。書道パフォーマンスのカッコいいシーンをいきなり見せることで、視聴者の関心を引けるんじゃないかな。」
紙織ちゃんも響子ちゃんの意見に賛成のようだ。
「では、シーンを組み換えようか。①にパフォーマンスの本番動画を持ってきて、②にパフォーマンスの説明を入れる、ってことでOK?」
二人ともうんうんと頷いている。よし、ここは変更だ。
「次に・・・えーと、“パフォーマンスの説明部分の画をどうするか?”か・・・。これは?」
私の問い掛けに響子ちゃんが答えた。
「これはねぇ、全国大会のスナップ写真や動画を使用する許可は果たして下りるのか、ってこと。著作権や肖像権を考えると難しいんじゃないかなぁ?」
すると、紙織ちゃんがスマホを取り出して、何やら検索を始めた。やがて、スマホを操る手が止まった。
「大会のホームページを見てみると、“画像等提供に関しては、注意事項がありますので、必ずご確認の上申請書の提出をお願いします。なお、報道機関や出版社など、企業への提供専用です。一般の方への提供は行っていませんので予めご了承ください。”って書いてあるね。私達は企業じゃないから提供は受けれないってことになるね。」
あぁ、なるほど、大会のホームページを検索してたのか。
「うーん・・・許可を取るのは難しいってことかぁ・・・。」
「他校の写真や映像を使うのは難しいってなると、うちの書道部の映像を効果的に使って説明するしかないね。」
響子ちゃんが妥協案を出してくれた。
「カッティングと台詞回しが重要になるなぁ・・・。視聴者に判り易く、且つ見ていて飽きないフィルムにしなきゃ・・・。」
「私達のセンスが問われる訳ね。頑張ろう!」
「そうだね。作り甲斐があるわね。」
うん!響子ちゃんも紙織ちゃんもやる気十分だ!そう、出てくるいろんな問題を解決していくのも番組制作の醍醐味ってもんだよね。
「次に③に変更となった書道部の日頃の活動の様子と、同じく④になった書道展等、通常の展覧会やコンクールの様子については、えーと、“できるだけ短くまとめるか、場合によってはカットする”、か・・・。」
はいっ!と紙織ちゃんが手を挙げた。
「これを書いたのは私。書道パフォーマンスに焦点を当てた番組だから、他の情報はできるだけ入れない方がいいと思うの。」
「そうだね。他の情報は番組の内容を薄くしてしまうよね。」
響子ちゃんも賛同している。
「うーん・・・よし!思い切ってカットしてしまおう。書道パフォーマンスに特化した内容にすると言うことで・・・。」
私はホワイトボードの③と④を赤ペンで上から線を引いて取り消した。
「次は、“⑥はいらないのでは?”か・・・。これの根拠は?」
はい!とまた紙織ちゃんが手を挙げた。
「これも、③と④を消したのとよく似た理由。大曾根さんがこの番組の主人公だから、他に主役っぽいキャラクターは出さない方がいいと思う。」
「なるほど・・・先生を出すと目立ってしまうから、主人公とバッティングさせないためにも出さない方がいい、と言うことでOK?」
紙織ちゃんはうんうんと頷いた。
「インタビューは全て大曾根さんに集中する方がいいと思う。」
私は、⑥にも取り消し線を入れた。
「さて、次は・・・“準備について、もっと丁寧に描こう”・・・か、これの意味は?」
今度は響子ちゃんが手を挙げた。
「はい!③と④を消したんだから、パフォーマンスが出来上がっていく過程を丁寧に描いたらどうかな?」
「こんなに苦労して、こんなに頑張って、完成に至りました、って感じに?」
「そうそう!ラストで、ようやくこんな風な形になりましたよ、って。」
「パフォーマンスが完成していく過程を追う形の番組にしよう、ってことね。紙織ちゃんもそれでいい?」
「異議無し。」
「それじゃぁ、⑦の後に、⑨の内容として、“書く言葉の選定”、“書く和歌の選定”、“個々の書道部員の練習の様子”、“パフォーマンスの手順の打ち合わせの様子”、“全体練習の様子”、“BGMを使ってのリハーサルの様子”、で、最後に“本番の様子”を順番に編集するってことでOK?」
私はしゃべっている内容をホワイトボードに赤で書きまくりながら、二人に了承を求めた。
「OK!」
「私も。」
二人の賛同を得られたので、今日の第一回制作会議はこれで終了だ。
「よし!じゃぁ、これを元にして台本を書き直すね!」
「よろしく。」
「ドルフィンちゃん、ガンバ!」
「一年生もご苦労様!どうだった?制作会議は。」
いきなり話を振られて、神志山さんは慌てていた。
「あわわ・・・べ、勉強になりました。」
それに対して、新鹿さんは落ち着いて返答してきた。
「想像していたのと違いました。こんな風に皆さんで考えて作るんですね?」
うん?どうやって作ると思ってたんだろう?・・・でも、まぁ、知らないよね。考えてみれば、私達も去年までは知らなかったんだから。
「そう。番組は一人で作るものでも、作れるものでもないの。集団で作るものなのよ。“三人寄れば文殊の知恵”って言葉があるでしょ?皆で考えるからいいものができるのよ。」
「確かに、皆でこうやってワイワイと会議しながら作るのって、楽しいですよね?」
そうなんだよ、二木島さん!楽しいんだよ!君!判ってるね!
「そう!楽しいの!楽しくないと、番組作りなんか続かないよ。他の人も是非楽しいって思えるようになって欲しいな。」




