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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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書道の全国大会に申し込むためのビデオですか?えっ!私達が撮るんですか?せ、責任重大だぁ!

 一年生に基礎練習の指導をしている合間に、私達二年生はNコンの準備も進めていた。

 私はアナウンス原稿のネタを、響子ちゃんと紙織ちゃんは今年の課題図書を読み比べてどの本を選ぶかを考え始めていた。またそれと同時に、書道部への取材も進めていた。

「それじゃぁ、今から私達はクラブハウスに行くから。一年生は、今日はもう上がってもいいし、駄弁っていてもいいからね。」

 一年生達にそう言って、私達がカメラと三脚、マイクとレコーダーなんかを準備していると、おずおずと新鹿さんが質問してきた。

「あのぅ、先輩、何しにクラブハウスに行くんですか?そんな一杯道具を用意して?」

 あぁ、そう言えば一年生達には説明していなかったな。

「撮影だよ。書道部の先生からプロモーションビデオの制作を依頼されたんだ。」

「えっ?プロモーションビデオ???」

「そう。書道の全国大会の予選に出す動画を作って欲しいって言う依頼だよ。書道部には6月のNコンに出すドキュメント番組用の取材に協力してもらっているから、そのお礼も兼ねてるんだ。」

「えっ?ドキュメント?番組?えっ、何ですかそれ?」

「ええっとねぇ・・・Nコンは、アナウンスや朗読だけの大会じゃぁ無いの。ラジオ番組やテレビ番組の部門もあるんだ。私達は、アナウンス部門と朗読部門にエントリーするけど、それとは別に番組部門にもエントリーするつもりなの。」

「えっ?Nコンって、アナウンスの大会じゃぁないんですか?」

「あぁ、違う違う。Nコンは“アナウンスコンテスト”じゃなくて、“放送コンテスト”なの。“放送”と言葉の中にはアナウンスだけじゃなく、朗読、ラジオ番組、テレビ番組も含まれるんだ。Nコンはそう言った“放送”に関する総合的なコンテストなんだよ。」

「えっ?・・・あぁ!そうですね。確かにラジオもテレビも放送ですよね。私、勘違いしてました。放送部って、アナウンスだけかと思ってました。そうか・・・放送って結構多岐に渡っているんですね。」

「そう言うこと。実はうちの放送部は、長年アナウンスと朗読しかやってなかったんだけど、私達二年生は、折角だから番組制作もやってみたいって思って、二月の県コンテストから参加を始めたんだ。経験者がいない状態から始めたから、まだまだ素人の域は出ていないんだけどね。」

「えぇ?!やったことの無いジャンルを一から始めたんですか?凄くないですか?」

「あはははは。何言ってるの。何事も、一から始めるもんでしょ?勉強だって、スポーツだって、自分が始める時は一からじゃない?そりゃぁ、確かに独学よりも教えてくれる人がいた方が、上達は速いとは思うけどね。」

「えっ?!・・・あ、あぁ、そうか・・・そうですよね。」

「そう言うこと。・・・じゃぁ、私達は撮影に行ってくるから。」

「あっ!?待ってください、先輩!えーと・・・私も一緒に行っちゃぁ駄目ですか?」

「えっ?あぁ、別に構わないけど。」

「有り難うございます!えーと、私は先輩方について行くけど、波田須さん、二木島さん、神志山さんはどうしますか?」

 呆然と新鹿さんと私の会話を聞いていた他の一年生達は、突然名指しで話を振られたので、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。

「えっ、と、新鹿さんは番組作りにも興味があるんですか?」

 しばらくの間をおいてから、神志山さんが答えた。

「そうですねぇ・・・正直言うと、私は番組作りと言う存在をついさっき、先輩のお話から知ったところです。でも、折角先輩方が作っておられるんだから、参加しないと損かなぁ、って思いまして。」

 おおっ!好奇心が強い、と言う点で新鹿さんは私に似ているかも。

 新鹿さんを除く一年生三人は、しばらく顔を見合わせていたかと思うと、私の方に向き直って声を揃えて言った。

「「「先輩っ!私達もついて行ってよろしいでしょうか?」」」

 おおぅ!今年の一年生は積極的だなぁ・・・うん、でもそれって良いことだよね。

「勿論!じゃぁ、行くよ!」

 ☆

「はいっ!カットです!先生!有り難うございました!」

「いえ、こちらこそ。・・・あのね、栗須さん、一つ相談に乗ってもらっていい?」

 話は三月に遡る。

 その日、私達は書道の先生へのインタビューを撮るために書道室を訪れていた。インタビューが終わったところで、突然先生からお願いをされることになった。

「実はね、放送部にお仕事を頼みたいの。」

「仕事?・・・ですか?」

「ええ、書道部のビデオを撮って貰えないかしら?」

「書道部の・・・どんなビデオですか?」

「ええ、書道部は今年も大会に出るための練習をしているんだけど、その様子を撮影して欲しいのよ。」

「???・・・何故練習風景を?」

「ええっとね、予選はビデオ審査なのよ。私は、ビデオとかそう言った機械には弱くって・・・上手く撮れるか自信がまるで無いのよ。その点、栗須さん達はビデオに慣れているようだし、私が撮るよりも良いんじゃないかと思って。」

「???・・・先生ぇ、何故書道の予選にビデオ審査があるんですか?書き上げた作品が審査されるんじゃないんですか?」

「あぁ、ごめんなさい。説明不足だったわね。今のお話は、全総文とかじゃなくて、“書道パフォーマンス甲子園”のことなのよ。」

「???“しょどうぱふぉーまんすこうしえん”・・・それって何ですか?」

「“書道パフォーマンス甲子園”と言うのは通称で、正式名称は“全国高校書道パフォーマンス選手権大会”って言う、愛媛県四国中央市で開催されている書道の全国大会なの。ただ単に字を書くんじゃなくて、“パフォーマンス”って言う言葉の通り、4m×6mの巨大な紙に音楽に合わせて手拍子やダンスをしながら文字を書くのよ。だから、書の美しさは勿論のこと、演技の美しさや躍動感も評価対象となるの。

 それでね、全国を七ブロックに分けての予選が行われるんだけど、予選は“演技動画”及び“作品写真”によって審査されるのよ。

 昨年、うちの学校は予選落ちだったんだけど、その原因の一つが演技動画の出来の悪さにあるんじゃないかと思って・・・。私は書道は専門だから字を書くことは得意なんだけど、ビデオを撮ることは専門外だから全く自信が無いのよ。だから、今年もビデオのことを考えると憂鬱だったんだけど、栗須さんから撮影依頼の話を聞いてピンと来たの!放送部に予選用の演技動画を作ってもらったらいいんじゃないかって!」

「へぇー、書道パフォーマンスですかぁ、面白そうですね。・・・判りました。お引き受けします。その代わり、そのネタをNコン用の作品に使ってもいいですか?」

「勿論よ!引き受けてくれるんだったらその程度のことは構わないわ。」

「有り難うございます。ところで、先生ぇ、締め切りは何時ですか?」

「えーと、ちょっと待って頂戴。・・・大会要項は、と・・・あっ、あった。えーと、今年の申し込み期間は四月一日から五月十三日か・・・五月十三日までに提出できるように作って欲しいわ。」

「判りました。制限時間は何分ですか?」

「えーと、六分以内ね。」

「判りました。いつから撮影できますか?」

「今、参加者全員で何を書くかと言うことと、パフォーマンスの構成を考えているわ。四月までには準備は終わると思う。」

「判りました。では、また改めて取材に来ます。本日は有り難うございました。」

「いえ、こちらこそ。よろしくね。」

 その後、私達は慌てて物理室に戻って制作会議を始めた。結果、すでに用意していた台本は破棄決定。新たに書き直した台本を元に撮影をやり直すことにした。

「ねえ、書道部は今文章を考えたり、パフォーマンスの構成を考えたりしてるって、先生言ってたよね?そう言う準備中の様子もビデオに収めておくべきじゃないかな?」

「うん、ドルフィンちゃんの言う通り。素材になりそうなものは撮っとくべきだよね。」

 響子ちゃんが賛同してくれた。

「新しい台本が出来てからじゃぁ遅いかも・・・今から撮りに行く?」

 紙織ちゃんの提案に、私も響子ちゃんも頷いた。

「うん、善は急げだ。書道室に戻ろう。」

 こうして、私達は書道部が行っているパフォーマンスの準備の様子をあるったけ撮影していった。作品の中心となる言葉の選定の様子、言葉に付随して書く文章を決める様子、どのような動きをするか、手拍子を何処で入れるかを議論する様子等々、幾らでも撮るシーンがあった。

 それと並行して、こう言った演技動画はどんな風に撮ったら良いのかってことを真帆ちゃんに相談するため、高倉高校にお邪魔することにした。

「きゃぁぁーーーー!ドルフィンちゃーーーん!久し振りーーー!」

「あはは・・・真帆ちゃん、テンション高過ぎだよぉ。」

「だってぇ、ホントに久し振りなんだもん!」

 ははは・・・真帆ちゃん、私のことを好いてくれてるのは嬉しいんだけど、恥ずかしいからもう少しテンションを抑えて欲しいなぁ・・・。

「おう、来たな、東和高校。」

「あっ!桑畑先生、お邪魔します!本日も宜しくお願いします!」

 私達は直立不動の姿勢をとった後、深々とお辞儀をした。今日、私達が訪問することは、真帆ちゃんが予め桑畑先生に話を通しておいてくれていた。

「そう畏まらんでもいいぞ。こちらも教え難くなるからな。リラックスしなさい。・・・さて、今日はプロモーションビデオ作製のコツを教えるってことでいいんだな?」

「はいっ!!そうです!!宜しくお願いします!!」

 私達は、何時もの放送部の部室で桑畑先生の講義を拝聴することになった。

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