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まずはサシェを一度作ってみよう!きちんと説明できるようにならなきゃ!頑張ろう!

「では、皆さん実際に作ってみましょう。手順や注意点をよく覚えてくださいね。」

「「「はいっ!」」」

 私たちはいつものように声を揃えて返事をした。

「今回のワークショップでは、あまり好き嫌いの無いラベンダーの香りのするサシェを作ります。まずは、サシェの飾りとなるドライフラワーを用意しましょう。使うのはラベンダーとオレガノ・ケントビューティーです。ラベンダーは十五本程度を7cmにカットします。それをこのように束ねて、ワイヤーで根元をねじり留めます。」

 仏崎先生は、手慣れた様子でラベンダーを切って束ねていく。私たちも見様見真似でやってみた。うん!割りと良い出来栄えだ。

「次はオレガノ・ケントビューティの苞葉を六つほど手で外します。同じく、飾りとして使うラフィアのリボンも作ります。ラフィアは10cmほどにカットし、蝶々結びにします。」

「先生ぇ、ラフィアってなんですか?」

「これがラフィアです。ヤシの葉を加工して作られた天然の繊維ですよ。」

 そう言って、先生は何やら麦藁のようなものを見せてくれた。へぇー、初めて見た。

「次に色付け用に、パステルをナイフで細かく削ります。今回はほんのり色付けするだけなので、1gほど使います。発色をよくしたい場合は量を多くするんですけどね。」

 説明しながら、先生は紙皿の上でパステルを細かく削っていく。慣れてるのか、感覚で1gがどれくらいか判るみたいだ。

「先生ぇ、パステルは一回ずつ量るわけじゃないですから、お客さんには、“これくらい”って見た目の量で示して良いですか?」

「あっ、そうですね。1gって言われると、確かに量らないといけないかのように受け取られますね。この場合、だいたいの量でいいですから。」

「では、先生6つほどサンプルを作っておきますね。」

 私たちは先生が見本用に削ってくれたものとだいたい同じ量になるようにパステルを削って、作業台ごとのサンプルを作っていった。

「なるほど、高校生の発想は参考になりますね。普段、私たちはg数で示していますから、そういうものだと思い込んでました。今回のようなワークショップでは、確かに見た目で示すほうが、判り易いですね。では、続いて、カセットコンロに火を付けてください。鍋に入れた水を沸騰させます。」

「先生ぇ、鍋に入れる水の量はどれくらいが良いですか?」

「このお湯は湯煎のためのものですから、多すぎると湯煎の際に溢れてしまいます。この鍋の大きさだと、三分の一ぐらいでいいかと思います。」

「ふむふむ。“入れる水は三分の一ぐらい”っと・・・。」

 私たちはお客さんに説明するため、そういった細々としたことも赤ペンでメモっていった。

「皆さん、細かいところに気が付いて、感心しますね。メモできましたか?では、次の作業です。水が沸騰するまでの間に、ボウルにパラフィンワックス30g、ミツロウ15g、ソイワックス15gを入れます。」

「先生ぇ、その三種類は、どう違うんですか?」

「はい。まず、パラフィンワックスは石油由来のもので、一般的なキャンドルで使用される白色半透明のものです。ミツロウは、ミツバチの巣で作られる天然の動物性ワックスで、少し柔らかく黄色味がかってます。ソイワックスは、大豆由来の植物性ワックスです。乳白色で溶ける温度が低いのが特徴です。」

「なるほど。確かに見た目が違いますね。」

「ミツバチが作るから“ミツロウ”なんですね。」

「ああ、“ソイワックス”って大豆だからソイなんだ。」

 あちゃー。三人がそれぞれ思ったことを口にするから、先生も反応に困っているぞ。ごめんね、先生。

「ち、ちなみに、これで、どれくらいの大きさのものができるんですか?」

「はい、今回使う耐熱プラスチック容器は100円ショップで売っているもので、大きさは幅10.5cm、長さ6.8cm、高さ7cmあります。これに流し込むと、厚さは1.2cm程度に仕上がるはずです。ワックスサシェ専用の型はいろいろ売っているのですが、それなりの値段がしますから、本格的に作る人向けですね。今回のように一度体験してみようと言う人には、安くあがる100均ものがいいでしょう。」

「なるほど。専用の型があるのですね。」

 ふーむ。より可愛いものを作ろうとするなら、それなりの値段になるわけか。まぁ、そうだろうな。

「そろそろ、鍋の水が沸騰しましたか?では、コンロの火を弱火にして、ワックスを入れたボウルを鍋に入れて湯煎しましょう。・・・ワックスが大方溶けたら、80℃以上にならないように温度計で温度を測りながら、マドラーでかき混ぜて完全に液体にしてください。」

「先生ぇ、なぜ湯煎するんですか?そのまま鍋にワックスを入れて加熱する方が簡単じゃないですか?」

「良い質問ですね。ワックスは200℃を超えると引火するんです。うっかり目を離すと200℃を超えてしまい火事になるかもしれません。その点、お湯は100℃以上にはなりませんよね?湯煎なら火事になる心配がないんです。だから湯煎するんですよ。」

 あ、なるほど。きちんとした理由があるんだ。本当に理科の実験みたいだなぁ。

「ワックスが完全に液体になったら、コンロの火を止めてから紙コップに注ぎます。ここで、先ほど削ったパステルを入れます。このとき、ワックスの温度が下がらないうちに手早く混ぜて色を均一にしなければなりません。さらに、エッセンシャルオイルも20滴ほど加えてよく撹拌します。」

 うーん、先生は手際が良いなぁ。ちょっとでももたもたしていると、ワックスが固まり始めてしまうぞ。お客さん達にはどういう風に教えたら上手くいくんだろう・・・???。

「攪拌し終えたら、型となる耐熱性プラスチック容器を水平なところへ置き、その中にワックスを注ぎこみます。注いだワックスの周りが固まりはじめ白くなったら、用意したラベンダーとオレガノをピンセットで乗せましょう。」

「先生ぇ、ラベンダーがワックスの中に沈んでしまったんですが・・・。」

「早い段階で乗せると、重みで花が沈んでしまうんですよ。乗せるタイミングは経験で覚えるしかないですね。」

 むむう・・・はっきりしないなぁ・・・。何分たったら乗せましょうじゃぁないんだ・・・。

「ドルフィンちゃん、私のは上手くいったよ!」

「なんと!うーん・・・なるほど、これくらいワックスが固まり始めた時が、ベストなのかぁ・・・。」

「私も上手くいったよ!ワックスが白くなり始めたら乗せるといいみたい。」

 むむっ・・・響子ちゃんも紙織ちゃんも上手くいってる・・・う、羨ましい・・・。

「お二人とも上手くいきましたね。ワックスの色の変化を覚えてもらうと、お客さんに指導しやすいと思いますよ。さて、この後は30分ほど待ちます。」

「先生ぇ、お客さんも30分待たせるのですか?」

「そうですねぇ・・・教室だったら待ってもらうのですが、今日は待てないっておっしゃる方には後で取りに来てもらいましょうか・・・。30分ほど経ったら、紐を通す穴を作る作業をするのですが、待てないお客さんの分は、私たちで作業をしてしまいましょうか。30分後に、カットしたストローを容器の底に着くまで挿して穴を作るんです。ワックスがある程度固まらないときれいにできないので、30分は待たなければならないんです。」

「なるほど、そのための30分なんですね。わかりました。」

「ワークショップでの作業はここまでです。このあとは持ち帰ってもらい、最低でも3時間、できれば一晩そのまま固まるのを待ってもらいます。これは、昨日説明用に作ったものですが、このようにストロー部分を持ちながら、型からサシェを取り出します。その後、ストロー部分のみを引き抜き、サシェの周りの余分なワックスをこのようにナイフで削って、緩やかな丸みをつけます。」

 これまた先生は、器用に型からサシェを取り出すと、ナイフでこりこりと削っていった。

「最後に、50cm程度にカットしたラフィアを半分に折り、サシェの穴の部分に通せば完成です。この最後の仕上げは、お客さんが持ち帰って自分でやらなければならない作業なので、丁寧に教えてあげてくださいね。」

「先生ぇ、いくつか固まったものがあれば、それを使って実際の作業を見せながら説明できますが、ありますか?」

「ええ、そうですね。10個ほど作ってきましたから、これを使って説明してください。」

「了解です。」

 さて、間もなく開場の時間だ。張り切っていこう!

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