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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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今日はパフォーマンスの撮影本番だ!書道部員さん達も気合十分だ!私達も頑張ろう!

 次の日の放課後、私達は再びクラブハウスを訪れた。

「「「おはようございまーす。」」」

「えっ!?えーと、今は放課後だよねぇ・・・???」

 私達の挨拶に大曾根さんが戸惑っている。あぁ、いかん、いかん。つい、癖で放送流の挨拶をしてしまった。

「あっ!御免なさい!これは放送界独特のルールで、時刻に関係なく常に“おはようございます”って挨拶するんです。つい何時もの癖でやってしまいました・・・部外者は戸惑いますよね、済みません。」

「へぇー、そうなんですね。初めてなんで驚きました。」

「ははは・・・すみません。今後、気を付けます。」

「それはそうと、此方の準備は整ってます。何時でもOKです。」

 ちらりと多目的室の中を覗くと、床一面に貼られた新聞紙の上に巨大な白い紙が広げられていた。その端っこの方で、書道部員さん達がバケツやプラスチック製のボールに墨汁を入れていた。

「あっ、はい!有り難うございます。こちらの準備も急ぎますね。」

 私達は一年生に手伝って貰いながら、昨日検討した位置に脚立を移動させた。一台は半紙の正面に、もう一台は半紙の対角線の延長線上に。私と響子ちゃんが各々の脚立に登った。卓上用の小さな三脚に固定したカメラを脚立の最上段に置いて起動させ、アングルとカメラの焦点を調節してみた。

「(うーん。もう少し離れた方が上手く入るかな・・・。)」

 私は一旦下に降りると、新鹿さんに手伝って貰って、更に壁際の方へと脚立を移動させた。響子ちゃんの方も神志山さんに手伝って貰って、やはり一mほど元の位置から移動させている。

 再び脚立に登ってカメラを構えてみた。うん!今度は良さそうだ。

「私の方はOKだよ!響子ちゃんの方はどう?」

 私と同じくカメラを構えてモニターを見ていた響子ちゃんは、しばらく間をおいてから手を挙げて“私の方もOKだよー”と返してきた。

「紙織ちゃんはどう?」

 紙織ちゃんは床面で半紙から十分に距離を取った真横方向で三脚に固定したカメラのモニターを確認していた。

「こちらはOKだけど、ドルフィンちゃんと響子ちゃんのカメラに私が入ってない?」

「私の方は大丈夫、入ってないよぉー。響子ちゃんの方はぁー?」

「私の方も大丈夫ぅー。」

 よーし!準備OKだ!

「大曾根さーん!放送部の準備ぃー完了しましたぁー!」

「判りましたぁー始めまーす!書道部員!位置についてぇー。」

「「「はーい!」」」

 おおっ!?書道部員さん達も気合が入ってるなぁ。今日は本番だから、皆さん弓道着を着用している。白の着物、黒の袴、そして襷掛けをしている。凛々しい姿だ。

 大曾根さんは全員が所定の位置に付いたことを確認すると、“気を付け!”と号令をかけて私の方にOKの合図を送ってくれた。

「それでは、キュー出ししまーす!3・・・2・・・1・・・キュー!」

 私の合図でパフォーマンスが始まった。

「県立ぅー東和高等学校ぉー書道部ぅー只今よりー演技を始めまーす。」

「礼っ!!」

 昨日と比べて、皆さん落ち着いて演技が出来ていた。二回目だからカメラにも慣れてきたんだろうな。昨日リハーサルをしておいて正解だった。

 やがて書が完成し、半紙が垂直に立ち上げられた。最後の台詞を順番に述べた後、全員が一礼してパフォーマンスは無事終了した。

「はいっ!カット!響子ちゃん、どうだった?」

「こちらはOK!問題なく撮影できたよ!」

「紙織ちゃんは?」

「こちらもOK。問題なし。」

 ほっとした。今日の分は責任を果たせたようだ。

「有り難うございました!本日の撮影は成功です!」

 書道部の人達もほっとした表情を浮かべていた。特に大曾根さんは泣きそうな顔をしていた。

「ベタ撮りは成功しました。明日は個人のパフォーマンスを大写しで撮りたいと思います。宜しくお願いします。」

「いえっ、こちらこそ。明日もお願いします。」

 クラブハウスを出た私達は、急いで物理室に戻り、パソコンにデータを移した。動画を24インチのモニターに映して確認したかったから。カメラの3インチモニターは小さすぎて細かいところが判らないからね。・・・うん。特に問題は無さそうだ。

「うん、大丈夫。三台とも上手く撮れてるね。」

「明日はクローズアップの撮影だね。」

 響子ちゃんが確認するかのように呟いた。

「うーん・・・カメラが三台あるから、二台が別々の人物を撮って、もう一台は手元のアップを撮らない?」

 紙織ちゃんがそう提案してきた。

「そうしたら、明日で撮影を終われるでしょ?」

 私と響子ちゃんは頷いた。

「じゃぁ、誰が大曾根さんの手元を撮る?」

 紙織ちゃんが、さっと手を挙げた。

「私が。」

「うん、判った。響子ちゃんは誰を撮る?」

「私は大曾根さんのクローズアップを撮るよ。」

「そう。じゃぁ私はその他の人のクローズアップを撮るね。」

 こうして明日の撮影の段取りも決まったのだった。

 ☆

「と、言う訳で、上手くいけば今日で撮影は終了です!」

「思ってたよりも早く終わりそうですね?」

 大曾根さんが目を丸くしながら言った。

「書道部の皆さんのお陰ですよ。一発でパフォーマンスを成功してくれましたから。もし、失敗したら、其の度に撮り直しになります。そんな時は、いつまで経っても撮影が終わりませんからね。」

「そう言って貰えると嬉しいです。練習を繰り返してきた甲斐がありました。」

 大曾根さんは口だけでは無く、本当に嬉しそうだった。

「それでは、書道部の皆さん!本日も張り切っていきましょう!」

「「「おー!!!」」」

「書道部員!位置についてぇー。」

「「「はーい!」」」

 大曾根さんの号令一下、部員の皆さんが整列した。彼女は全員が所定の位置に付いたことを確認すると、“気を付け!”と号令をかけて私の方にOKの合図を送ってくれた。

 私達も三脚に固定したカメラを起動し、位置に付いた。私が目で響子ちゃんと紙織ちゃんに“準備はいい?”と聞くと、二人とも大きく頷いた。

「放送部、準備できましたぁ。キュー出ししまーす!3・・・2・・・1・・・キュー!」

 私の合図でパフォーマンスが始まった。最初に両端の二人が前進を始める。私は右端の人に並行して移動し、彼女が書き始めると同時に撮影を開始した。彼女の全身をぴったりとフレームの中に納め、彼女が書きながら移動する速度に合わせて私も移動する。彼女が半分ほど書けたところで、次の二人が前進して書き始めた。その様子も順次カメラに納めていく。この後、いよいよ大曾根さんの出番だ。私は、響子ちゃんと紙織ちゃんの撮影の邪魔にならないよう、数m後ろに下がった。

 響子ちゃんと紙織ちゃんは二人並んで撮影を開始。大曾根さんが書いていく様子を通しで撮り続けた。一方、私は最後の半紙の立ち上げを撮影するため正面に移動していた。勿論、響子ちゃんと紙織ちゃんのカメラに自分が映らないように配慮しながらだ。カメラ位置を決め、フレームの大きさの調節を行って、その時を待った。

 やがて、書が完成し、半紙が垂直に立ち上げられた。予想通り綺麗にフレームに納まった。ばっちしだ。

「はいっ!カット!響子ちゃん、紙織ちゃん、そっちはどう?」

「こっちはOKよ!」

「私の方もOKです!」

「よしっ!書道部の皆さん、有り難うございました!今から撮影が上手くいったかどうか確認してきます。問題なければ、撮影は終了です!」

 大曾根さんも、他の部員の人達もほっとした表情をしている。

「「「有り難うございました!」」」

「お礼はまだ早いですよ。もし、今の撮影に問題があれば、撮り直しになりますから。確認して、撮り直しが必要かどうかすぐにお知らせしますから、しばらくお待ちください。」

 私達は急いで物理室に戻り、パソコンにデータを移した。24インチモニターに先ほど撮った動画を再生して確認を行った。

「うん。問題なさそうだ。」

「うまく撮れてるね。」

「じゃぁ私はクラブハウスに戻って、撮影終了をお知らせしてくるよ。」

「お願いね。」

「行ってらっしゃい!」

 私はクラブハウスに取って返した。大曾根さん達はちょっと不安そうに私を待っていた。

「OKですっ!撮影はこれで終了ですっ!」

「ほんとですか!?有り難うございます!」

「「「有り難うございますっ!!」」」

 皆さんとっても素敵な笑顔だった。やり遂げた感が凄く伝わってくる。でも、私達はこれで終わりではないんだ。

「では、私達は編集に入ります。あっ、と、もう一つ。編集に必要なので、BGMの音源を貸してもらえますか?」

「はいっ!勿論です。」

 そう言いながら大曾根さんは、壁にあるコンセントの傍に置いてあったラジカセの所に行き、中に入っていたCDを取り出して持って来てくれた。

「はい、これです。」

「有り難うございます。動画が完成したら、すぐに連絡させてもらいますから。」

「はいっ!よろしくお願いします!」

 私は手を振ってその声に答え、再び物理室へと急いだ。

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