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さぁ、文化祭本番だ!思っていた以上に大変だ!でも、皆でやりぬくぞ!

 文化祭初日の行事運営自体は、どうと言うことは無かった。生徒会長、それに続く校長先生の挨拶は立ちマイク1本を舞台中央に設置して、終わった後にそれを舞台袖にはくだけだし、吹奏楽部と合唱部は音響いらず。まぁ、ピアノの出し入れは手伝ったけどさ。ダンス部とバトン部はCDで曲を流すだけ。MCも神倉先輩がやってくれたから、私たちの出番は無かった。

 むしろ、終わってからがこんなに大変だとは思いもしなかった。初日終了後、体育館では明日の舞台発表の“通しリハ”を行ってるんだけど、どの団体も“通しリハ”の意味が解っていない!

「代表者会議で説明したでしょ!これは“通しリハ”です!リハーサルとは違うんですから、早く退いてください!」

 普段は穏やかな井鹿先輩が、鬼神の如く叫びまくってる。

「いや、2曲目の所が気になって・・・。やり方を少し変えて、もう一度2曲目をやってみたいんですが・・・。」

 2年1組の室長が食い下がってるけど、これは“通しリハ”!

「駄目です!いいですか!“通しリハ”は、“本番と同じ進行手順で、最後まで全体を通して行う”ものです!“通しリハ”以降、勝手な演出の変更などは認められません!音響や照明の段取りが狂ってしまうからです!“通しリハ”は演者とスタッフ、双方の最終確認のためのものです。ここからは変更は認めません!」

「えぇー。だって後悔したくないじゃん。やらせてよ。」

「駄目です!どうしても、と言うのであれば、最後に回ってください!まだまだ沢山の団体の通しリハが控えているんです!他の団体の時間を奪う気ですか!」

「えーと、何時になりますか?」

「順調に進めば、19時頃ですかねぇ。こうしている間にも、どんどん時間が押しているんです。他の人たちに悪いと思わないんですか!そんな自分勝手は許されませんよ!さぁ!さっさと舞台から捌けてください!」

「そんなに遅くまで待たなきゃ駄目ですか?」

「そちらの勝手なんですから、嫌ならやめてください!これ以上の我が儘は許しません!はいっ!では、次の通しに入ります!2年3組、スタンバってください!」

 あー、ぶつぶつ言いながらも捌けてくよ。こんな時は、毅然とした態度であたるのが大事なんだなぁ。押せば我が儘が通る!って思われたら、収拾がつかなくなるもんね。でも、いくら放送部の1年生が同じことを言ったところで上級生が聞く訳がないから、ほんと、生徒会が嫌われ役を引き受けてくれるのは有難いなぁ。

「2年3組は、舞台の入りはどうしますか?」

「はい、最初から舞台上に並んだ状態から始めます。」

「判りました。では、並んでみてください。並び終わったら、各自、自分の立ち位置を覚えてくださいね。たくさんの団体が出演しますから、床にマーキングできませんから。」

「鰹島君と王子浜君はマイクの位置を決めてください。2の3は合唱ですから、マイクは無指向性で2本、左右に配置してください。あぁ、位置は任せます。」

 ☆

 あーーー、やっと終わったぁ。もう8時だよ。お腹減ったなぁ。

「お疲れ!今日のリハはこれで終了だ。」

 いやぁ、生徒会の皆さんこそお疲れ様です。

「では、放送部の皆さん、明日も宜しくお願いします。」

「いえ、こちらこそ、宜しくお願いします。」

 それにしても・・・明日の進行表を見ると、出演団体とその次の団体との時間が詰められていない・・・むしろ結構開いてるんだよねぇ。何で?

「ねぇ、鯨山君、どうして団体と団体の間がこんなに開いてるの?早く終わったら前倒ししてくの?」

「いや、前倒しはしないらしいよ。以前は前倒しをしていたらしいけど、クレームが殺到したんで、公演開始時刻は固定して、決まった時刻通りにやるんだって。」

「クレーム?」

「保護者や友達がパンフレットの開始時刻通りに来たら、すでに始まっていたり、終わっていたりで、ちゃんと見れなかったじゃないか!って言うクレームだそうだよ。だから、パンフレット通りに始めるって決まりができたらしい。」

「へぇー。じゃぁ押したらどうするんだろう?」

「押しても大丈夫なように、余裕を持たせてあるって。それでもヤバい時は、生徒会の権限で強制的に終了させるらしいよ。だから、進行は放送部じゃなく、生徒会自らがやってるって訳さ。」

「ふーん、なるほど。こう言うイベントの運営方法も、長年のノウハウの積み重ねなんだねぇ。」

「そういうこと。そのお陰で俺たちはPAに専念できるから、有難い話さ。」

 イベントをやるって、一朝一夕にはできないもんなんだなぁ。

 ☆

 文化祭二日目。私たち放送部員は朝7時に集合だ。

「おはよう!」

「やぁ、おはよう、ドルフィンちゃん、響子ちゃん、紙織ちゃん。」

「今日も宜しく。」

「こちらこそ。」

「やぁ、おはよう!皆揃っているかい?じゃぁ、朝のミーティングを始めようか。」

 井鹿先輩を始めとする生徒会役員の皆さんもやってきた。これから今日一日の打合せだ。

「今の時点では、変更等の連絡は来ていません。ただ、例年、体育館入りの時刻になっても集まらない団体が出てきます。時間が過ぎても集合が完了しない団体が出たら、容赦なく緊急放送を入れて呼び出してください。公演開始10分前になっても集合を完了しなかったら、公演をキャンセルすると代表者会議でも強調して伝えていますから。」

「今までにそんな事例はあったんですか?」

「さすがにキャンセルまではなかったようですが、呼び出しは毎年のようにありますね。」

「この放送室係って言うのが、その緊急放送をやる係だよ。いつでも放送を入れれるように、必ず一人は放送室に待機しているように交代で役にあたっているはずだ。いざと言う時は、インカムで伝えるから、すぐに緊急放送を入れてくれ。」

「「「了解。」」」

 ☆

 大忙しの二日目も終了。でも、昨日の通しリハを経験した後だと、大したことないと思えるのが凄いね。まぁ、何事も準備の方が大変だと言うことだね、うん。

 さて、これからは三日目の通しリハだ。昨日みたいだと嫌だなぁ・・・。

「ドルフィンちゃん、今日は昨日みたいなことは無いはずだから大丈夫だよ。」

 井鹿先輩はお見通しですか。まぁ、いかにも“嫌です”って顔をしてただろうからなぁ。

「昨日みたいにはならない?・・・どうしてですか?」

「軽音楽部は、普段からスタジオを借りて練習したり、ライブハウスでライブをやったりしているからね。彼らにとっては、通しリハなんかは慣れたものだからさ。」

「そうなんですか?」

 そうだといいなぁ・・・。と、その時は思ったんだけど、結果は井鹿先輩の言う通りだった。流石は軽音楽部と言うべきか。こちらが拍子抜けする程スムーズにリハが終わった。どのバンドもほぼセッティング表通りで、変更箇所は体育館の舞台に合わせて微調整するくらいだった。と、言う訳で予定通りにリハは終了!今日は早く帰れるぞい!

「では、明日が最終日だ。疲れているだろうけど、あと一日。頑張ろう!」

「「「了解!」」」

 ☆

 最終日は盛り上がった。三日目は3年生の模擬店も片付けに備えて早めに終了、その他展示にも飽きた生徒たちがこぞって体育館に集まって、軽音楽部のライブに参加したからだ。ライブを見ていると、あぁ、これで文化祭も終わりなんだなぁ・・・そう感じ始めて、何やら無性に寂しくなってきた。お祭りって、楽しければ楽しいほど、終わった後にその反動のように寂しさが襲ってくる。明日から気持ちを切り替えていかねば。

「ドルフィンちゃん、何やらもう終わったかのような表情をしているけど、片付けが待っているからね!」

 ひーん。鯨山君が私を現実に引き戻しにきたよ。でも、後片付けまできちんとやることで気持ちが切り替わるんだろうね。頑張ろう!

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