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【感謝、感激!1万PV達成しました!】こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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さぁ、いよいよ今作最後のインタビューだ。貴重なお話を聞ける又と無い機会だ。張り切って行こう!

 “ピンポーン”とインターフォンがお馴染みの音を奏でた。

『はい。』

 押してほとんど間も無く応答があった。約束通りの時間だったから待っていてくださったんだろう。

「すみません。面会のお約束をさせていただいております、東和高校の栗須です。」

『はい、お待ちしておりました。少しお待ちください。』

 ものの一分もしない内に玄関のドアが開いた。そこから上品な初老の女性が姿を現した。

「初めまして!東和高校の栗須と申します!」

「同じく三輪崎です。」

「同じく鵜殿です。」

「「「本日は、宜しくお願いします!」」」

「まぁまぁ、ご丁寧に。私は辻郁子の娘、本所加奈子と申します。こちらこそ、宜しくお願いします。さぁ、どうぞ中にお入りください。久し振りのお客さんだと、母は朝早くから身支度してお待ちしておりました。」

「「「はい!お邪魔いたします!」」」

 私達はそのまま奥の座敷に通された。座敷には着物を着たお婆さんが座布団の上にちょこんと座って私達を待っていた。

「こちらが母です。お母さん、東和高校の皆さんがお出でになられましたよ。」

「あぁ、ようこそ。お待ちしとりました。辻郁子と申します。こんな年寄りに会いに若い人達が来てくれるなんて、あまりにも嬉しぅて、今朝は早くに目が覚めてしまいました。」

 もう御年九〇歳を越えているはずのお婆さんだけど、予想以上にしっかりとした物言いをされていた。

「初めまして。本日は貴重なお時間を私達の為に割いていただき、有り難うございます。私が東和高校放送部部長の栗須です。」

「三輪崎です。」

「鵜殿です。」

 それぞれ自己紹介をすると、お婆さんはにこりと笑うと、ゆるりと右手を上下に振った。

「まぁまぁ、そう硬くならずに。こちらこそ年寄りの想い出話を聞いてくださる、ちゅうことで、大変有り難く思っとります。」

「お気遣い痛み入ります。早速ですが、失礼して撮影の準備をさせていただいても宜しいでしょうか?」

「はいはい、どうぞ。」

 私が目配せすると、いつもの様に響子ちゃんがカメラを紙織ちゃんがICレコーダーの準備を始めた。二人とも手慣れたもので、ものの数分で準備ができた。

「お待たせいたしました。準備ができましたので、インタビューを始めさせていただきます。」

 お婆さんは数々の機材を見て目を丸くしていた。

「いやぁ、物々しいもんじゃなぁ。」

「驚かせてしまってすみません。私達が作っているのは映像番組なので、カメラ撮影と音声録音は欠かせないのです。」

「カメラの前でしゃべるなんて初めてですからのぅ・・・緊張しますなぁ。」

「私が受け応えを担当しますので、カメラに向かってしゃべるのではなく、私と会話してください。人が相手なら過度に緊張はされないかと思います。」

 私の言葉を聞くとお婆さんはにこりと笑った。

「なるほど。曾孫とおしゃべりしとると思えばいいんですな。」

「はい、その通りです。・・・それでは、始めさせていただきます。」

 響子ちゃんがそっとカメラを起動させた。紙織ちゃんも録音を始めている。それを横目で確認して、私はインタビューを開始した。

「まずは、空襲を受けた当時、辻さんが何をなさっていたのか、教えてくださいますか?」

「はいはい。当時、わたしは尋常小学校を卒業して高等女学校に進学したばかりでしたが、戦争が激しぅなって、人手が足らんっちゅうことで、わたしら女学生も工場で作業をさせられました。県内でも商業で栄えとった松塚市に・・・ちょうど国鉄松塚駅の東側やったなぁ、そこに帝国紡績の工場があって、兵隊さんの服を作っとたんですわ。その工場で働いとりました。」

「兵隊さんの服、と言うことは軍需工場だったんですね。」

「はい、当時は民生品は後回しで、軍需産業が最優先やったから。」

「なるほど・・・では、工場ではどのような作業に従事しておられたのですか?」

「わたしらは縫製を担当しとりました。」

「“縫製”ですか・・・縫製とはミシンで服を縫う作業、と言う理解でよろしいでしょうか?」

「いえ、縫製はミシンだけでは無いんよ。型紙製作や裁断、それにミシンの操作、その他にも手縫いや検品、梱包といろんな工程があって、それらを全部まとめて縫製と言うとるんですわ。わたしらは班に分けられましてなぁ、それで班毎に別々の仕事を割り当てられとったんですわ。」

「縫製、と一口に言っても色々な作業があるんですね。」

「そうです。ちなみに、わたしは裁断を担当しとりました。」

「それでは、御本にも書かれていた空襲の様子をお聞かせください。」

「空襲ちゅうても、一度の事やないんよ。昭和十九年の夏ごろから始まって、昭和二十年の終戦まで、そりゃぁ数えられんくらい何度もあったんよ。」

「えっ?一度きりじゃなかったんですか?」

「そうなんよ。最初の頃は空襲警報のサイレンが鳴って、それを聞いてわたしらは防空壕に逃げ込んで事なきを得てたんやけど、昭和二十年になるとサイレンが鳴っておらんのに、急に飛行機が現れて銃撃されるようになったんよ。」

「それで御本に書かれてあったように、工場内で床にうつ伏して銃撃を避ける、と言うような場面が起こるようになったんですね?」

「いやぁ、嬉しいわぁ、本当にあの本をちゃんと読んでくれたんやねぇ。」

「はい、勿論です。・・・では、思い出したくない記憶かもしれませんが、御本にも書かれていた“あの日の空襲”についてお聞かせ願えますか?」

 私がそう質問すると、お婆さんは俯いてそのまま押し黙ってしまった。時間にしてみればたかが数分間だったと思う。けど、私にとってはもの凄く長く感じた。やがて、お婆さんはゆっくりと顔を上げた。そこに思い詰めたような、しかし覚悟を決めた表情が浮かんでいた。

「いや・・・確かに思い出したくもない嫌な記憶やけど・・・あの本を出したのも、わたしの友達の最後を無意味なものにしたくなかったから・・・たくさんの人に知って貰いたかったからで・・・だから頑張って語らして貰います。

 あの日・・・あの日ちゅうのは昭和二十年七月二十三日やった。何時ものように作業してると、突然空襲警報のサイレンが鳴って、あ、防空壕に行かな、て考えた瞬間、バリバリと言う音と、天井から何かの破片のようなものが沢山振ってきたんよ。あ、撃たれてるんや、って気付いて、わたしらはパッと床に伏せたんや。すると、間も無く二回目の銃撃をバリバリってやられて。この時は、わたしのすぐ横で、床のコンクリートに弾が当たるチュンチュンちゅう音が聞こえて。あまりに恐ろしゅうて、それから暫くはじっとそのまま臥せってたんよ。また銃撃があるかもしれんって思うて。けど、その日の銃撃はその二回だけやったんや。どれくらいやったかのぅ、だいぶ時間が経ってから、漸く空襲は終わったか、やれやれと思うて起き上がったんやけど、すぐ隣で臥せってる子が起きないんや。どうしたんや、って声を掛けてから気が付いたんやけど、その子の服は血でべっとりと濡れとったんや。慌てて大声で助けを呼んだら、監督官達が駆けつけてくれたんやけど、“もう、あかん。死んどる。”って。うつ伏せやったその子を大人が二人がかりで仰向けにしたら、クワッと目を見開いてて。でもな、その目は虚ろで何も見てなかったんよ。それで口からも鼻からも血が噴き出てて。

 暫くして担架でその子が運ばれた後、その子が倒れてた場所を見たら大きな血だまりが出来てて、それを見てたら急に力が抜けて、おんおんと声を上げて泣いたんですわ。

 今でもその時の様子は夢に出てきます。夢と判っていても恐ろしゅうて恐ろしゅうて・・・。」

「お話を聞いてるだけでも怖くなりますね。その時、ちょっとでも銃弾が反れていたら、その方じゃなくて、辻さんが犠牲になっていたかもしれないですもんね。」

「そうなんよ。わたしが今生きてるんは、ただ・・・運が・・・良かった・・・だけやから。」

 そう言ったお婆さんの目からは涙が溢れていた。彼女はハンカチで目を押さえると、その状態のまましばらく肩を震わせていた。わたしは掛ける言葉が思いつかず、そのまま黙って彼女を見つめていた。

「ご、御免なぁ・・・歳を取ると涙脆くなってしもうて。」

「いえ・・・こちらこそ御免なさい。私にはそこまで辛かった思い出がありませんので、どう声を掛けて良いのか判りませんでした。」

「それでええ。それでええんじゃ。こんな辛い思い出なんぞ無い方がええに決まっとる。ただなぁ、こんな辛いことがあった、ちゅうことを忘れてはいかんと思うんじゃ。それが生き残ったもんの責任やと思うとる。あの本を子供らに無理言うて出して貰ったのもその為や。」

「生き残った者の責任・・・ですか。重い言葉ですね・・・本日は貴重なお話をお聞かせいただき、本当に有り難うございました。お疲れになられたでしょう?これでインタビューを終わります。」

 私は深々と頭を下げてお礼を言った。

「いいや、こっちこそ。こんな年寄りの想い出話を聞きに来てくれて、ほんとに有り難う。」

 しゃべる事は体力を使う。ましてや精神的な負荷が掛かるお話しだ。これ以上の無理はさせられないと思ったので、インタビューを切り上げることにした。

 本所さんがお婆さんに附き添って奥の部屋へと連れて行く間に機材の片付けを済ませ、帰り支度をしておいた。やがて、本所さんが一人で戻って来た。

「お婆様は大丈夫ですか?」

「はい、久し振りに長々としゃべったのでちょっと疲れただけだと思います。お茶を飲ませてすぐに横にならせましたから大丈夫です。むしろ母は喜んでおりました。自分が生きている間に若い人たちに自分の体験を話すことができたって。母の話を聞いてくださって有り難うございました。」

「いえ、此方こそ。本日はこのような場を設けて頂き、本当に有り難うございました。作品が出来上がりましたら、本日のインタビューと一緒にDVDに焼いてお持ちいたします。」

「そうですか。母も喜ぶと思います。」

「それでは、これでお暇します。お婆様にも宜しくお伝えください。」


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