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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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動画が完成した!でも、三パターン作ってしまった・・・よし、書道部の皆さんにどれにするか決めてもらおう!

「土台はベタ撮りだよねぇ。」

「ねぇ、ここに字を書いている所のアップを入れない?」

「その前に、全身が映っているカットを入れて、それからアップを挿入したら自然な流れにならない?」

 何時もの発声練習を終えた後、私達は動画編集を始めていた。書道部の皆さんは頑張ってくれた。彼女らの期待に応えねば。

「桑畑先生に教わったように、編集によって動画が煩くならないようにしないとね・・・。」

 真帆ちゃん達高倉高校の面々とは違って、私達は未だ素人に毛が生えたようなものだ。響子ちゃん、紙織ちゃん、私の三人で知恵を出し合って頑張るのだ。

 三人であーだこーだ意見を出し合って奮闘すること三日、遂に動画が完成した。でも、これで終わり、ではなかった。私達は未だ編集における客観的な視点が十分に備わっていなくて、上手く最適解を見つけることができなかった。その結果、編集の異なる動画が三種類も出来上がってしまった。この中から提出する作品を一本だけ選ばなければいけないんだよ・・・どうしよう・・・。

 私と紙織ちゃんが頭を抱えていると、腕を組みながら唸っていた響子ちゃんが、きっ、と顔を上げたかと思うと、意見を述べ始めた。

「書道部の部員さん達と顧問の三野瀬先生に見比べて貰って、評価の一番高かったものを全国大会の申し込みに使ってもらう、ってことでどう?これは、私達にとってもすっごい勉強になるよ。どう編集したら番組を高く評価してもらえるかが判るんだから!」

 私と紙織ちゃんに異議は無かった。

「じゃぁ、早速職員室に行って、三野瀬先生に頼むとしますか。」

 私達は三人揃って職員室を訪れた。

「失礼します。二年八組の栗須入鹿です。書道の三野瀬先生はおられますかぁ?」

「はい!・・・どうしたの?」

 職員室の入口に立って声を掛けると、三野瀬先生がすぐに返事をしながら出て来てくれた。

「お忙しいところ、すみません。実はお願いがあるんですが・・・。」

「お願い?何かしら?」

「はい。書道パフォーマンスの動画が出来上がりました。」

「えっ!?もう出来たの?流石ねぇ。有り難う。助かったわ。」

「いえ、出来上がりはしたんですが、お願いって言うのは、その動画についてなんです。実は、編集中に様々な意見が出た結果、三本の異なる動画が出来てしまったんです。そこで、書道部員さん達と先生と私達とで見て、どの動画が一番良いかを決めたいんです。その時間を設けてもらえますか?」

「なーんだ、そんなこと?お安い御用よ。なんなら今からでもいいわよ。」

「本当ですか?有り難うございます。では、どこで見ましょうか?」

「データはどこにあるの?」

「物理室に置いてある放送部のパソコンです。一応バックアップのために外付けハードディスクにも保存していますが・・・。」

「では、物理室で見ましょう。あそこには電子黒板もあるし。書道部の皆を連れてお邪魔するわ。」

「では、私達は電子黒板で鑑賞できるように準備しておきます。」

 職員室を辞した私達は、急いで物理室に戻った。

「先輩!慌ててどうしたんですか?」

 新鹿さんが心配して聞いてきた。

「これから、書道部の人達が動画を見にくるのよ。済まないけど、手伝って!」

 私と響子ちゃんがパソコン内のデータをフラッシュメモリーに移している間に、紙織ちゃんと一年部員で電子黒板を教卓の真正面に移動させてくれた。立ち上げた電子黒板にメモリーを差し込んで、メモリー内のデータが再生できるかどうかを確認しているところに、三野瀬先生が書道部員さん達と共にやってきた。

「栗須さん、お邪魔するわよ。」

「はいっ!今、起動確認中です!皆さん、電子黒板が見える席に座って待っていてください。・・・えーと、ちゃんと動いているよね?」

 不安になって、紙織ちゃんに聞いてしまった。ああ、こうなると判っていたら鯨山君達に来てもらっておいたんだけどな・・・。しくじった・・・。

「うん。大丈夫。ちゃんと再生出来てるよ。」

 紙織ちゃんの言葉を聞いて、ようやくほっとできた。

「よし・・・えー、書道部の皆さん、お待たせしました。書道パフォーマンスの動画を上映します。ただし、今回は私達の力不足で三種類の動画が出来てしまいました。これからその三本を連続で流しますので、どの動画が一番提出するのに相応しいかを皆さんに決めて貰いたいと思います。宜しくお願いします。では、上映します。」

 再生ボタンを押すと、書道部員から、“おぉー!”と言う声が上がった。しかし、その後は皆さん言葉を発すること無く、真剣な眼差しで動画を見てくれた。

 三本の動画を見終えて、ようやく皆は口を開いた。そこからは怒涛の勢いで議論が交わされ、私達はなすすべが無く、その波が収まるのを待つしかなかった。

 そうこうする内に意見がまとまったようだ。部長の大曾根さんが代表して答えてくれた。

「お待たせしました。書道部としては三本目の映像を提出したいと思います。先生もそれでよろしいですか?」

 三野瀬先生は、しばらく目を泳がした後に、絞り出すような声で答えた。

「わ、私は、皆の意見を尊重するわ。・・・栗須さん、三つ目の動画のデータを戴ける?それで申し込みます。」

 うーん。どうやら三野瀬先生は三本の動画の違いがあんまし判っていないみたいだ。動画を上手く撮れないって言ってたのは謙遜ではなかったみたいだなぁ・・・。

「判りました。このメモリーに今見ていただいた三本の動画データが入っています。これをお貸ししますので、間違えないように確認した上で送ってください。」

 私は電子黒板に挿していたメモリーを抜いて、先生に手渡した。

「あ、有り難う。お借りするわね。」

「ところで、書道部の皆さん!なぜ三本目を選んだのか、理由をお聞かせいただけますか?」

 そうなのだ。上映会を開いた真の理由・・・目的はこれなのだ!私は書道部員の方に向き直って、真剣な面持ちで頼んだ。

「え、えーと・・・。」

 大曾根さんは言い淀んでいる。変なことを言ったら失礼だと考えているのかな?

「皆さんの意見は、今後の私達の番組作りの参考になるんです。だから、厳しい意見、忌憚ない意見、批判、なんでも構いません。勉強になりますから、是非お聞かせください。」

「ちょ、ちょっと時間を戴いていいですか?皆の意見をまとめますから。」

 大曾根さんはそう言うと、書道部員さん達と再び怒涛の勢いで意見を交換し始めた。そんな中でメモも取っている。うーん、真面目な方だ。私としては凄く有り難い。

「お待たせしました。まとまりましたので、お伝えします。」

「はい!宜しくお願いします。」

「まず一本目ですが、ビデオとしては面白いと思います。」

「ビデオとしては・・・ですか?」

「はい。ビデオとして見ていて飽きないものだと思いますが、肝心の私達のパフォーマンスが判り難いものでした。個人個人のやってることはよく判るんですが、チーム全体がどのような動きをしているかが、判り難いと思ったんです。」

 あぁ、なるほど。凝り過ぎたんだ。作品としての面白さを優先してしまって、肝心の目的・・・書道パフォーマンスを審査員の方々に見てもらう、と言うことを見失っているんだ。これは、真帆ちゃんに顔向けできないなぁ・・・。

「・・・有り難うございます。二本目は?」

「二本目は、一本目と比べると、パフォーマンス全体が判るようになっていましたが・・・その、なんと言うか、見辛いと感じました。」

「見辛い・・・ですか?」

「はい。画像が度々左と右が入れ替わっていて・・・見ていて、なんて言うか、落ち着かないと言うか、流れが断ち切られているような・・・そんな感じがしました。」

 あっ!そうか!桑畑先生が、“インタビューの撮影中はカメラと被写体を結ぶ線を越えるな”って言ってた!何のことだろうって思ってたけど、こう言うことだったんだ。迂闊にアングルの左右を入れ替えると、見ている側に意味のない混乱を引き起こすんだ!

「あぁ、そう言うことだったんだ・・・。」

「えっ?何がですか?」

 おおっと、大曾根さんが私の独り言に驚いて聞き返してきたよ。ゴメンね。

「あ、御免なさい。私の独り言です。・・・では、最後に、何で三本目を選ばれたんでしょうか?」

「はい。三本目は、一見すると特に何の変哲も無いフィルムのようなんですが、私達がここを見て欲しいと思うところがきちんとアップになってました。編集されていることに気付かないで見てしまうような流れの自然さもありました。なので、三本目を選ばしてもらったんです。」

 あぁ、それって高倉高校で私達が感じたことと同じだ。これが編集の極意、ってものなのかなぁ・・・。常にこのレベルで編集できればなぁ・・・いや、今回は本当に勉強になった。

「有り難うございました。お蔭で編集と言うものがどう言うものなのか、少し判ったような気がします。これからNコンに向けて、書道パフォーマンスの番組も作ります。出来上がったら連絡しますので、また見てくださいね。」

「あぁ、前に言ってたコンテストですね。判りました。楽しみにしています。」

 私は大曾根さんとがっちり両手で握手した。彼女の手を握り締めていると、急にCDを借りっぱなしだったことを思い出した。

「おっと、忘れるところだった。お借りしていたCDです。お返ししますね。」

 あぁ、私も忘れていたよ、と言うようにはにかんだ表情を浮かべた大曾根さんにCDを手渡した。彼女は私達に向かって手を振りながら物理室を出て行った。後に続く書道部の皆さんも笑顔だった。うん、喜んでもらえて何より。この仕事を受けて正解だったな。

「本当に助かったわ。有り難う。私が想像していたのとはレベルが違っていたわ。やっぱり“餅は餅屋”なのね。これからも協力をお願いすることがあるかもしれないけど、その時もよろしくね。」

 そう言うと、三野瀬先生も上機嫌で職員室に戻って行った。早速、全国大会の申し込みをするそうだ。

「よーし!この経験を忘れない内に番組作りに活かそう!みんなぁ!Nコン用の番組制作を始めるぞぉ!」

「「「おーーーー!」」」

 ふふっ。一年生も一緒になって拳を振り上げている。うん、いい一体感だ!頑張るぞぉ!

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