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さぁ、いよいよ決勝進出者の発表だ!他人事ながら緊張するなぁ・・・えっ?!神倉先輩だけじゃないの?!

 審査員の先生方が登壇されると、それまでざわついていたホール内が即座にシーンとなった。いよいよ、決勝進出者の発表だ。

『お待たせしました。只今より、アナウンス部門、並びに朗読部門の決勝進出者の発表を行います。』

 全員が固唾を飲んでいるのが判る。うーん、他人事ながら緊張するなぁ・・・。

『決勝進出者は、両部門とも九名です。では、発表します・・・。』

 私は手元のメモを見ながら、発表を聴いていた。私が決勝進出かも、って考えた人は十二名。一応順位もつけている。さぁて、私の予想は当たっているのかぁ?

『・・・続いて、52番、東和高校2年、神倉千穂さん・・・。』

 おおっとぉ!神倉先輩の名前も呼ばれたぞ!流石、先輩!私の順位表でも1位だ。当然ですね、ふふふふふ。

『・・・続いて、56番、東和高校1年、栗須入鹿さん・・・。』

 ふむふむ。東和高校の栗須さんとやらは、私の順位表には入ってないぞ・・・。私の評価外の子だなぁ・・・。・・・うん????。

「凄い!ドルフィンちゃん、決勝進出だよ!!」

「おめでとう!!」

 うん?紙織ちゃんと響子ちゃんが、めっちゃ喜んでいるんだが・・・?

『・・・以上、9名です。続いて、朗読部門の決勝進出者は・・・・・・・・・以上、9名です。それでは、今名前を呼ばれた方は、課題原稿を取りに舞台前に集まってください。』

「さぁ、栗須さん。行くわよ。」

 いつの間にか神倉先輩が目の前に居た。

「えーと、先輩、行くってどこへですかぁ?」

「何寝ぼけているのよ。課題原稿を取りに来なさいって、今言われたでしょ?早く貰って目を通さないと、流石にぶっつけ本番じゃ、碌な発表にならないわよ!」

「え?え?え?」

「さぁ、立って!」

 神倉先輩が私の手を掴んだかと思うと、舞台前まで引き摺るように連れていかれてしまった。

「東和高校の神倉と栗須です。」

「東和の神倉さんと栗須さん・・・と。はい、これが課題原稿です。」

 神倉先輩が名乗ると、係の先生がチェックシートに印を付け、プリントを2枚、こちらに渡してくれた。

「はい、貴女の分よ。急いで目を通して、何回かは口に出して読み上げなさい。決勝本番までは時間が無いわ。」

「えーと、私もですかぁ?」

「当り前じゃないの。決勝では全員、自分の原稿と課題原稿を読み上げるのよ。」

「決勝・・・?えっ?えっ?私が決勝に出るんですか?」

「何言ってるの、ちゃんと決勝進出者の名簿に貴女の名前もありましたよ!」

 暫く神倉先輩の顔をぼーっと見つめていたんだけど、やがて先輩の言ってることの意味が解って、顔に一気に血が昇った。

「わ、わ、わ、わ、私が決勝にぃ?!」

「そうよ。漸く事態が飲み込めたって顔よね。さぁ、早く練習しなさい。私も練習するわ。」

 そう言うと、神倉先輩は真剣な眼差しでプリントを見つめ、ぶつぶつと原稿を読み始めた。慌てて私も原稿に目を通した。まさか、初めて目を通す原稿を読まされるとは・・・予想すらしていなかった。自分が決勝に進出するなんて思ってもみなかったから、決勝でどんなことをするのか、聞いておくことすらしていなかった・・・痛恨の極みじゃ。

 2,3回ぶつぶつと読み上げたところで、決勝開始の連絡がホール内に轟いた。

『只今より、アナウンス部門、朗読部門の決勝を行います。出場者は、最前列の席にエントリー番号順に座り、待機してください。決勝は、アナウンス部門、朗読部門の順に行います。予選の時と同様、舞台上に二人待機します。発表が終わったら、発表者の降壇と同時に次の待機者は登壇してください。アナウンス部門が終わってから朗読部門の発表者の登壇を合図します。合図があるまで朗読部門の人は登壇しないでください。発表は、まず自原稿を読み、続けて課題原稿を読んでください。

 なお、本日は決勝の審査員としてNHKのアナウンサー塩野道夫様、NHK番組プロデューサー柿葉壽司様にお越しいただいております。塩野様、柿葉様どうぞ宜しくお願いいたします。』

 大柄なアナウンサーさんと、細身で如何にも業界人って雰囲気のプロデューサーさんが立ってこちらに振り返り、ぺこりと頭を下げて挨拶された。プロデューサーさんは知らないけど、アナウンサーさんは確かにテレビのニュースで何度も見たことのある人だ。へー、流石はNコン!審査員に現役のアナウンサーさんやプロデュサーさんが来るんだ。・・・と、と、と。感心してる場合じゃないぞ。早く待機席に行かねば。

 小走りで、前列に行くと、係の先生がエントリーナンバーを読み上げながら座る席を指示してくれていた。私は、6番目、神倉先輩の隣だ。へへへ・・・ちょっと安心。

「全員揃いましたね。それでは、決勝を始めます。まずはアナウンス部門、4番、16番、28番の人は登壇してください。」

 さぁ、決勝だ。進出者は全て私が予想していた人たちだった。勿論、私は含まれてはいなかったけど・・・。この中では私が断トツでへたっぴだ。そんなことは判っている。でも、折角選ばれたんだ。全力で頑張ろう!・・・だけど、やっぱり私は場違いなんじゃぁ・・・だって、皆さん初めて見る原稿のはずなのに、まるで何十回も練習してきたかのように、すらすらと読み上げていくんだよ!私にあんな真似できるのかなぁ・・・。

 などと不安に思っていると、順番が来て、神倉先輩が立ち上がった。実に堂々と階段を登り、美しいまでに姿勢良く待機席に座った。あぁ、駄目だ駄目だ!私がおどおどしていては、先輩に恥をかかせてしまう。後輩として、先輩に恥ずかしい思いをさせないように、私も堂々と登壇しよう!

 やがて発表が終わり、28番の人が降壇を始めた。次は私が登壇する番だ。舞台の上、神倉先輩だけを見て、ゆっくりと階段を登り、席に着いた。先輩の方をちらりと見ると、先輩はきっと正面を見ている。実に堂々としておられる。流石だ。

 と、気が付けば44番の人が発表を終えて降壇を始めた。先輩はすっくと立って、発表席に移る。私は一つ椅子を移動して、69番の人に席を譲る。

「『52番、神倉千穂、“高校生はマイナカードの取得について、どう考えているか?”

 皆さんは、もうマイナカードを取得されましたか?私は、このカードについて、高校生がどう思っているのか気になり、全学年を対象にしたアンケート調査を行いました。調査の内容は、まず“カードを取得したかどうか”、また“その理由”を聞くものでした。結果は、“取得した”よりも“取得していない”人の方が多く、その理由も“面倒だから”とか“必要だと思わないから”と言ったものが多数を占めていました。時折見られる“取得した”と言う回答では、“ポイントが貰えるから”、“家族が取得するのでそのついでに”などと言う理由ばかりで、積極的に取得したとは言えない回答が目立ちました。そこで、どうしたら高校生がカードを積極的に作るようになると思うか、と質問してみたところ、“本当に必要だと思える理由があれば”、“取得が義務化されたら”と言った回答が多く見られました。これは、高校生がマイナカードを本当に必要なものと考えていないことの裏返しではないでしょうか。

 ・・・“世界最大の花”として知られているラフレシアが県立植物園で開花しました。

 東和市にある県立植物園で開花したのは“ラフレシア・アルノルディイ”です。この植物は東南アジア島嶼部とマレー半島に分布していて、その花は大きいもので直径およそ90センチほどに成長することから“世界最大の花”とされています。

 ラフレシアはミツバカズラなどの根に寄生したごく微細な糸状の細胞列からなる植物で、ここから直接花を出すため、植物園で開花した例はほとんどありません。植物園では、10年前からミツバカズラを栽培してきましたが、先月初めにつぼみが付き、その後、徐々に大きくなって、16日に花を咲かせたということです。

 訪れた人たちは南国の珍しい花をスマートフォンで撮影するなどして楽しんでいました。』」

 やっぱり、先輩は上手だなぁ、聞き惚れてしまう。おっと・・・先輩が降壇していく。次は私の番だ。発表者席に移動せねば・・・。

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