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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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待ちに待った、ショートムービー部門だ!どんな作品が出てくるのかなぁ・・・ワクワクが止まらない!

 発表前は自信なさげなことを言っていた二人だけど、実に見事な朗読だった。真帆ちゃんといい、皆着々と腕をあげていく・・・私も負けてらんないなぁ・・・。

 そんなこんなで午前中のアナウンスと朗読の発表は終了。昼からはいよいよショートムービー部門の発表だ!さぁ、皆でお弁当を食べよう!と思って立ち上がって振り返ると、後方の観客席に見覚えのある美人さんが・・・アッ、こっちに気が付いて手を振ってるよ!私は慌てて彼女の許に駆け寄った。

「おはようございます!来てらしたんですか、先輩!」

 そう、神倉先輩が来ていたのだ。

「おはよう、栗須さん。」

 響子ちゃんと紙織ちゃんも同じく駆け寄ってきた。

「「おはようございます!先輩!」」

「おはよう、三輪崎さん、鵜殿さん。」

「観てらしたんですね、先輩。私たちの発表、どうでしたか?」

「三人とも、また上達したわね。総文祭の時と比べても、随分と上手かったわよ。」

「えっ?!総文祭の時も観てらしたんですか?」

「ええ、こっそりとね。私が観てるってわかったら緊張するでしょ?」

「あ、あ、あ、有り難うございます。気を遣わせてしまって申し訳ありません!」

「まぁ、私が観てるからと言って緊張するようじゃ、まだまだだとは思うけど。・・・あら?その制服は高倉高校ね。渋川さん、だったかしら?貴女の発表も素晴らしかったわ。」

 私の横について来ていた真帆ちゃんに気付いた先輩は、彼女にも声をかけてくれた。

「お、おはようございます!・・・え、え、私なんか、ドルフィンちゃんと比べたらまだまだですよ。」

「いいえ。総文祭の時よりも上達していたわよ。今回は優秀賞を取れるんじゃないかしら。それはそうと、この子達の番組作りをいろいろ手伝ってくれたそうですね。有り難うございました。」

 そう言うと、先輩はすっと立ち上がり、真帆ちゃんに向かって頭を下げた。何気無い所作でも先輩の動きは惚れ惚れするほど美しい。

「ええー!?そ、そんなことは、あ、ありません。た、大したことはしてませんから。」

 真帆ちゃんは顔を赤らめながら、やっと、といった風に答えた。

 Nコンの様子はNHKによって全国放送されているから、神倉先輩が全国3位になったことは知れ渡っている。当然、真帆ちゃんにとっても先輩は憧れの的だ。その先輩からお礼を言われ、あまつさえ頭を下げられたのだから、さぞかしのぼせ上がっているだろうなぁ。

「いいえ。本来は私が指導すべきだったのですが、残念ながら私も番組作りに関してはずぶの素人なものですから、すっかり高倉高校さんに甘えてしまいました。後で、桑畑先生にもお礼を言わせて頂きます。」

「は、はいっ!お、お、お願い、いたしますっ!」

 もう真帆ちゃんの顔はトマトみたいに真っ赤かだよ。なんか、傍から見てると笑いが込上げてくる。・・・いやいや、いかん、いかん。笑ったら真帆ちゃんに失礼だ。ここは耐えなければ・・・。く、く、く・・・。た、耐えろ、私!

「それでは、皆さん。お昼にしましょうか?」

 真帆ちゃんとの会話を終えると、先輩は私の方に向き直りそう言った。た、助かったぁ・・・。

「はいっ!お弁当、食べましょう!ははは、お弁当楽しみ!はははは。」

 私は満面の笑みで、元気いっぱい答えた。

 ☆

 お弁当を使った後、私達は再び大ホールに移動し、午前中の反省会をやりつつ開始時刻を待った。

 13時。司会の先生が司会席に現れた。

『ただいまより、ショートムービー部門を開始いたします。作品は、エントリー表に記載された順に上映していきます。万が一、データが壊れているなどの理由で上映できなかった場合は、事前に通知しておりましたように、作品のデータを記録したフラッシュメモリーを前に持ってきて頂きます。その際は、MCが呼び出しますから、速やかに来てください。』 

『それでは、始めます。エントリーナンバー1番、丹鶴高校、“冬来たらば春遠からじ”』

 舞台上のスクリーンにテストパターンが映し出された。そして、その直後、雪が舞う丹鶴高校が映し出された。如何にも寒そうな風景が続く・・・と、突然、花吹雪が写った!カメラが手前にパンしていくと、満開の桜の木々が映し出され、バックには丹鶴高校の校舎が・・・さらにカメラはパンされていく。すると、制服姿の女の子の後ろ姿が現れた。ここで、学校名のクレジットが出て、丁度一分、作品は終わった。

 私は、愕然とした。今はまだ2月。当然桜が咲いているはずはない。と、言うことは桜の撮影は去年の春に行われたということになる。まさか、このコンテストの為に撮っておいた?!画面を引いていく速度は完璧だった。何度テイクを繰り返したのだろうか・・・“良い作品を作る”ことに掛ける執念のようなものを感じたのだ。思わず額に汗が滲んできた・・・。

 司会の先生がアナウンスを始めた。

『エントリーナンバー2番、御船高校、“今日も相変わらず小テスト”』

 テストパターンに続いて、生徒たちが座る教室が映し出された。生徒たちはテストを解いている。カメラがパンして、教室の後ろの黒板が映し出されると、ぎっちりと小テストの予定が書き並べられている。すると一人の生徒が叫び出した。

 “ああっ!毎日毎日、テストばっかりだ!もう、嫌だぁー!”

 監督の先生が怒り出す。

 “仕方無いだろう。中間考査が無いんだから。”

 生徒はそれに対して、

 “これなら、中間考査があった方が良かった!”

 ここで、画面にタイトルが現れる。“明日も小テストは続く”と。ここで作品はおしまい。

 うーん。私の感想としてはイマイチだった。一分でまとめるにはネタが大き過ぎる。小テストが毎日あることに対しての抗議?でも、それでこの状況をどのように解決していくべきかとか、こうして欲しいとか言った意見や考えが無かった。これでは何を言いたいのかが良く判らない。しかし、そう言った内容を盛り込むにはあまりにも尺が無さ過ぎた。これはNコンのテレビドキュメント部門のように7分30秒以上8分以内と言う長尺でないと、とてもじゃないが扱える問題ではないだろうな・・・。

『エントリーナンバー3番、高倉高校、“名産品を食べよう!”』

 司会の先生のアナウンスに続いて、スクリーンにテストパターンが映し出される。テストパターンの後に画面に美味しそうな茄子が写った。画に被せてナレーションが茄子の説明を行う。伝統野菜であること、近年生産量が減少していること。画はグラフに変わり、減少していることが一目で判る。何故なのかと言う問いと共に、茄子を生産している農家さんへのインタビューが入った。農家さんは、手間がかかること、多くの農家に後継ぎがいないこと、それらが原因で生産量が減少していることを説明していた。最後に、美味しそうな茄子料理の画に被せて、“伝統野菜、おいしいよ。みんなも食べてみて!”と言うタイトルが入って終了・・・。

 私は自分が青ざめていることが判った。この内容を一分間のフィルムに詰め込んでいるのだ!凄すぎる!全く無駄が無い。知りたい情報は全て入っている。インタビューまで入っている。どうやったら、こんな凄いコンテが書けるんだろう・・・。高倉高校の底力を垣間見たようだった。・・・これって、真帆ちゃんも参加してるんだよね・・・。隣に座っている真帆ちゃんが途轍もなく大きく見えた。同じ1年生なのに・・・。今の私たちの力じゃ、とても敵わないよ・・・。

『エントリーナンバー4番、越路高校、“災害に備えよう!”』

 テストパターンに続いて、新聞の一面が映し出される。今年1月に起こった大地震のニュースだ。代わって県内にある国立大学の先生のインタビューだ。南海トラフ地震の危険性について語っておられる。続いて、“大地震に対して何か備えてますか?”と言う問いに対する複数の越路高校生のインタビュー。みんな一様に“何も備えていない”と答えている。最後に“本当に備えていなくて、大丈夫?”と言うタイトルが出て終了。

 うーん。この作品も良く出来てはいるんだけど・・・やはり尺が足らないように思えた。消化不良だ。欲しい情報が足らなさ過ぎる・・・。このネタも、やはりNコン並みの尺が必要なものだよね。ショートムービーには、それに相応しいネタを選ばないといけないんだなぁ・・・。うん、勉強になるな。

『エントリーナンバー5番、猪垣高校、“彼の運命は?”』

 テストパターンが終わると、二人の人物が夜道を歩いている。ふと、一人が道端の藪の中に長持のような箱を見つけた。しかし、連れには何も言わず、やがて二人は別れた。しばらくして箱を見つけた人物が戻ってくる。箱を開けて中を見た後、笑みを浮かべて箱を持って立ち去って行く。夜が明けて、もう一人の人物が箱を持ち去った人物と連絡が取れないとぼやきながら歩いている。ふと、例の藪を見ると同じ箱が置いてある。気付いた彼が箱に近づいて、それを開けると・・・。驚愕する彼の顔に高校のクレジットが被って終了。

 へえー。ドラマだったんだぁ・・・。そうか、ショートムービーってドキュメントに拘らなくてもいいんだ。そう言えば、参加要項にはどこにも“ドキュメントに限る”なんて言う文言は無かったな。納得、納得。それにしても、上手い作品だったなぁ。無駄が無いし、テンポもいい。何よりもきちんと落ちている所が見事だ。

『エントリーナンバー6番、虎松山工業高校、“高校体験記”』

 虎松山工業の作品は、中学生向けの学校紹介ビデオみたいだった。工業高校の良いところ、普通科との違いを一分間で判り易くまとめていた。編集能力の高さは判るんだけど、正直コンテスト向けの内容かと問われると、うーん、て、なるよね。

『エントリーナンバー7番、東和高校、“弾正山千本桜並木道”』

 おっと、うちの作品だ。初上映、と言う意味では興奮したけど、他校の作品を見た後だと、自分たちの至らない点にはすでに気付いている。たぶん講評で指摘されるだろうなぁ・・・。次に活かさねば。

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