アナウンス部門にしようか・・・それとも朗読部門にしようか・・・あぁ!悩むぅぅう!
まずは、一年生で集まって、それぞれがアナウンスと朗読のどちらを選ぶのか、なぜ選んだのか、意見交換をすることにした。ちなみに進行役は、成り行きで私が務めることになった。
「では、私から。私はアナウンスにする。選んだ理由は、私には演技は無理だと思ったから。臨場感を持たして台詞を読むのは練習云々じゃ無く、結構センスがいると思うんだ。」
次を指名するまでも無く、私の意見を聞いてすかさず鵜殿紙織ちゃんが発言した。
「なるほど。私は逆に演技にも興味があるから、朗読にしようと思う。声優に憧れてるしね。」
へぇー、鵜殿ちゃんって声優に興味があったんだぁ。
「私も朗読にする。作文は苦手だから、上手く原稿を仕上げる自信が無い!」
続けて、三輪崎響子ちゃんも発言した。“作文が苦手”って、なんでそんなに自信満々に言えるんだよ!おかしいだろう!
「皆、それぞれ考えがあるんだね。まぁ、変に迷って決められないよりはいいか。じゃぁ、一年生三人は、アナウンス1、朗読2で決まりだね。私から先生に報告しておくね。」
「「よろしくぅ。」」
二人の返事がハモっていた。
「ところで、朗読は何を読むの?」
ふと、気になって聞いてみた。私の質問に対して、紙織ちゃんは目線を天井に向け、考えながらゆっくりと答えてくれた。
「うーんとね。朗読には指定作品があって、その中から選ばなくっちゃいけないみたい。今年は、芥川龍之介の短編集、平松洋子の『買えない味』、藤岡陽子の『金の角持つ子どもたち』、ジーン・ポーターの『リンバロストの乙女』、松尾芭蕉の『奥の細道』だね。出版社も指定されているみたい。」
「取り敢えず読んでみて、気に入った作品を選びましょう。好きでもない作品を読んでも力が入らないわ。」
すかさず響子ちゃんがそう提案した。
「そうよね。どうせだったら、好きな作品を読みたいもんね。」
「本を5冊も読むのかぁ。結構選ぶのに時間がかかりそうだね。」
側で聞いていた私は、思わず自分の感想を声に出してしまった。
「確かにそうよねぇ。響子ちゃん!時間が惜しいから、早速図書室に行って、学校にあるかどうか確認しよ。無かったら買わないといけないし。」
「と言う訳だから、ドルフィンちゃん、私達は図書室に行ってくるね。」
「うん。私は先生に参加報告をしてから、神倉先輩の所に行ってくるね。」
「神倉先輩の所?」
「うん。アナウンス原稿の書き方について聞こうと思って。」
「なるほど。ドルフィンちゃんも準備に入るって訳かぁ。」
「うん。じゃぁね。」
「はいはいぃ。報告よろしくぅ。」
☆
「先輩ぃ、アナウンス原稿ってどういう風に書けばいいんですかぁ?」
職員室で先生に参加表明と参加部門の申請を行った後、私は生徒会室にやってきた。神倉先輩は発声練習や読み上げ練習の後は、大概生徒会室で執務を行っている。生徒会はやることが一杯あってとても忙しそうだ。私としてはお仕事の邪魔をしているみたいで気が引けるけど、先輩は放送関係で頼られることが嬉しいらしく、いつも“遠慮無く聞いてね”と女神様のような笑顔で言ってくれるのだ。
「そうね。まずは、自分が興味のあるテーマを見つけて、それについて取材をするのよ。例えば、私は高校生がマイナカードについてどう思っているのかを調べるつもりよ。二年生だけでなく、三年生や一年生も調査して学年によってどのように考え方の違いがあるか、興味深くない?」
「なるほど。自分が疑問に思っていることや興味のあることについて調べれば良いんですね?」
「そう、自分の思い込みや想像では無く、きちんと調査した結果をまとめなさい。嘘はだめよ。」
「判りました!」
さて、何について調べようか・・・。
☆
「私は芥川の“羅生門”を選ぶことにしたわ。短編だから読むところを抽出するのがやりやすそうだから。」
「私は“金の角持つ子どもたち”ね。芥川は文章が難し過ぎるわ。」
などと、紙織ちゃんと響子ちゃんは遣り取りをしていた。二人とも朗読作品を選び終わったようだ。
「ドルフィンちゃんは、どんな原稿にするか決まった?」
突然話しを振られてしまった。
「・・・うーん。先輩のように難しいことを調べてまとめるのは未だ無理っぽいから、もっと身近なことがいいかな・・・。」
「身近なことって?」
「うーん・・・例えばテストの事とか?ほら、私達の学年って中間考査が無くなったじゃない。“中間考査が無いことをどう思っているか?”なら、同学年の子たちに聞いて廻れば、一杯意見を集められそうじゃない?」
何でも法律が変わって、去年から中間考査が廃止されたらしい。私たち1年生は入学したてで未だよく判っていないんだけどね。
「なるほど。三年生は中間考査があるみたいだから、比較するのも面白いかも。」
「おいおい、三輪崎クン!内気な私が三年生にそんなことを聞いて廻れるとでも思うのかね?」
「いや、思わない。」
「でしょう?取り敢えず一年生限定で調査するよ。四百字程度にまとめなきゃいけないから、あまり壮大な調査をやっても活かし切れないよ。」
「それもそうか。」
「そう言うお二人はどう?抽出するところは決まったの?」
「うーん・・・どういう風に抽出すれば良いのか、いまいち判んないだよねぇ。」
「なので、先輩に相談してみようかと思ってるんだよ。」
「じゃあ三人で生徒会室に行きますか。」
「うむ、そうしよう!」
そういう事になった。