撮影は終わったけど、編集ってどうやればいいんだろぅ???また真帆ちゃんのお世話になるしかないかぁ・・・。
「きゃあーーーー!ドルフィンちゃーーーん!久し振りーーーー!」
そう叫びながら、真帆ちゃんが抱きついてきた。
「ま、真帆ちゃん、お久し振り。げ、元気そうでなにより。」
「うん!私は元気だよぉー!」
うん、この高いテンションは普段のお友達にはいないので、ちょっと戸惑ってしまうなぁ。でも、まぁ、それだけ私のことを好いてくれてるってことだからねぇ・・・うん・・・嬉しいけど・・・やっぱりちょっと恥ずかしいかな。
「今日もお邪魔してしまって、ゴメンね。そちらも編集なんかで忙しいのに。」
「ううん、そんなことないよぅ。先生も歓迎するって、待ってくれてるし。」
「えっ!?先生を待たせてるの?じゃぁ急がなくちゃぁ!」
まさか桑畑先生が待ってくれてるとは!?吃驚した私達は急いで高倉高校放送部の部室へと向かった。
「失礼します!東和高校の栗須以下3名、ただいま到着しました!桑畑先生はおられますか!」
ノックもそこそこに扉を開けると、パソコンの前に座っていた桑畑先生がこちらに振り向いてにやりと笑った。
「おう!よく来たな。」
「はいっ!今回もお世話になりますっ!」
「渋川から聞いたんだが、編集について勉強したいってことでいいのかな?」
「はいっ!先週の土曜日に撮影に行って来ました!素材は撮り終えたのですが、編集ってどうやればいいのか、皆目わからないので、勉強させて頂きに参りました!」
「うむ。2月のコンテストに参加するための番組・・・ってことで良いのかな?」
「はいっ!1分以内のショートムービーと言うことで、練習に丁度良いと思いまして。」
「ふふふ。実のところ、短くまとめる方が難しいんだがな。・・・まあいい。では早速始めるか。こっちに来なさい。」
桑畑先生は、パソコンの前に私達を手招いた。
「まず、編集に必要な道具は、パソコンと編集ソフトだ。昔はそこにあるリニア編集機を使っていたんだが、今はパソコンとソフトがあれば誰でも編集ができるようになったんだ。いい時代になったよなぁ。」
「先生ぇ、“りにあへんしゅう”って何ですか?」
「うん?・・・あぁ、君らの世代だと“ビデオ”は知らないか。」
「言葉は使いますよ。ハードディスクやDVD、ブルーレイなんかに録画したもののことですよね?」
「うん、そうだね。でも、元々はビデオテープに録画したもののことだったんだよ。」
「“びでおてーぷ”・・・ですか?」
すると、先生は戸棚を開けて、何やら黒い箱のようなものを取り出した。
「これがビデオテープだよ。」
「えっ?これに録画できたんですか?」
「元々はね。よくテレビで“VTR、どうぞ”、なんて台詞を聞くだろう?VTRとは、“ビデオテープレコーダー”の頭文字をとった略称で、ビデオテープレコーダーがビデオの正式名称なんだよ。“テープ”とは、磁性体をテープ状のフィルムに塗布した記録媒体で、磁化の変化によって情報を記録・再生できるんだ。」
「へぇー、私は初めて見ました。」
「家庭用の録画機は、ほとんどがハードディスクタイプになったからね。無理もない。でも、磁気テープ自体は現在も使われていて、テレビ番組などではテープでの納品が今でも主流なんだよ。」
「えっ!?そうなんですか?」
「実はそうなんだよ。・・・おっと、話がズレてしまったね。リニア編集の話だったな。えーと・・・“リニア編集”は、直訳すると“直線的な編集”って意味になるな。内容を大まかに説明すると、ビデオテープに録画された映像を再生して、必要な部分を別のテープに記録していく編集方法のことだ。」
「???・・・先生ぇ、“直線的な編集”と言う言葉と、テープからテープへダビングしていくこととの関連性が良く判りません。」
「うん。後で実際に作業をしてみると判ると思うけど、パソコンを使っての編集では、何時間もある長い映像でも、好きな箇所に一瞬で移動して再生できるし、映像や音声をつなぐのも切るのも自由自在、後から途中に差し込むことだってできる、凄く便利なものなんだ。しかし、リニア編集では、例えば、編集の途中で最初の方のある部分が不要だった場合、カットしたことで出来た間を詰めるために、その後の全てを録画し直さないといけないんだ。作品の時間軸に沿って編集していくから“直線的な編集”、リニア編集と呼ばれているんだよ。」
「なるほど・・・編集し直したい場合は、最初からやり直しになる・・・ってことですか。映像のどの部分を使うかや、どういう順番で編集するかを、事前にきっちりと設計してからでないと酷い目に遭いそうですね。」
「うん、だから昔は編集にも凄い時間が掛かったんだよ。それにリニア編集機は値段も高かったから、一般の人には縁遠いものだったね。」
「・・・なるほど。でも、そんな不便なものが何でテレビでは今でも現役なんですか?」
「それはね、テープをデッキで再生し、その映像や音の信号を別のテープに記録すると言うシンプルな編集方法だからこそ、むしろ有利なんだよ。パソコンを使った編集の場合は、仕上がりを確認するために完成した作品を頭から見直さないといけないし、テレビ局に納品するためにデータをテープにダビングしないといけない。これらの作業には、作品の実時間が必要になってしまうんだ。また、編集が終わった後は必ずレンダリングを・・・えーと、これはコンピューターに計算させることなんだが、これには意外と時間が必要なんだ。しかし、リニア編集の場合は、画のつながりや加工を確認しながら同時に録画もしていくので、編集が終われば即完成となる。だから、その日の内にニュースを放送しなければならない報道番組みたいに、時間に追われる現場では逆に重宝なんだよ。」
「へー、新しいものが全て優れている訳でもないんですね。」
「そういうこと。もっとも、パソコンを使っての編集は、作品の構成などを試行錯誤するのに便利だから、リニア編集の時よりもより凝った作品を作れるようになったのは確かだね。・・・さてと、編集の練習を始めようか。映像データは持ってきたかい?」
「はいっ!良く判らなかったので、ビデオカメラごと持ってきました。この中に今回撮影した映像は全部入っています。」
「では、最初にデータをコンピューターに移す作業からだ。これはパソコンを使ったことがあるなら、そんなに難しい作業じゃない。やって見せるから覚えなさい。
まずは、ビデオカメラとパソコンを USB ケーブルでつなぐ。この時、ビデオカメラは電源オフの状態にしておきなさい。つなぎ終わったら、ビデオカメラの電源を入れる。最近のカメラは自動的にパソコンに認識されるようになっているけど、たまにカメラのモニターに“パソコンとつなぐ”とか、コマンドが表示されるものもあるから、その場合は該当する項目をカメラ側から操作しなさい。
さて、ビデオカメラの電源を入れると、パソコンの画面に“このデバイスに対して行う操作を選んでください。”と選択画面が表示されるから、“フォルダを開いてファイルを表示”を選択して、順に“AVCHD”>“BDMV”>“STREAM”と選んでいきなさい。そしたら、そこに動画ファイルが保存されているから。このフォルダ内の動画データを全て選択して、コピーして、パソコン内の保存したいフォルダに貼り付けてやればいい。今回は、“東和放送部”と言うフォルダを作ったから、そこに保存した。
後は、パソコン画面の右下にあるタスクメニューで USB メモリを取り出す手順と同様にビデオカメラ名を選択し、“取り出し”をクリックしてからケーブルを抜けば、データを写す作業は終了だ。」
「思っていたよりも簡単ですね。」
「まぁ、誰にでも出来なきゃ困るからね。さて、お次は編集だが、編集を始める前に自前のパソコンに編集ソフトを入れないといけない。現在、編集ソフトはいろんなものが販売されているから、選ぶのがちょっと大変だが、ほとんどのソフトには無料体験版があるから、色々試してから選ぶといい。」
「・・・ちなみに、高倉高校では何を使っているんですか?」
「そうだな・・・選択肢がたくさん有り過ぎると選べないか・・・参考になるだろうから、うちで使っているソフトを紹介しようか。うちでは、こちらのパソコンにAdobeのPremiere Proと言うソフトを入れていて、こちらのパソコンにはCorelのVideoStudio Ultimateと言うソフトを入れている。生徒が主に使っているのはVideoStudioの方だよ。」
「・・・どう違うんですか?」
「Premiereは、映像制作の業界ではスタンダードなソフトで、多くのプロエディターが使用している。こいつの長所は、プロ向けの編集ツールが備わっていて、Adobeの他製品との連携がとれていることだ。短所としては、操作性が初心者には少しハードルが高いことと、スぺックの高いパソコンが必要だと言うことかな。値段はちと高いが、それに見合うだけの機能と、テレビや映画の編集にも通用するレベルを持っているぞ。
それに対してVideoStudioは、 Windows 向けに開発された手ごろな値段のソフトで、操作画面は独特なものだが、覚え易く、他の編集ソフトを使ったことのない初心者でもすぐに使い始めることができる。短所は、一般の動画編集ソフトとは操作画面が異なっていることと、中級者以上が使うには機能が少ないことかな。うちの生徒は、使いやすいことからVideoStudioを使っているよ。」
「なるほど・・・私達は初心者だから、VideoStudioがいいかもしれませんね。」
「まぁ、将来プロを目指すのであれば、Premiereに慣れておく方がいいかもしれんが、まずは編集作業そのものに慣れておかないと話にならんからな。購入するとなると予算の問題もあるから、顧問と相談してみなさい。まぁ、取り敢えず今日はVideoStudioを使って練習してみるか。」
「はいっ!お願いします。」




