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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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今日はPV・MV制作の技術を学ぶぞぉー!・・・えっ!?真帆ちゃん、ど、どうしたの!?

「今回の撮影の目的からして、まずは文字を書いている様子が時間軸に沿って判るように撮らなければいけないな。一回通しでベタ撮りをしなさい。ただし、同じ目線の高さで撮ると何をしているのかが判り難いし、どういう文字を書いているのかも判り難くなるだろうから、できれば高い位置から全体を見下ろすアングルで撮ると良いだろう。」

「高い位置、ですか?」

「そう。体育館なら二階の高さに相当する所にギャラリーが設けられているだろうから、そこから見下ろす形で撮ればいい。」

 むむ!桑畑先生は体育館で撮影が行われると考えてるみたいだ。しまったなぁ・・・最初に言っておくべきだった・・・。

「先生!うちでは体育館ではバレー部とバスケ部が常に練習してますから、書道部はクラブハウスの多目的室で練習しています。撮影もそこでやることになるかと思います。」

「えっ!?体育館じゃないのか?」

 私の言葉に、桑畑先生は一瞬固まった。

「はい。ただ、天井の高い部屋なので、高さは五m近くあると思います。」

 私の説明を聞いて、先生はしばらく考えていたけど、すぐに対応策を考えてくれた。

「うーん、では、二m以上の脚立を二つ借りなさい。一つはカメラマンが使って、もう一つはカメラの固定用に使うんだ。二mの高さは十分とは言えないが、ある程度の鳥瞰アングルを撮れるだろう。」

 なるほど!すぐに代替え案を思いつくとは、流石先生だ!

「判りました。やってみます。」

「では、次に移ろうか。一度通しでベタ撮りをしたら、何度もそれを見返して“全体の流れ”を把握しなさい。その上で、複数のカメラを用意して様々な角度からパフォーマンスの様子を撮影するんだ。」

 ・・・???さ、様々な角度?・・・むむ、よく判らないぞ。判らなければ、すぐに質問だ!私は、さっと手を挙げて、先生の説明を止めた。

「先生!“様々な角度”とは、具体的にどういうことでしょうか?」

「そうだな・・・渋川から今回の話を聞いてから、書道パフォーマンスがどんなものなのか、映像で何本か見てみたんだが、必ずどれも主となる文字を大きく書いていた。その場面では、その文字を書いている様子を大写しで撮るんだ。人物を大写ししたカット、文字を書いている手元を大写しにしたカットなど、考えうる限りいろんな角度、大きさで撮ってみなさい。編集の時に、それら複数のカットを音楽に合わせて編集すれば、全体的に動きのある動画を仕上げる事ができるからね。」

 先生は自分の言っているカットがどのようなものなのかを、ホワイトボードにささっと画にしながら説明してくれた。なるほど、そういうことだったんだ。

「ミュージックビデオをイメージしたら良さそうですね。」

「そうだ。撮影前に複数のミュージックビデオを見ておくといい。そうすれば、具体的な画が思い浮かぶようになるんじゃないか?」

「判りました。」

「最後に撮影した動画を楽曲に合わせて編集すれば完成だ。ただし、編集はし過ぎないように!」

「編集のし過ぎ?・・・ですか?」

「そうだ。やたらに凝った細かいカットを使いまくると、何を伝えたいのかが判らなくなる場合があるんだ。初心者に有りがちだから注意しなさい。」

 ???ん、ん?どういうことだろう?

「すみません、先生!よく判らないんですが?」

「うーん、言葉では上手く伝わらないか・・・。渋川!去年お前達が総文祭のために作った作品の最初のバージョンと、実際に総文祭に出品した最終バージョンを見せてあげなさい。」

 途端に真帆ちゃんの顔が青ざめ、さらにもの凄く焦っているなぁ、と言うことも伝わってきた。

「せ、せ、せ、先生!み、見せなきゃ駄目ですか?」

「ああ、具体例として見せるのに、あれが一番いいだろう。」

 それを聞いた真帆ちゃんは、がっくりと肩を落とし、ため息をつきながら、パソコンを操作して一本のビデオを再生した。

 ビデオのテーマは去年の県総文に高倉高校が出してきたビデオと一緒だった。ただ、編集が違っていた。やたらと細かいカットがこれでもかとつなぎ合わされていて、どう言うシーンがあったのかを覚えていられないし、そもそも内容が頭に入ってこない。

「どうだった?」

 再生が終わると先生が感想を聞いてきた。

「これでもか、と色んなカットが次々と出て来たので、何を表現したかったのかが判り難かった、です。それにカットを追うのに必死で、内容が頭に入ってきませんでした。」

 私の感想を聞くと、真帆ちゃんが更に顔を曇らせて肩を落とした。

「うむ。そうだな。こんなカットも撮りました、撮れるんですよ、と自己主張をし過ぎたため、作品として大事な“メッセージを伝える”ことが疎かになっているんだ。渋川、続けて完成版を再生しなさい。」

 今度は、総文祭で上映された作品が再生された。さっきのバージョンを見た後だと、恐ろしく洗練されて見えた。多くのカットが編集されていたけど、カットの切り替わりは気にならず、内容がすっと頭に入ってきた。

「すっきりしていて、内容が凄く判り易かったです。」

 見終わった後、私は感動していた。編集でここまで作品って変わるんだってことが良く判ったからだ。

「比較してみると良く判るだろう?作品にとって一番大事なのは“テーマを伝える”ことだ。自分たちの技術を見せつけるためのものじゃない。最初に見せたバージョンは、自分達が持つ技術をこれでもかと見る側に押し付けていた。だから、肝心の内容が伝わらなかったんだ。」

 私は納得して、何度も何度も頷いた。

「編集によって視る側を退屈させない、かといって編集によって視る側の邪魔はしない、ってことでよろしいでしょうか?」

「うむ。それでいい。」

 うーん、番組作りって奥が深いなぁ・・・ん、ん?真帆ちゃんが顔を手で覆い隠して床にしゃがみ込んでるぞ。

「ま、真帆ちゃん!大丈夫?」

「あーん・・・ドルフィンちゃんに見られてはいけないものを見られちゃったぁー。私は明日からどうやって生きていけばいいのぉぉぉー。」

「そ、そんな大げさな。」

「渋川!今のお前は、もうこんな失敗はしないじゃないか。お前はちゃんと自分の失敗を反省し、成長している!胸を張れ!」

「で、でも先生!いくら過去のこととは言え、友達に自分の黒歴史を見られたんですよ?恥ずかしくって・・・私は、ど、どうすれば・・・。」

 私は真帆ちゃんの前にしゃがみ込んで、彼女の手を取って握りしめた。手を除けた真帆ちゃんの顔は涙でぐしょぐしょだった。私は、ハンカチを取り出して彼女の涙を拭きながら言った。

「真帆ちゃん達高倉高校は、二月のコンテストにあんなに凄い作品を出してきたじゃない!誰だって最初から凄いものが作れる訳じゃないでしょ。誰にだって“最初”はあるし、その“最初”が他人に誇れるものじゃないかもしれない。けど、その過去があるから今の自分があるんだよ!」

「うむ。栗須は良いことを言うな。その通りだ。」

 桑畑先生も賛同してくれている。それを聞いて真帆ちゃんは顔を上げた。

「・・・うん。ドルフィンちゃん、泣いちゃってごめんね・・・そうか・・・過去の失敗も含めて自分なんだよね?」

「そうだよ!真帆ちゃんは私なんかと比べもんにならないほど凄いんだから。真帆ちゃんに恥ずかしがられたんじゃぁ、私なんか番組部門に参加できなくなっちゃうよ!」

「有り難う、ドルフィンちゃん。うん!私、もう過去の失敗を恥ずかしがらないよ。・・・先生も有り難うございます。これからも私、頑張ります!」

 真帆ちゃんも立ち直ったみたいだし、良かった良かった。それにしても、真帆ちゃんは繊細だなぁ・・・。私だったらこのビデオを自分の鉄板ネタとして使うのになぁ・・・勿体ない。

 それはそうと、もうこんな時間だ。そろそろお暇しなければ。

「桑畑先生!今日もご指導して頂き、有り難うございました!」

「お陰で良いビデオが撮れそうです!有り難うございました!」

 響子ちゃんと紙織ちゃんも、充実した時間を過ごせたって顔をしている。二人とも高倉高校に来ると凄い勉強になるって、いつも喜んでるもんなぁ。

「ははは、何時指導しても君たちの熱心さは羨ましい限りだ。うちの部員も見習って欲しいぐらいだよ。番組関係で困ったことがあったら、いつでも来なさい。」

「「「有り難うございます!」」」

「では、桑畑先生、今日はこれで失礼します。また、お世話になるかもしれませんが、その時は宜しくお願いします。」

「えぇー!ドルフィンちゃん、もう帰っちゃうの?!もっと、ゆっくりしてってくれればいいのにぃ。」

 真帆ちゃんは今回の私達の訪問が比較的短時間だったからか不満げだった。

「あはは、ゴメンね、真帆ちゃん。でも、今回は書道部の予選突破が懸かっているから、時間が惜しいんだ。」

「うーん・・・他のクラブの命運が懸かっていちゃぁ、仕方ないかぁ・・・責任重大だもんね。」

 うん。私もできればもっとゆっくり真帆ちゃんとお話したかったな。学校が違うから頻繁に会える訳じゃぁないし・・・。でも、責任感の強い真帆ちゃんは、他のクラブの為に動いている私達の立場を理解し、納得してくれた。いいお友達だ。

「うん。また今度ゆっくり遊ぼうね。今日は本当に有り難う!」

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