表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/118

今日は2月29日。明日の卒業式のリハーサルだ!よーし、頑張るぞぉ!

 2月29日。今年は閏年だから、2月が1日多い。今日は、明日の卒業式のリハーサルと予餞会だ。私達放送部は、昨日の放課後に機材の準備をし、今朝も早くから体育館でメカの起動確認を行っているのだ。

『あーあーあー、テステステス。』

 私達女子部員は、順々にマイクの調子を確認していく。

 一方、メカ担当の男子部員は機材のチェックに余念が無い。卒業式だけならマイクとCDデッキを使う程度だから、そこまで大変ではないのだけど、予餞会もやるからスクリーンや液晶プロジェクター、映像や音声を再生するノートパソコンなどの点検も必要なのだ。

「よーし、全てOK!何時でも始められるぜ!いえー!」

 ちょっとそのテンション、ついていけません・・・。まぁ、コンテストに出ない男子メカ部員にとっては、学校行事こそが自らの存在価値を示す重要な舞台だもんね。張り切るのも無理はないんだけど・・・。

 そうこうしている内に、担当の先生方が体育館にぞろぞろとやってきた。

「放送部、準備はできてるか?」

「はーい!何時でもいけまーす!」

 式典の時は、いつも総務部長である西町先生が仕切っている。今日もそうだ。

「では、山中先生、司会のスタンバイお願いします。北東先生!三年生の整列はOKですか?」

 三年の学年主任である北東先生が体育館の入口に顔を覗かしたので、西町先生が始めて良いのかを確認した。北東先生が大きく腕で丸を作った。準備OKなようだ。

「それでは、入場のリハを行います。」

「卒業生、入場!」

 BGM担当の王子浜君がすかさずCDデッキのスイッチを押した。荘厳なJ.S.バッハのブランデンブルク協奏曲第5番が流れ出す。

 曲に合わせて入場が始まった。まず先頭は学年主任の先生。続いて5mほど間を開けて一組担任が毛氈を敷いた中央通路を歩く。その後ろを3mほどの間を開けて一組の皆さんが二列縦隊で続く。一組の座席を少し通り抜けたところで担任の先生は止まって回れ右をする。先輩方は座席の所で列毎に左右に分かれて進んでいく。全員が自分の席の前に立ったのを確認すると、担任の先生が右手を上げて、すっとその手を下に振ると、一斉に先輩方は席に座った。

 一組の担任の先生は、先輩方を座らせた後、職員席の方へゆっくりと移動し、校長先生、教頭先生、事務長先生が座る席の前まで来ると立ち止まり、一礼をしてから自分の席に着いた。

 その後は同じことの繰り返しで、八組全ての入場が終了するのにたっぷり五分はかかった。様子を放送室の小窓から見ていた私は、八組の担任の先生が中央から職員席に向かって歩き出したところで鯨山君に合図した。ミキサーの前に座っている鯨山君が、私の合図を受けてスライダックのつまみをゆっくりと下げ、BGMをフェードアウトした。

「一同、起立!・・・礼!」

 八組の担任の先生が席に着いたのを確認して、山中先生が号令をかけた。起立した三年生全員が礼をする。

「ここで、開式の辞、続いて国歌斉唱があります。その後、着席の号令がありますので、それまでは、全員立ったままになります。では、座ります。・・・着席!」

 三年生が一斉に着席する。

「卒業証書授与。」

「一組!」

 一組担任の先生がマイクの前に立ち、順々に先輩方の呼名を始めた。それを合図に、王子浜君がCDデッキのスイッチを入れる。卒業式の定番ソングのオルゴールアレンジを流して、雰囲気を盛り上げるのだ。ちなみに、今日はリハーサルなので、六人目以降は略されてしまった。

「6番から39番まで立ちなさい。・・・以上、三十九名。代表、継桜亜妃。」

「はい!」

 一組を代表して継桜先輩が中央通路に出てくる。舞台下の階段前まで来ると、まず右向け右で来賓席の方を向いて一礼。回れ左で職員席の方を向いて一礼。正面に向き直って階段を上り、壇上で一礼。今日はリハーサルなので、校長先生の代わりを西町先生がやっている。西町先生は証書を一枚手に取ると、

「卒業証書!・・・明日は、全文読まれますからね。」

 と言いながら、クラス全員分三十九枚の証書を継桜先輩に手渡した。先輩は証書を両手で受け取ると左脇に抱え直してから一歩下がった。

「礼!」

 担任の先生の号令で、一組全員と壇上の先生、継桜先輩が一斉に礼をした。礼の後、先輩は回れ右して階段を下りた。下りたところで先輩は階段脇に置いてある机の上に証書の束を置くと、中央に戻って来賓席の方に一礼。回れ左して職員席の方を向いて一礼。その後、自分の席に戻ったところで、担任の先生の号令で1組全員が一斉に着席した。

 以後、順々に八組まで同じように練習をこなしていく。

「はい!八組の代表が席に戻り始めました!」

 私の合図を受けて、鯨山君がスライダックのつまみをゆっくりと下げ、BGMをフェードアウトした。

 フロアではリハが続いていく。

「学校長、式辞!職員、生徒、起立!・・・校長先生が演壇前に立たれました・・・礼!・・・着席!・・・ここで、校長先生が式辞を述べられます。・・・終わりました・・・職員、生徒、起立!・・・礼!・・・校長先生が降壇されます。・・・席に着かれたら、着席!・・・タイミングは判りましたか?学校長式辞に続いて来賓祝辞があります。同じパターンで起立、礼、着席を行いますから、覚えておいてください。」

 このタイミングで鰹島君がフロアに出て、マイクをスタンドごと中央通路に運んでいく。3年生の方を向く形で設置すると、そのまま司会席の後ろにはけた。

「在校生代表、送辞!在校生代表、神倉千穂!」

「はい!」

 おっ!ここで我らが神倉先輩の登場だ!先輩は、在校生席を発って職員席の前を通り、校長先生の席の前で一旦止まると一礼。中央に設置されたマイクの前まで移動すると、来賓席に向かって一礼。その後、三年生の方に向き直ってから内ポケットから巻紙を取り出して読み始めた。

「送辞。厳しい冬の寒さの中にも、春の訪れを感じることの出来る季節となりました。本日、晴れて卒業証書授与式を迎えられた皆さん、ご卒業おめでとうございます。在校生を代表し、心よりお祝い申し上げます。・・・本日は、以降を略します・・・令和六年三月一日、

 在校生代表、神倉千穂。」

 先輩は巻紙を元通り巻くと、奉書紙に包んだ。明日の本番では、BGMを流す予定だ。先輩が読み始めてから音楽をフェードインして、最後、日時を述べる直前からフェードアウトするのだ。

「礼!」

 山中先生の号令と同時に三年生全員と神倉先輩が礼をした。その後、先輩は回れ右して登壇し、演壇前で一礼、送辞を演壇上に置くと、一歩下がって再び一礼、降壇して来賓席の方を向いて一礼、回れ左してから真っ直ぐ職員席の方へ歩み寄ってからぴたりと止まってから一礼、その後自分の席に戻った。山中先生は先輩が席に戻ったことを確認すると、ようやく 「着席!」と、号令をかけた。

 先輩が席に向かう途中、いつの間にか鰹島君はしずしずとマイクを撤去して戻って来ていた。存在感を完全に消していた。流石だなぁ。

「うーん・・・式典って一つ一つの動作が大仰だなぁ・・・。」

「いや、式典ってそうじゃないと。非日常だから荘厳な雰囲気が出るんでしょ。いつもと同じじゃぁ雰囲気はでないよ。」

 私の呟きを受けて、鯨山君が突っ込みを入れて来た。まぁ、その通りなんだけどさぁ。

「それにしても、神倉先輩の所作は凄いね!あまりの美しさに見惚れるよぉ。」

「あの人は別格だからね。動きもしゃべりも高校生離れしているから。俺たちも成れるものなら、ああ成りたいよな。」

 本当にそう思う。

「卒業生代表、答辞!卒業生代表、宇久井総司!職員、生徒、起立!」

「はいっ!」

 おっ!宇久井先輩の出番だ。校長先生役の西町先生が登壇すると、先輩は席を発って、中央通路を真っ直ぐに進んだ。先ほど神倉先輩が立っていた辺りでぴたりと止まると、右向け右して来賓席に向かって一礼。回れ左で職員席の方を向いて一礼。正面に向き直って階段を上り、演壇前で再び止まった。

「礼!」

 全員が一斉に礼をする。その後、宇久井先輩は内ポケットから巻紙を取り出して読み始めた。

「答辞!暖かい陽の光が降り注ぎ、桜の蕾も膨らみ始め、春の訪れを感じる今日、私たち百二十九期生は卒業の日を迎えました。・・・本日は、以降を略します・・・令和六年三月一日、卒業生代表、宇久井総司。」

 先輩は巻紙を元通り巻くと、奉書紙に包んだ。答辞においても本番ではBGMを流す予定だ。先輩が読み始めてから音楽をフェードインして、最後、日時を述べる直前からフェードアウトするのも一緒だ。

 答辞は巻紙を校長先生に直接手渡しする、と言うところが送辞とは異なっている。校長先生役の西町先生に巻紙を渡すと、先輩は一歩後ろに下がった。ここで、山中先生の「礼!」の号令がかかった。礼の後、先輩は回れ右して階段を下りた。下りたところで来賓席に向かって一礼。回れ左して職員席に向かって一礼。その後、自分の席に戻ったところで、山中先生の号令で全員が一斉に着席した。

「この後、校歌斉唱、続いて式歌斉唱があります。明日の本番では、国歌も含めて音楽の北摂先生のピアノ伴奏に合わせて歌いますから、そのつもりで。・・・では、最後、卒業生退場です。・・・卒業生、退場!」

 王子浜君がすかさずCDデッキのスイッチを押した。卒業式の定番ソングのカラオケバージョンが流れる。一組の担任の先生が先輩方の前に移動する。先生が右手を上げると、一組の皆さんが一斉に立ち上がった。先生が通過すると、流れるように先生の後を追って退場していく。続いて二組・・・続いて三組・・・順々に退場が行われる。最後、八組が退場し終えたところでBGMをフェードアウトした。

「お、終わったぁー!緊張したぁ!」

「おいおい、今日はリハだぜ。緊張は明日の本番まで取っておこうな?」

「へへへ、ほんと、そうだねぇ。」

 そこに、山中先生の声がマイクを通して聞こえて来た。

『10分間休憩します。休憩の後、同窓会入会式、記念品贈呈式、予餞会を実施します。放送部の諸君!引き続き宜しく!』

「「「はいっ!わかりましたぁ!」」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ