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えっ!放送の世界にもコンテストってあるんですか?!しかも全国大会が?!

  毎日練習に明け暮れていると、いつの間にやら4月も終わりに近づいていた。そんなある日、何時もは練習に顔を出さない顧問の西町先生が、珍しく練習場所として使っている物理実験室にやってきた。ちなみになんで物理実験室で練習をしているかと言うと、西町先生が理科の先生なので、使用許可が取り易かったからだ。

「先生が来られた・・・ってことはいよいよ申し込みの時期ですか?」

 神倉先輩がそう尋ねた。

「そうだよ。今年出たい部員は申し出なさい。」

 私にとっては何の話やらさっぱり分からなかったので、手を挙げて質問してみた。

「先生ぇ、何の申し込みですか?」

「あぁ、1年生は初めてだから知らないか。Nコンだよ。正式名称をNHK杯全国高校放送コンテストと言って、高校放送部の全国大会だね。それの県予選が6月に実施されるんだ。その申し込みのことだよ。」

 えぇ?!放送にも全国大会があるの?

「1年生は即答できないだろうし、ゴールデンウイーク明けに最終確認をとろうか。2・3年生は皆出るな?」

「「「はいっ!出ます!」」」

「うん、では部門はどうする?」

 “ぶもん”?アナウンサーのコンテストじゃないの?私は思わず手を挙げて質問してしまった。

「先生ぇ!アナウンサー以外にも部門があるんですか?」

「うん、あるよ。アナウンス部門、朗読部門、ラジオドキュメンタリー部門、ラジオドラマ部門、テレビドキュメンタリー部門、テレビドラマ部門、校内放送研究の7部門だな。」

「えっ、そんなにあるんですか?どう違うんですか?」

「アナウンス部門は、自分が取材した記事を400字から500字程度にまとめて、それを読み上げるんだ。朗読部門は、指定された小説や古文の中から一部分を600字程度抜き出して、それを読み上げると言うものだよ。ラジオドキュメンタリー部門は、取材した内容を音のみで番組にして発表するもの、ラジオドラマ部門は、音のみで製作した創作ドラマを発表するものだ。一方のテレビドキュメンタリー部門は、取材した内容を映像で表現した番組を発表するもの、テレビドラマ部門は、映像で製作した創作ドラマを発表するものだね。校内放送研究は、日常の校内放送活動の中から、問題点を提起して、問題解決のためにどのような努力をしたか、もしくは技術的な創意工夫をしたかを発表しあうものだ。」

 ほへぇ~放送部の活動って結構幅広いんだ。でも、よく考えてみれば、テレビやラジオも“放送”なんだから当たり前だよね。

「先生ぇ!私たち1年生でもエントリーできるんですか?」

「できるよ。ただし、ラジオとテレビは無理だけどな。」

「えっ!?なぜですか?」

「ラジオとテレビは、企画から始まって、取材並びに録音や撮影、台本作成、編集と、やることが一杯あるんだ。とても今から始めても間に合わないよ。」

「じゃあ、じゃあ、エントリーする学校はどうしてるんですかっ?」

「2月にはすでに企画会議を開いてるんだよ。3月には大まかな台本案を作って、4月には取材を始めている。1本の作品を作るのに3か月はかかるからね。」

「えーと、つまり、前年度から作り始めないと無理ってことですか?」

「そういうこと。だから1年生が一から参加するなら来年からと言うことになるな。」

「ほえ~、随分と先のことですねぇ。」

「まぁ、番組制作をやりたければ、1年生の間に、取材の仕方、取材のアポの取り方、取材の事前準備、取材に必要な機材、例えばICレコーダーやビデオカメラなんかの操作方法など、出来るようになっておかないといけないことがたくさんあるから、実際には今から始めないと来年にも間に合わないけどね。」

「判りましたぁ。今回はアナウンスか朗読を目指しまぁす。」

 うーむ、放送とは実に奥が深い世界なのだ。

 ☆

「先輩!私たち1年生は、アナウンスと朗読、どちらに出た方がいいんですか?」

 先生の説明を聞いても、具体的にどちらが良いのかいまいち判らなかった私は、神倉先輩に聞いてみた。

「どちらかはその人次第・・・かな?」

「ふへっ?どういうことですか?」

「アナウンスの技術と朗読の技術は同じようで違うのよ。アナウンスは、取材を行って、その内容を他人に伝わるように作文して、聞いているだけで内容が伝わるように語らなければならない・・・。朗読は、既存の小説などを読むから、自分では作文しないで良い代わりに、台詞の言い回しや文章の語り方などを、聞いている人達に伝わるように工夫しなければならない。特に注意すべき点は、演じ過ぎてはいけないってことね。私たちは放送部であって演劇部ではないのよ。朗読は演劇ではないの。あくまでも文章で書かれた原作を相手に伝わるように、語って聞かせなければならないのよ。どちらが自分にとって向いているか向いていないか。まずは自分自身の特性を知るところから始めないとね。」

 むむっ・・・なんか判ったような判らないような・・・。

「ふふっ・・・腑に落ちないようね。取り合えず、今回参加してみて、どちらが自分に向いているか考えてみたら?」

「あ、いえ、その、“取り合えず”どっちに参加した方が良いか、なんですけどぉ。」

「それは自分で考えなさい。他人から指示されて決めることじゃないわよ。」

 それもそうか。



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