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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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桜が綺麗だ・・・去年のことを思い出すなぁ。さて、始業式も終わったし、明日の入学式の準備を始めるぞぉ!

 今年も桜が咲いた・・・。花冷えが続いたため、珍しく入学式の日まで持ちそうだ。

「懐かしいなぁ・・・もう一年経ったんだねぇ・・・。」

 咲き誇る桜を見上げていると、ついついおばんくさいことを呟いてしまった。それを耳にした響子ちゃんが受け答えをしてくれた。

「そう言えば、私達、入学式の時はまだお互いの存在すら知らなかったんだよねぇ・・・。」

「うん・・・。放送部に入部して出会ったんだよねぇ。そう考えると、人と人の出会いって不思議なものだねぇ・・・。」

 紙織ちゃんも腕組みをしながら目を瞑った状態でうんうん頷きながら呟いた。

「今年の1年生は入部してくれるかなぁ・・・。」

 私はふと心に湧いた不安を口にしていた。

「なんやかんや言って、私達の学年も6人入部してるんだし、何人かは入って来るでしょ。」

 響子ちゃんは、私達が心配しても仕方がないと言う風に両手の平を上にして軽く肩まで上げた。

「私の時は神倉先輩が声をかけてくれたから入ったんだよねぇ。」

 そう、今でもはっきりと覚えている。もの凄い美人さんが近付きながら声をかけてきたんだ。あの状況で断れる訳がない!

 すると、響子ちゃんが左手の平を右拳で叩きながら、突然思い出したかのように声を上げた。

「あっ、私もそうだ。神倉先輩が“興味ある?”って優しく聞いてくれたから・・・。」

「えっ、私もだよぉ。なーんだ、結局、私達は神倉先輩のお陰で出会ったんだね。」

 紙織ちゃんの言葉に、私達は思わず顔を見合わせて、あははは、と笑いあった。

「今度は私達が1年生に声をかけないとね。」

 私の言葉を聞いて、響子ちゃんは腕組みをしながら、うーんと唸った。

「私達は神倉先輩みたいに美しくないぞ!声を掛けたら、“えっ!?結構ですぅ”って断られるんじゃなかろうか・・・。」

「うっ・・・ほんとにそうなったら結構傷つくかも・・・。」

 そう言って紙織ちゃんは顔を曇らした。それを見た私は思わず檄を飛ばしていた。

「何言ってるの!逆立ちしたって私達が神倉先輩に勝てる訳ないんだから、私達は私達のベストを尽くすだけだよ!」

 響子ちゃんは腕組みをしたまま大きく頷いた。

「それもそうだね。・・・よーし、頑張って勧誘しようぞ!皆の衆!」

「「おーーー!」」

 響子ちゃんに合わせて、私と紙織ちゃんも拳を天に向かって突き上げた。とその時、ふと思い出したことが口を衝いて出た。

「でも、その前に入学式の運営だね・・・。」

 その言葉に響子ちゃんも紙織ちゃんもぎょっとしたように固まった。

「おっと、忘れてた・・・。」

「駄目じゃん!勧誘以前にお役目の方を頑張らないと!」

「そうだね・・・よしっ!頑張ろうー!」

 私は、あははは、と笑いながら、再び拳を天に向けて突き上げた。

 ☆

 1学期の始業式はいつも通り粛々と終わった。

 私達は昨年度に1学期と2学期の終業式、2学期と3学期の始業式、そして年度最後の修了式を経験している。これらの行事の流れはある意味ワンパターンで、まず最初に表彰伝達をやって、次に式、最後に生徒指導部長訓話をやっておしまいだ。すでに流れを把握しているから運営は簡単だった。

 また、放送機器の方も楽勝だ。始業式で使用するマイクは演壇上に一本、司会用に一本の計二本だけ。しかも卒業式や入学式などの式典とは違ってマイクはダイナミックマイクで充分な上に、養生テープでワイヤーを固定する必要も無いので、準備も撤収もちょちょいのチョイだ。式中に校歌斉唱があるので、CD音源を流すと言う作業が挟まるけど、毎度のことで音量も把握しているから、最初に設定すればスライダックの調節もいらない。男子三名のメカ班だけで機器の運営は事足りてしまうので、私達の出番はほぼ無かった。

 入学式の準備は放課後に行った。準備する機材は卒業式と同じ。演壇上と司会席にコンデンサーマイクをセット。移動用マイクをスタンドと共にセット。その後、マイクテストとCDデッキの起動確認を行って準備完了だ。

「さて、明日は卒業式と同じで7時に集合で良いの?」

 私は鯨山君に集合時間を確認した。

「うーん・・・卒業式の日と比べてだいぶ気温が上がって来ているし、あの時は待ち時間もかなり長かったから、7時半で良いんじゃないか?」

 そう言いながら鯨山君は皆の顔をぐるりと見回し、反対する人が居ないことを確認した。

「では、明日は7時半に集合だ。」

「うむ。委細承知でござる。」

「了解。」

「わかった。」

「OK。」

 ☆

 入学式は卒業式と違ってリハーサルが無い。だから、ある意味楽である意味緊張する。何せぶっつけ本番だからね。

 集合を終えた私達は手分けして準備にかかった。まず、鯨山君がマスターの電源を入れ、続いてスライダックのつまみを全て上げた。

「皆さん、マイクテストよろしく。」

「「「OK。」」」

 私達女子部員はそれぞれのマイク位置に散らばり、ファントム電源のスイッチを入れてマイクテストを行った。

「こちら壇上マイク。あーあーあー、テステステス、しっしっしっ・・・OKです。」

「こちらMCマイク。あーあーあー、テステステス、しっしっしっ・・・OKです。」

「こちら宣誓用マイク。あーあーあー、テステステス、しっしっしっ・・・OKです。」

 その間に鰹島君がワイヤレスマイクを放送室から持ち出して来た。

「こちらワイヤレスマイク1。あーあーあー、テステステス、しっしっしっ・・・OKです。続いてワイヤレスマイク2。あーあーあー、テステステス、しっしっしっ・・・こちらもOKです。」

「了解。マイク全てOKでした。続いてCDデッキのテストを行います。」

 音響係の王子浜君がCDデッキを起動させ、スピーカーからパッヘルベルのカノンが流れ始めた。

「ただいま入場用BGMを放送中。問題なく音が出ています。」

「CDデッキの確認終了。次に舞台上の照明をONにします。・・・ONしました。照明確認。このまま点けておきます。」

「よーし、オールOKだ。では、このまま機械を暖めておこう。」

 私達が放送機器の起動確認を終えたところに音楽の北摂先生と合唱部の面々が体育館に入って来た。

「放送部の準備は終わった?ピアノの音出しと校歌のリハをやりたいんだけど。」

「はい!どうぞ!BGMは今消します!」

「有り難う。はい!合唱部員はパートに分かれて指定の席に着いて!」

 あぁ、そうだった。思い出した。去年私達の入学式の時も“校歌披露”で合唱部の皆さんが校歌を歌ってくれたっけ・・・。

 私が感慨にふけっている間に、北摂先生は舞台に登ってピアノの鍵を開けて演奏の準備を整えた。合唱部員の皆さんは体育館の壁沿いに準備された席の前に立ってスタンバっている。

「皆!準備はいい?」

「OKでーす!」

 元気一杯の部長さんの返事を受けて先生が校歌を弾き出した。うーん。合唱部の朗々とした校歌は何時聞いても素晴らしい。私達もこれくらい歌えたらいいのになぁ・・・。

「朝一だからまだ声が出てないわね・・・合唱部員は9時まで発声をやりなさい!」

「了解しました!さぁ、皆、声出しに行くわよ!」

 部長さんを先頭に合唱部の皆さんは体育館から出て行った。先生はと言うと、今度は君が代を弾いている。その演奏を聞いていると、鯨山君が声をかけてきた。

「俺たちも9時に戻ってくればいいから、休憩に入ろう。」

「うん、そうだね。じゃぁ、物理室でお茶にしましょうか。」

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