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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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いよいよ結果発表だ!・・・ああ、神倉先輩の言った通り、努力は人を裏切らないんだなぁ・・・。

『まずは、アナウンサー部門です。優秀賞は、御船高校2年鷲頭浅茅さん、東和高校1年栗須入鹿さん、丹鶴高校2年池田阿須賀さん、・・・優良賞は、高倉高校1年渋川真帆さん、猪垣高校2年高森香菜さん、越路高校2年西向亜衣さん・・・奨励賞は、丹鶴高校1年九鬼真司さん、猪垣高校2年市野咲花さん、御船高校1年川関雅也さん、以上の皆さんです。

 続きまして、朗読部門の結果を発表します。優秀賞は、高倉高校2年浜野宮優華さん、東和高校1年三輪崎響子さん、丹鶴高校1年鏡野月渚さん、・・・優良賞は、御船高校2年二河玲佳さん、東和高校1年鵜殿紙織さん、高倉高校2年荒船絢さん、・・・奨励賞は、越路高校1年浦神耕太郎さん、猪垣高校2年橋杭海愛さん、丹鶴高校1年珊瑚美那さん、以上の皆さんです。続きまして、オーディオメッセージ部門の結果を発表します。・・・・・・・・・。』

 えっ・・・響子ちゃんは優秀賞で、紙織ちゃんは優良賞・・・えっ、えっ、ど、どうしよう・・・私と響子ちゃんは全総文に行けるけど、紙織ちゃんは行けないよぉ・・・。

『・・・以上です。では、続いて表彰式を行います。今、名前を呼ばれた人、オーディオメッセージ部門とビデオメッセージ部門に関しては代表者1名が舞台に上がってください。』

 優秀賞は取れたけど・・・凄く気が重い・・・。どうしよう・・・。

「・・・ドルフィンちゃん、もっと胸を張って!優秀賞だよぅ、凄いよぉ!」

 えっ・・・その声は、紙織ちゃん!

「響子ちゃんも優秀賞かぁ・・・凄い!二人も全総文に行けるなんて!」

「有り難う、紙織ちゃん。紙織ちゃんも優良賞だよ!凄いね。三人とも賞状が貰えるね!」

「なんで、ドルフィンちゃんは優秀賞なのに、そんな顔してるの!」

「えっ・・・だって・・・。」

「もしかして、私に気を使ってるの?そんな気を使われたって、ちっとも嬉しくないよ。大丈夫!私は、次こそは優秀賞を取ってみせるわ!今回は二人に負けちゃったけどね!」

 ああ・・・私はなんて幸せ者なんだろう・・・こんなに良いお友達がいて・・・。よし!紙織ちゃんの為にも胸を張って表彰に臨もう!

「有り難う、紙織ちゃん。」

「何を言ってるの!しっかりしてよね!」

『では、表彰式を始めます。県放送教育研究会会長、城山大輔先生に表彰していただきます。』

 おぉ、Nコンの時のお偉いさんだ。2回目だからか、前ほどの緊張はないな・・・。おっと、私の番だ。

「“アナウンス部門、優秀賞、東和高校、栗栖入鹿殿、貴方は県高等学校総合文化祭放送部門において、頭書の通り、優秀な成績を修められました。よってここに賞します。令和〇年11月12日、県高等学校文化連盟放送部会会長、城山大輔”・・・おめでとう。」

「有り難うございます!」

 ぺこりとお辞儀をし、両手で賞状を受け取った。列に戻ると、Nコンの時とはまた違ったものが込み上げてきた。今回は自分でも納得の出来だったからかなぁ・・・。

『続いて、朗読部門の表彰を行います・・・。』

 おっと、今度は朗読部門だ。響子ちゃんは二番目だな・・・。

「“朗読部門、優秀賞、東和高校、三輪崎響子殿、貴方は県高等学校総合文化祭放送部門において、頭書の通り、優秀な成績を修められました。よってここに賞します。令和〇年11月12日、県高等学校文化連盟放送部会会長、城山大輔”・・・おめでとう。」

「有り難うございます。」

 気が付いたら思いっきり拍手をしてた。おめでとう、響子ちゃん・・・。

「“朗読部門、優良賞、東和高校、鵜殿紙織殿、貴方は県高等学校総合文化祭放送部門において、頭書の通り、優秀な成績を修められました。よってここに賞します。令和〇年11月12日、県高等学校文化連盟放送部会会長、城山大輔”・・・おめでとう。」

「有り難うございます。」

 おめでとう、紙織ちゃん!四月に放送部に入ってから、三人で毎日毎日ストレッチにロングトーン、発声練習、滑舌練習と、基礎練習を黙々とやり続けて来たもんね。そして今日、とうとう三人全員が表彰されるところまで来たんだ!・・・これまでの練習風景を思い出すと涙が滲んできた。神倉先輩が言った通り、努力は人を裏切らないんだなぁ・・・。

『・・・以上で、表彰を終わります。表彰された皆さんは降壇して席に戻ってください。なお、各部門の優秀賞受賞者並びに作品は、来年岐阜県で開かれます全国高等学校総合文化祭に推薦されます。』

 ☆

 総文祭の次の日、私は早速生徒会室を訪ねた。扉をノックすると、すぐに中から返事が返って来た。穏やかで美しく、そしてよく通る声。聞き慣れた神倉先輩の声だ。

「先輩、今お時間はよろしいでしょうか?」

「あら?ドルフィンちゃん。随分と他人行儀ね。遠慮なんかしなくていいのに。」

「いいえ。生徒会長の忙しさは、前の会長のお仕事を見て知ってますから。邪魔しちゃいけないと思って。」

「良いのよ。可愛い後輩がわざわざ来てくれたんだもの。それに、生徒会の仕事ばかりしていると気が滅入ってくるから、たまに別の事をする方がかえって効率が上がるのよ。だから気にしないで。」

「そう言っていただけると、嬉しいです。」

「で、御用向きはなぁに?ドルフィンちゃんの事だから、放送関係の事だとは思うけど。」

「へへへ、ご名答です。まずは報告から。私、この間の総文祭で優秀賞を貰いました。来年の全総文に参加できますっ!」

「まぁ!・・・おめでとう!自分の事のように嬉しいわ。来年は岐阜だったかしら。今から楽しみね!」

「へへへ、有り難うございます。先輩に褒めて貰えて、とっても嬉しいです!あっ、因みに響子ちゃんも朗読で優秀賞を取ったんですよ!紙織ちゃんは残念ながら優良賞だったんで、全総文には行けないんですが。」

「同じ学校から二人も参加できるのは凄いことよ。紙織ちゃんは残念だったけど・・・貴女と響子ちゃんは素直に喜んでいいと思うわ。」

「へへへ、有り難うございますっ!でも、紙織ちゃんの前で、無邪気に喜ぶのはやっぱり気が引けて・・・素直に喜んでる姿を見せたのは、親と先輩だけですよ。」

「まぁ!光栄ねっ!でも、確かに紙織ちゃんのことを考えると、考え無しにはしゃぐのは駄目ね・・・。じゃぁ私も人前では二人の事を大仰に褒めないようにするけど、それは許してね。」

「判ってます。ご配慮、有り難うございます。」

「で、私の所に来たのは、総文祭の報告をする為だけだったの?」

「いえ、もう一つあるんです。実は、総文祭の講評の中によく判らない言葉が出てきたんです。先輩なら知っているんじゃないかと思って、教わりに来たんです。」

「具体的には?」

「はい。“むせいか”って言葉と“びだくおん”って言葉です。どちらも初めて聞く言葉で何のことかさっぱり判らなくて・・・先輩は知ってますか?」

「“無声化”と“鼻濁音”ね。これまで、しゃべり方の基本はきちんと教えてきたけど、難しい技術はあえて避けてきたから・・・そうよね、ドルフィンちゃん達も全国に行くんだから、両方とも出来るようになった方がいいわよね・・・。説明に少し時間がかかるけど、大丈夫?」

「あっ、ハイっ、いえっ、私は大丈夫です!先輩こそお忙しいのに大丈夫ですか?」

「私のことはいいわ・・・じゃぁ、まずは説明して、それから練習方法を教えるわね。」

「はいっ!お願いしますっ!」

「まずは、“無声化”ね。無声化って言うのはね、簡単に言うと発音時に声を響かせないことよ。私達の声には、声帯の振動を使って発音する“有声音”と、声帯を振動させずに発音する“無声音”の二種類があるの。例えば・・・そうね、いつもやっている滑舌練習で“か・き・く・け・こ”を言ってみて?」

「はいっ!か!き!く!け!こ!」

「今度は、喉に指を軽くあてて言ってみて。」

「はいっ!か!き!く!け!こ!」

「どう?指に何か感触があった?」

「はいっ!喉が振動しているのが判りました。」

「そう、そのように喉が振動して発声している場合を“有声化状態”って言うのよ。では、今度は、喉に指をあてたまま“薬”って単語を言ってみて。」

「はいっ!“く・す・り”。」

「いいえ、そうじゃないわ。一文字ずつ区切って言わずに、単語として通常のアクセントとスピードで言ってみて。」

「はいっ!“くすり”。・・・?」

「どう?“く”は喉が振るえなかったでしょ?それに対して“すり”の部分は震えたはずよ。」

「はい。確かに・・・?なんでだろ。単独で“く”と言った時には喉が振るえるのに?」

「それが“無声化”よ。正しくは“母音の無声化”って言うの。“無声子音”にはさまれた母音の“い”や“う”が聞こえなくなる現象なのよ。鼻濁音もそうだけど、この母音の無声化は、日本語をきれいに話すのに必要不可欠な技術と言われているの。それに、この技術を身につけるだけで、一音一音のメリハリがつくし、大人っぽい印象を与えてくれるようになるのよ。でもね・・・私たちのような西日本出身者にとっては、とても難しい技術でもあるのよ。」

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