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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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神倉先輩!”母音の無声化”って何ですか?教えてください!

「私たちにとっては難しい・・・んですか?」

「ええ、そうよ。そもそも日本語は有声音がほとんどで、私たち日本人の多くは無声化して発音するクセがついていないの。特に、関西をはじめとした西日本一帯は、有声音が顕著にみられる方言を使っているので、訓練をしないと無声化できないのよ。

 さてと・・・“無声子音”について説明しましょうか・・・。口で説明するのは難しいから、黒板に書いて説明するわね。“無声子音”は、次の十個の子音のことよ。」

 そう言うと先輩は、黒板に“k”、“s”、“∫”、“t”、“ts”、“t∫”、“h”、“hy”、“f”、“p”と書いた。そして順番に指さしながら、

「まず、これはカ・キ・ク・ケ・コの子音よね。次はサ・ス・セ・ソの子音。これはシ・シャ・シュ・ショの子音。その次はタ・テ・トの子音。これはツの子音。次はチ・チャ・チュ・チョの子音。その次はハ・ヘ・ホの子音。これはヒャ・ヒ・ヒュ・ヒョの子音。次はファ・フィ・フ・フェ・フォの子音。最後がパ・ピ・プ・ペ・ポの子音ね。この十個の子音に挟まれると、“i”と“u”は無声化されるの。たとえば・・・。」

 そう言うと、先輩は黒板にローマ字で“futatsu”、“ashita”、“suki”、“gakusei”、“hitori”と言った単語をさらさらと書いた。

「いい?この“futatsuふたつ”は、fとtが無声音だから、その間にあるuの音が聞こえなくなるの。さっきと同じように、喉に指をあてて発音してみて?」

「はいっ!“ふたつ”。」

「どう?」

「はいっ。“ふ”の時、喉は振るえませんでした。」

「OK。では、次の“ashitaあした”も読んでみて?」

「はいっ!“あした”。」

「どう?shとtが無声子音だから、その間にあるiの音が聞こえなかったはずよ。」

「はいっ、確かに。」

「次の“suki”ではsとkの間のuが、“gakusei”ではkとsの間のuが、“hitori”ではhとtの間のiが無声化するはずよ。」

「“すき”、“がくせい”、“ひとり”・・・確かに喉が振るえません!・・・さっき、先輩は私たちには難しいっておっしゃいましたよね・・・私にできるのは何故なんですか?」

「それはね、ドルフィンちゃんは日頃の訓練で、単語のアクセントを正しくしゃべれるからよ。実は、無声化は正しいアクセント、正しいイントネーションで話せば、意識してやらなくても自然にできるのよ。でも、私たちは意識しなければ、すぐに方言のアクセントやイントネーションが出てしまうわ。すると、途端に無声化が出来なくなってしまうの。常に意識し続けてしゃべっていると疲れてしまうわ。疲れずに長時間しゃべれるようになるためには、無意識に無声化ができるようにならねばならないのだけど、そうなる為には、相当な訓練を積み重ねないといけないから“難しい”のよ。」

「なるほど・・・でも、私たちは高校生ですから、一日中無声化できなくても良い訳ですよね。コンテストの最中さえ正しいアクセントとイントネーションを保てれば、とりあえずOKではないでしょうか?」

「そうね。プロのアナウンサーや声優にならないのなら、それで良いと思うわ。もし、プロを目指すなら、今から訓練を積み重ねていく必要があるんじゃないかしら。」

「判りました!私は将来プロを目指すかどうかなんて考えたこともないんですけど、とりあえず練習メニューには加えたいと思います。」

「ええ、そうね、それが良いわ。・・・さてと・・・説明を続けましょうか。無声化の法則性は、さっき言った通りなんだけど、もう一つ大事な無声化があるのよ。それは“無声子音に続くi母音とu母音が言葉や文章の終わりにあって、且つその拍にアクセントがない場合も無声化される”と言うものよ。」

「????」

「ふふっ、何のことか判らないって顔をしてるわね。要は、文章の終わりが“何々です”とか、“何々ます”“何々あります”になることが多いでしょ。この最後の“す”が無声化する、ってことよ。」

「ええっ、そうなんですか?」

「ええ。NHKのニュースを注意深く聴いてごらんなさい。アナウンサーはちゃんと無声化しているわよ。

 じゃぁ、次は練習方法を教えておくわね。私たちは小さいころから無声化していない音をずっと聞き続けてきたから、無声音には違和感があるから、その違和感を払拭しないとね。まずは、無声化は声帯を使わずに息で抜く発音方法だから、“息だけの発音をしよう”と心がけること。今から黒板に書く言葉をメモしておいてね。これらの言葉を、さっきやったみたいに喉に指を当てながら繰り返し発音して意識しなくても無声化できるようになればOKよ。」

 そういうと、先輩は再び黒板に言葉を書き始めた。おっと、メモしないと・・・。ええっと、何々・・・“北(kita)”、“気候(kikou)”、“喫茶店(kissaten)”、“作詞(sakusi)”、“学生(gakusei)”、“深い(fukai)”、“カラス(karasu)”、“キツツキ(kitutuki)”、“息子(musuko)”、“趣向(syukou)”、“恰幅(kappuku)”・・・と。

「三輪崎さんや鵜殿さんも一緒に練習すると思うから、ポイントを説明しておくわね。ローマ字に下線を引いたけど、この下線を引いた音が無声化される部分よ。で、マスターするポイントは、“息を前に強く出す”こと。まずは、口の前に人差し指を立てて、“深い”って発音してみて。指に息が吹きかかっていれば無声化で来ているはずよ。逆に、あまり息がかからないようだったら、無声化できていないわ。その場合は、指をロウソクに見立てて息を吹きかけてみて。息を吹きかける感覚がつかめるまで繰り返してね。感覚がつかめたら、もう一度“深い”って発音してみれば良いわ。」

「“深い”が良いんですか?“北”や“気候”じゃなくて?」

「ええ。“ふ”の音が一番息を感じやすいと思うから。“深い”の無声化に慣れたら、他の言葉の無声化にも挑戦してみてね。」

「判りました。」

「えーと、他にお薦めの練習方法は・・・そうね、有声音と無声音を使ったトレーニングかしら。まずは、“す”って発音する口の形で、歯の隙間から息だけを“スッ、スッ、スーーーッ”って送り出してみて。これが音の出ていない無声化の状態ね。次に、いつも通りにしゃべる感覚で“スッ、スッ、スーーーッ”って喉を鳴らして声を出してみて。こちらが有声化の状態よ。両方の感覚が掴めたら“スッ、スッ、スーーーッ”って、無声化と有声化を繰り返し行えるようになるまで練習するのよ。」

「はいっ!」

「そうそう、無声化ができるようになれば、“外郎売”由来の早口言葉も言いやすくなるわよ。」

「“ういろううり”・・・ですか?」

「ドルフィンちゃんも良く知っているわよ。“外郎売”と言うのは、もともとは歌舞伎の劇中で演じられる趣向のひとつで、“ういろう”の由来や薬効を述べるせりふ芸なの。台詞の一部を取り出して、俳優やアナウンサー、声優の練習教材として使われているわ。

 例えば、“こごめのなま噛小米のなまがみこん小米のこなまかみ”とか、“古栗の木のふる切口、雨がっぱがばん合羽か”とか、“京のなま鱈、奈良なま学鰹、ちよと四五〆目”とか、“武具馬ぐぶぐばく三ぶくばぐ、合せて武具馬具六ぶぐばぐ”とか、“菊栗きくくり三きく栗、合てむきごみむむきごみ”なんかは、よく練習に使っているでしょう?みんな“外郎売”由来なのよ。」

「へーえ、知らなかったです。もともと歌舞伎なんですね。」

「演劇部や放送部の練習教材としてあまりにも普及しているから、オリジナルを知らない人も多いのよねぇ。・・・じゃぁ、次は鼻濁音ね。」

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