さぁ、いよいよ本番(コンテスト)だ!まずはアナウンス部門だ!今回も頑張るぞぉ!
2月11日。県高校放送コンテストの日だ。2月開催と言うことで、基本3年生は出場しない。運動部で言うところの新人戦と言う扱いなのだ。因みに、神倉先輩はまだ2年生だけどエントリーはしていない。
“あまり経験の無い1、2年生に場を与え、この一年間努力してきた人に賞を与えることで自信とやる気を持ってもらうことが、このコンテストの大きな目的だから。”
だ、そうだ。確かにNコン全国大会で3位を取る実力を持つ先輩が出ても場違いと言うか・・・先輩には、無双して皆にマウントを取る、なんて言う嗜虐趣味はないからなぁ・・・。
「おはよう!真帆ちゃん!」
真帆ちゃんを見つけた私は、大声で挨拶しながら駆け寄った。
「おかげで今回のショートムービー部門にエントリーできたよ!」
「おはよう、ドルフィンちゃん。お役に立てて何よりだよぉ。」
「私たちにとっては初作品だからね。今から講評が楽しみで仕方ないよう。」
「えっ?順位じゃなくて?」
「だって、上位を狙える訳ないじゃん!未熟だって言うことは十分自覚してるよぉ。だから、講評を読んで次の作品に活かすんだよ。3年生のときには評価してもらえる作品が作れるようになっていたらいいな、って思っているんだ。」
「ほえー、随分とまた長期計画なんだねぇ。」
「うむ、“千里の道も一歩から”って言うじゃん。“急いてはことを仕損じる”だよ!まずは作品作りを楽しまなきゃ。義務感で作るのは嫌だからね!」
「・・・うーん、私もドルフィンちゃんを見習わなきゃ・・・。うちの先生が“東和の子は見どころがある”って言ってるのは、そういうところなのかも・・・。」
「ははは、何言ってるの、せ・ん・ぱ・い!番組に関しては、真帆ちゃんが圧倒的に先輩なんだから、私なんかに見習うところなんて無い無い!」
でも、そう言って貰えるとかなり嬉しい。
「今回、コンテストに出場できたから、約束通りカメラやパソコン、動画編集ソフトなんかの番組作りに必要な機材一式を購入してくれることになったんだ。これで、次のNコンからは自前で番組部門にも参加できるよ!」
「そう!良かったね!・・・でも、そうなると高倉が手伝うことは無くなっちゃうね。それはちょっと寂しいかな・・・。」
「いやいや、まだまだ私達は初心者だからね。判らないことが色々出てくると思うから、その時はまた教えてね!」
「えっ!も、もちろんよ。どんどん頼ってね!」
真帆ちゃん、すごく嬉しそうだ。他人に頼られるのって嬉しいことだもんなぁ。
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このコンテストはNコンや総文祭とはかなり違う。と、言うのも、Nコンや総文祭は参加者が多いため、アナウンス部門、朗読部門、番組部門は同時進行で審査が行われる。だから他部門の発表を見ることは基本できない。でも、この2月のコンテストは3年生が参加しないことや、上位大会への参加権をかけて戦う訳ではないこともあって、参加者・参加校が少ない。ざっと見てNコンの半分ってところだ。そのため、”勉強の場”としての意味もあって、参加者全員が全ての部門を見れるように、審査がアナウンス部門、朗読部門、ショートムービー部門の順に同じ大ホールで行われるのだ。
さて、開会式が終わり、まずはアナウンス部門だ。
『では、アナウンス部門にエントリーしている人は、前の席に移動してください。座席の背もたれにエントリー番号を書いた紙を貼ってありますから、各自自分のエントリー番号の席に座ってください。』
よしっ、呼ばれたぞ。
「じゃぁ、行ってくるね。」
響子ちゃんと紙織ちゃんに小さく手を振って、真帆ちゃんと一緒に舞台前の席へと移動した。
『コンテストの進行について説明します。』
私達アナウンス部門出場者が席に着き終わると、司会の先生が説明を始めた。
『舞台上には座席と机、卓上マイクと立ちマイクを2セット用意しています。まず、エントリーナンバー1番の人が右に、2番の人が左にスタンバってください。発表は、座って読むのも立って読むのも参加者の自由です。自分がやり易い方で行ってください。
1番の発表が終わったら、入れ替わりで3番の人が右の席に着いてください。2番の人は、3番の人が席に着いたことを確認してから発表を開始してください。4番の人は2番の人と入れ替わりで左の席に着いてください。以後、これの繰り返しとなります。スムーズに発表が進みますよう、皆さんの協力をお願いします。』
説明の終了と同時に、エントリーナンバー1番と2番の人が舞台上に揚がった。さぁ、始まった。
待ち時間の間、私は自分の原稿を見ながら、声には出さずに頭の中で読みを反復していた。文言はすでに暗記している。反復しているのは、間合いやイントネーション、それと鼻濁音や無声化する箇所の確認だ。コンテストの直前、私は神倉先輩に発表内容を聞いてもらった。そこで貰えたアドバイスを反映させて練習をし直したんだ。まだまだ先輩には及ばない、そう感じていた。いつかは先輩に追いつきたい・・・そんな大それたことも考えていた。
おっと、私が舞台上にあがる順番が回って来た。舞台にあがるタイミングを計るため、原稿の反復を止めた。12番の人が発表を終えて、舞台から降りて来た。入れ替わりで私は舞台にあがり、席に着いた。それを確認して13番の人がアナウンスを開始した。
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13番の人と入れ替わりで15番の人が舞台にあがってきた。彼女が席に着いたのを確認して、私は正面に向き直り、一呼吸してからアナウンスを開始した。
「14番、栗須入鹿、松永寺の書初め大会。
一月三日、東和高校の裏にある弾正山、その頂に建つ松永寺で、今年も書初め会が開催されました。運営責任者の小林権少僧都にお伺いしたところ、この書初め会は、江戸時代から三百年も続いている伝統ある大会だそうです。
大会は松永寺の本堂の外陣を使って行われます。人の背丈ほどもある大きな半紙に、通常よりも大きな筆を使って文字を書きます。腕だけではなく、全身を使って書かなければならず、特別な練習が必要なんだそうです。当日は、一人ずつ順番に書いていくため、大会は朝早くから始められますが、夜まで続くことも珍しくないとのことです。
我が校の書道部は、設立以来欠かさずこの大会に出場してきました。これまでもたびたび上位入賞してきましたが、今年は、一位から三位までを独占する結果となりました。一位を受賞した書道部の中山さんは、“日々部員全員で鍛錬を続けてきたお陰だと思います。”と感想を述べてくれました。書道部の今後の活躍が楽しみですね。」
うむ!シミュレーション通り!上手く読めた。私は、素早く原稿をまとめて降壇した。入れ替わりに真帆ちゃんが登壇していく。頑張れ、真帆ちゃん!と心の中でエールを送りながら席に戻った。
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「16番、渋川真帆、高倉神社の初詣。
私たちの学校にほど近い高倉神社は、いわゆる“式内社”です。式内社とは、平安時代に律令の施行細則をまとめた法典“延喜式”の神名帳に記載された神社のことで、非常に格式のある神社とされています。
私たちの学校では、毎年一月四日に、各部活動が、この神社に参詣するという伝統があります。今年も野球部やサッカー部、バレーボール部と言ったクラブが先を競うように参詣を行いました。この神社がある高倉山は、大昔から“天狗が住む山”として崇められ、修験道における修行の霊山とされてきました。本殿は巨大な岩がそそり立つ山の上にあり、登山口からは740段余りの急な階段が連なります。運動部は、この階段を休むことなく駆け上がることを年始の伝統行事にしているのです。野球部のキャプテン、岩井君は、“今年も野球部が一番に参詣できました。他の部に負けないよう、来年も頑張ります。”と胸を張っていました。」
うん。真帆ちゃんの発表も見事なものだった。明らかに総文祭の時よりも腕を上げている。随分と練習を積み重ねて来たんだろうなぁ・・・。
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『以上でアナウンス部門の発表を終わります。一〇分間の休憩の後、朗読部門を開始します。朗読部門の出場者は、時間までにエントリーナンバーが貼られた自分の席に着いておいてください。』
「真帆ちゃん、とっても上手だったよ!」
「いやいや、そんなに褒めないで。ドルフィンちゃんと比べると自分の未熟さが判って、恥ずかしいんだよぉ。・・・私ももっと練習しないとね・・・。」
そんな私と真帆ちゃんのやり取りを聞いていた響子ちゃんが、
「私からしたら二人とも凄いよ。ドルフィンちゃんを見習って、私も練習量を増やさなくっちゃぁ・・・。」
と言うと、紙織ちゃんも、
「そうだねぇ。同じように練習しているつもりなんだけど、どうしてこう差がつくんだろう・・・。」
と嘆いていた。
「そんなこと言わないの!二人ともこれからが本番なんだから!そんな落ち込んだ気分じゃいい発表はできないよ!」
「・・・うん、そうだね。二人に負けないように頑張るよ。」
「よしっ、頑張るぞ!」
『間も無く朗読部門を開始します。出場者は席に着いてください。』
「あっ、呼ばれてる。じゃぁ!」
「行ってきまーす!」
さぁ「うん、行ってらっしゃい!」
さぁ、朗読部門だぁ!




