屋内の撮影でも考えなきゃいけないことがいっぱい!撮影は一日にしてならず!
「屋内のロケハンをする時は、まず、部屋のいろいろな方向から撮影をしてみること。その部屋がどんな間取りで、どのくらいの広さで、何がどこに置かれているのか、を把握することでカメラ位置を決め易くなるからね。」
「はいっ!先生!インタビューの場合、撮影当日に初めてそこに訪れる・・・ってこともありえると思うのですが、その場合はどうするんですか?」
「たしかに、創作ドラマと違ってドキュメンタリーの場合は、むしろ撮影当日に初めて訪れる場所、ってパターンが多いだろうね。そんなときは、それまでどれだけ場数を踏んでいるか、が重要だろうな。場数を多く踏んでいれば、初めて訪れる部屋であっても、どのポジションから撮影すればどんな風に撮れるのかをイメージできるようになるからな。」
「なるほど。やはり経験が大事なんですね。」
「その通りだ。・・・あぁ、もしロケハンができたなら、撮影本番までに絵コンテを描いておくことをお勧めするぞ。コンテがあれば、あらかじめカメラの位置をある程度検討することができるから、スムーズに撮影を進行することができる。さて、次は光の入り方だ。屋内での撮影では、窓の位置や数が重要になるんだ。部屋にいくつ、どの方向に窓があって、どのくらい採光できるのかは必ず確認しておかなきゃいけないポイントだ。」
「それは、屋外の時のお話に出て来たフレアやゴーストが起こらないようにする、ってことですか?」
「うーん、少し違うかな。屋外と違って、屋内はそもそも光の量が少ないから、窓から入る光が強すぎて、人物が極端に暗く映ってしまったり、陰影が強調されすぎたりするんだよ。だから、自然光が必要ない場合は、遮光してしまうのも一つの手だな。」
「“しゃこう”・・・ですか?」
「“光を遮る”と書いて“遮光”と言うんだ。カーテンやブラインドを使って、窓から光が入らないようにすることだよ。」
「あぁ、そう言うことですか。判りました。」
「それから、光の量だけでなく、演出上窓を活用する場合もあるから注意しなさい。」
「窓を活用する演出・・・ですか?えっと・・・具体的にはどんな風にでしょうか?」
「窓の外から見える景色や光の加減、角度なんかは重要な情報になる場合があるんだよ。例えば、窓からランドマークが見えているなら、インタビューをしている場所をわざわざ別カットを使って説明する手間を省くことができるだろう?」
「すみません、先生。“ランドマーク”ってなんですか?」
「うん、ランドマークって言うのは、国や地域などを象徴するシンボル的なモニュメントとか建物とかのことだよ。灯台や鉄塔、特に変わった特徴のある建物みたいに、その土地における方向感覚の目印になるようなものを指す場合もあるね。例えば、東京スカイツリーが映像に映っていれば、説明が無くても、撮影場所が東京であることがわかるだろう?」
「あっ!そうか!ドラマや映画で、よく特徴的な建物が映っているのは、そのためなんですね?」
「そう言うこと。アマチュアビデオなんかで、わざわざ“ここは東京です”ってナレーションを入れてるのをよく見かけるけど、ランドマークを入れておけば、このナレーションは不必要だよね?映像作品なんだから、ナレーションを多用せずに、できるだけ映像で表現するべきなんだよ。」
!!!“映像で表現する”か!なるほど!なんか、番組作りの神髄を教わった気がする。
「ランドマークだけではないぞ。光の入り方によって、インタビューしている時間帯もわかる。同じ部屋で、朝方、昼過ぎ、夕方、夜とそれぞれの時間帯に同じアングルで撮影してみるとよく判るから、一度やってみなさい。時間帯によって光の入り方や色味が変わるからね。時間帯を表現する必要があるときに利用するんだ。」
ふむ。そうか。朝日と夕日じゃ雰囲気が違うもんなぁ・・・。あっ?!
「先生!光の入り方だけじゃなくて、時計をさりげなく入れているのも同じ意図と考えていいんですか?」
「そうだよ。君はいいところに気が付くねぇ。時計も視聴者に時間と言う情報を教える良い小道具になるよね。それでは、次のポイントに話を移そう。次は、そうだな、音響環境だな。屋外でもそうだが、どんな音が聞こえるかは撮影にとってすごく重要なんだ。そうだな・・・これなんかは判り易い悪い例の一つだよ。」
そう言って、先生は一本の映像を再生した。その映像には、美術室らしき部屋で、キャンバスの前に筆を持った生徒が映っていた。どうやらクラブ紹介をしているようなんだけど、なんか変な音が被っていて生徒の声がはっきりと聞こえない。この音は何だろう?
「生徒さんの声がよく聞こえないですね。この声に被っているゴーーーって音は何でしょうか?」
「これはね、上空を通過中の飛行機の音だよ。」
「えっ?!飛行機ですか?」
予想外過ぎる。こんなに大きな音がしてるんだぁ・・・。
「どう見ても屋内ですよね?それなのに、こんなに大きな音が被るんですか?」
「うちの学校の真上は、国際空港へ降りる飛行機の航路になっているんだ。飛行機の高度が低い分、より大きな音がするんだよ。録音スタジオでない限り、普通の建物には防音設備はないからね。飛行機のエンジン音、って言うのは珍しい例かもしれないけど、頻繁に車が通る大通りに面していたり、近くで工事が行われていたりすると、こんな風に映像に邪魔になる音が入ってしまう場合があるから、動画撮影を行う場合は周辺の音響環境を聞いてみて、撮影の邪魔にならないかを確認する必要があるんだ。」
「先生ぇ!インタビューする場所を変えることができないけど、こんな風に邪魔になる音が常にしている場合は、どうすればいいんでしょうか?」
「その場合、カメラ用の単一指向性マイクを使うって手があるよ。単一指向性マイクなら、環境ノイズを低減しながら正確に音声を拾ってくれるんだ。お勧めなんだけど、値段がそれなりにするから、部費との相談だろうね。」
うーん。値段がそこそこするのかぁ・・・。
「ちなみに、どのくらいでしょうか?」
「そうだなぁ。うちで使っている奴で、3万ちょっと、ってとこかなぁ。マイクはピンキリだから。プロ仕様だと3万で利かないからなぁ。でも、あんまし安過ぎるものはお勧めしない。安い奴は大概性能がイマイチで、結局使い物にならないからね。」
うちの部はこれまで番組作りをしてこなかったから、まずは一から機材を揃えていかないとなぁ・・・。取り敢えず、絶対に必要なものから順に揃えて、贅沢品は順次買っていくしかないかぁ・・・。マイクは後回しだろうなぁ・・・。
「さて、お次は背景だ。インタビューの場合、背景も重要だ。さっき窓から見える風景も大事と言っただろう。それと同じなんだが・・・。」
「インタビューの対象者に関する情報も一緒に映す・・・ってことですか?」
「おぉ、その通り。例えば、大学の先生にインタビューする場合、研究室で撮影を行っているだろう?ごちゃごちゃ説明しなくても、本がいっぱい並んでいたり、標本や顕微鏡なんかが置いてあったりすれば、この人は大学の先生なんですよ、って視聴者に認識させることができるんだ。極端な話、その人が大学の先生でなくても、そういった背景の前でしゃべらせれば、視聴者が勝手に大学の先生と勘違いしてしまう、ってこともできる。まぁ、これは詐欺みたいなもんだから、高校の放送部の番組でするべきじゃぁないけどね。」
あぁ、印象操作って奴かぁ・・・。映像の力って凄いんだなぁ。
「どこで撮影をしているか、誰にインタビューしているか、そんな情報を視聴者に伝えるために背景も疎かにしてはいけないよ。さて、お次は電源の位置だ。撮影には照明機材が必要だったり、充電しなければならない時もあるからね。ロケハンの際に、電源の位置も確認しておくと、当日スムーズにセッティングできる。撮影によっては延長コードが必要になることもあるから、念のため用意していくとよいだろう。」
「先生!電源を使って良いかどうかの確認もしておかないと駄目ですよね?」
「うん。そうだ。よく判っているねぇ。勝手に使うのは盗電だから絶対にやってはいけないよ。事前に必ず許可をもらっておこう。」
「判りました。」
「さて、最後の注意点だが、事前にロケ地周辺に駐車できるかどうかを調べておくことも重要だ。自分たちで機材を運ぶのであれば問題ないが、何せ撮影機材は結構な重量になるから、遠出の場合は、できるだけ多くの部員で分担して運ぶか、顧問に自動車で運んでもらうかしなければ大変だ。特に電車など公共交通機関から離れている場所では自動車が無いと詰んでしまう。だから、現地に駐車場が無い場合は、近隣のコインパーキングまでの距離や、どういった道なのかを把握しておくと安心だ。」
そうかぁ・・・番組内容によっては、顧問の協力も必要なんだなぁ・・・。先に西町先生に相談しておかないとなぁ・・・。勝手に番組作りはできないかぁ・・・。




