卒業式は無事終了!我々は次のミッション、すなわちNコンに向けて動き出すのだ!
何時もドルフィンの活躍を読んで下さり、有り難うございます。
卒業式が終わったばかりで、暦の上ではまだ旧年度なのですが、6月のNコンに参加するための番組制作はもう始めないといけない時期になります。ですので、ここからドルフィン達の2年生編が始まります。
皆様、引き続きドルフィン達の応援をよろしくお願いいたします。
それでは、始めます。
無事、卒業式が終わった。天気も快晴だったし、よかったよかった。吹雪く年もあったそうだからなぁ。今日のような快晴でも寒かったのに、吹雪いている時の放送室の室温を考えると・・・想像するだに恐ろしい・・・。
取り敢えず機材の後片付けをしなければ。まずはマイクの収納だ。普段の学校行事と違って、卒業式のような特別な式典の時はコンデンサーマイクを使っている。何故かって言うと、通常のダイナミックマイクと比べてコンデンサーマイクは段違いで音を綺麗に拾ってくれるからだ。呼名にせよ、式辞にせよ、送辞・答辞にせよ、どんな人がしゃべろうとも、コンデンサーマイクなら確実に音を拾えるから失敗し難いのだ。
じゃぁどうして普段は使わないのか?設置にも撤収にも手間が掛かるからだよ、明智くぅん!コンデンサーを使っているため、コンデンサーマイクには電力の供給が不可欠なんだ。マイク本体に電池を仕込むタイプもあるけど、より性能の良いものはファントム電源装置を使う。だから、マイク本体、ファントム電源装置、ACアダプター、電源ドラム、マイクと電源装置をつなぐためのマイクケーブル、電源装置とマイク端子をつなぐためのマイクケーブルが必要になる。ダイナミックマイクなら、マイク本体、スタンド、マイク本体とマイク端子をつなぐマイクケーブルがあれば事足りるから、設置にせよ撤収にせよ、掛かる手間暇が全然違うんだ。
さて、まずはマイクケーブルや電源ケーブル、RGBケーブル等のワイヤー類を固定していた養生テープを剥がしていこう。私がテープを剥がしていくと、ゴミ袋を持った鰹島君がそれらをひょいひょいと袋の中に剥がしたテープを回収してくれる。その後、王子浜君と鯨山君が器用にケーブル類を巻いていく。響子ちゃんと紙織ちゃんが電源装置やコンデンサーマイクを箱詰めして、放送室へと運んで行く。事前に役割分担をした訳でもないのに、皆流れるように作業を行っていく。思えば、昨年の4月頃は一体何をしたらいいのか皆目分からず、他人の作業を呆然と見ていたなぁ・・・。一年間で私達も随分と成長したもんだ・・・。
体育館の片付けを終えた頃、丁度3年生の最後のホームルームも終わったようだった。私達は大急ぎで校舎へと走って行った。今日の為に皆でお小遣いを出し合って用意していたものを取りに行ったんだ。
「宇久井先輩!井鹿先輩!」
昇降口前で大勢の卒業生に囲まれている旧生徒会役員を見つけた私達は駆け寄った。
「やぁ、放送部の諸君!昨日も今日もご苦労様でした。お蔭でとても良い卒業式になったよ。」
「いえ、そんなことありません。私達はやるべきことをしたまでです。それよりも、これ、私達3人から宇久井先輩と井鹿先輩に・・・。大変お世話になりました!有り難うございました!」
私が口上を述べて、響子ちゃんと紙織ちゃんが先輩たちに花束を贈った。
「えっ?僕達に?いいのかい?凄く嬉しいけど。」
「はいっ!色々と協力して頂きましたので!」
「あんな程度のこと、気を遣わなくてもいいんだけどなぁ。なぁ、井鹿。」
「そうだよ。でも折角用意してくれたんだ。有り難く頂戴するよ。」
「はいっ!是非に!」
「うーん、綺麗だね。でも、僕達にこんな素晴らしい花束を用意してくれたんなら、来年はもっと凄い花束になりそうだねぇ。」
その言葉を聞いて私の脳裏には神倉先輩の姿が浮かんでいた。
「はいっ!来年は・・・そう、来年は来年ですっ!」
「ははは、だねっ。いやぁ、本当に有り難う。」
テンパってしまって自分でも何を言ってるのかよく判らなかったけど、宇久井先輩は察してくれたようだった。
「あら?すでに花束を受け取られていたのですね、会長。」
声がしたので振り返ってみると、そこには神倉先輩を始めとする現生徒会メンバーが花束を抱いて勢ぞろいしていた。
「先輩方には、現役時代大変お世話になりました。重複してしまいましたが、感謝の念を籠めて現生徒会からも花束を贈呈させて頂きます。」
「有り難う、神倉君、生徒会の諸君。」
生徒会役員の面々が前役員の皆さん、一人一人に花束を贈呈した。
「伝統ある我が校の生徒会をしっかりと引き継いでまいります。今後も私達を見守ってください。宜しくお願いいたします。」
「了解です。君達なら立派に伝統を継承してくれると信じているよ。こちらこそ、母校をよろしく。」
生徒会役員ではない私達は、一歩引いてこの遣り取りを見守っていた。私達が持たない使命感?とでも言えばよいのかな・・・先輩方の気持ちは、生徒会に所属した者だけが持つ特別なものなんだろうなぁ・・・。
☆
年度末考査も終わり、実質的にはもう春休みだ。しかし、私達にはのんべんだらりとしている暇は無い!
「こほんっ!と言う訳で、Nコンに向けて番組制作を始めたいと思います。本日は、企画会議です。」
「はいっ!議長!」
紙織ちゃんがビシッと右手を挙げた。
「うむ!紙織君!」
私もまた、ビシッと紙織ちゃんを指差した。
「2月のコンテストで見送ったネタで作ると言うのは如何でありますか?」
「ふむ・・・具体的には?」
「書道部があちらこちらの神社主催の書道大会で賞を取りまくってるので、それを紹介すると言うネタです。」
「ネタならもう一つあったよね?」
今度は響子ちゃんが発言した。
「はいっ、議長!理科の羽屋河先生がなんちゃら科学賞を受賞したって話です!」
「うむ、そうだったな。さて、どちらのネタが良いか・・・。」
しばし三人で腕組みをしながらうんうんと唸っていたが、やがて紙織ちゃんが顔をあげて発言した。
「Nコンは6月だよね?羽屋河先生の受賞は去年の12月のことだから旬が過ぎてない?」
「旬?」
「そう。半年前の話題って、ニュースとしては古過ぎない?ってことだよ。それに対して、書道部はそれ以降もいろんなコンクールに応募し続けているから話題として古びていないよ。」
「なるほど・・・そこの所を響子君はどう考えるね?」
「言われてみれば・・・羽屋河先生の話はボツで良いでござるよ。」
「では、紙織君の書道部ネタで番組を作ると言うことで良いでござるかな?」
「異議なし!」
「私も異議なし!」
「では、早速書道の先生にコンクールの予定とか、受賞歴を聞きに行ってみよう!」
☆
先生にお話を伺うと、書道のコンクールは1年を通じていろいろとあるらしい。
まず正月には県内にある様々な神社が書初め展を開催するので、毎年複数の書初め展に応募しているとのことだ。だから、年末は時間を惜しんで書きまくることになるんだそうな。
また、春から夏にかけては毎年全国高等学校総合文化祭向けの作品を制作しているとのこと。なんと、我が校の書道部は全国レベルで、全総文の常連校なのだとか・・・知らなかったぁ。全総文の後は、秋に開催される県総文や日本学書展などに向けた作品を制作するので、夏場もまた忙しいのだそうだ。
「で、なんで放送部が書道部の活動について根掘り葉掘り聞くんだい?」
「あっ!?すみません。肝心なことを言い忘れてました!先生ぇ!書道部に対する取材の許可をお願いいたします!」
「取材?何の?」
「実は、6月のコンテストに向けて番組を制作するんですが、今回はテーマを“書道部の活躍”にしたいんですっ!よろしいでしょうかっ!」
「なるほど。顧問としては許可するが、部長の許可も取ってくれ。生徒たちが良いと言うのであれば取材をしてもらっても一向に構わんよ。」
「了解しました!では、早速書道室に行ってきます!」
私達はぺこりとお辞儀をすると、踵を返して書道室に向かった。
☆
書道室では、書道部員の人達が一心不乱に筆を走らせていた。
「こんにちはぁ!放送部1年の栗須です!部長さん、おられますかぁ?」
「はーい!いますよぉ!・・・何の御用でしょうか?」
部長さんはわざわざ作業を中断して入口まで来てくれた。
「練習中、お邪魔して申し訳ありません。実は折り入ってお願いがあって参りました。」
「お願い?」
「はいっ!実は6月のコンテストに向けて番組を制作するのですが、書道部の活躍を紹介する番組を作りたいと思いまして・・・そこで、取材等の許可を戴きに参りました。」
「具体的には、どんな取材をするの?」
「はいっ!現在のところ、日常の練習風景、コンクール出展用の作品の制作風景、コンクールの様子、受賞の様子、書道部へのインタビューなんかを考えています。また、過去のコンクールの様子や受賞の様子を撮影した写真なんかがありましたら、データを提供して戴けると助かります。」
「な、なんか大仰だねぇ・・・。」
「決して皆さんの練習や制作の邪魔はしません!お願いできないでしょうか?」
「顧問の先生には許可を取ったの?」
「はいっ!先生は部長さんの許可を取ったらOKだって言ってくれました。」
「丸投げかよぉ・・・まぁ、いいや。放送部には日頃から学校行事とかでお世話になってる訳だし、断る理由も特にないから許可するよ。」
「ほんとですかぁ?有り難うございます!宜しくお願いします!」
「こちらこそ宜しく。」
よしっ!許可は下りた。内容を詰めていこう!




