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午前の目的地は岩国だ。まずは錦帯橋を渡ってみよう!その後は・・・。

 昨日の移動は全て電車だったけど、今日は貸切バスだ。今日最初の目的地である錦帯橋がJR岩国駅からかなり遠いので最初からバスで向かうそうだ。

 実は研修旅行の直前まで、バスが使えるのかどうかが判らなくて、最悪JRを乗り継いで向かう可能性もあったそうだ。

 なんでそんなことに、と思って先生に質問してみたところ、回答はこうだった。

 “一昔前までは修学旅行と言えばバスで移動するのがデフォだったけど今は違う。インバウンド需要で全国的に貸切バスが不足しているんだ。それに加えてガソリン代の高騰も加わって、バス代が新型コロナ騒動前の倍近くになっていて、研修旅行で貸切バスを多用することは、金額的に不可能になったんだよ。

 バス代の値上がりは今も続いているから、バス会社は予約を直前まで受け付けてくれなくなったんだ。何故かって?研修旅行のように一年以上も前に契約する旅行では、バスもその時点で契約が行われるため料金が固定されてしまう。しかし、ガソリン代や人件費の値上がりで一年の間に料金が大幅に上がってしまうことも珍しくなくなった。その場合、バス会社が損をしてしまうので、バス会社は料金がはっきりするまで予約を受け付けてくれなくなったんだ。”

 と、言う訳で今回の研修旅行の移動では貸切バスの使用は必要最低限しか行わないのだ。

 幸い今日の移動にはバスが使えることになった。まぁ、私としては列車の旅は嫌いじゃないからどちらでも良かったんだけどね。帰宅部の皆は歩くのが億劫みたいだから明らかにホッとしてるけど。

 さて、ホテルの前でバスに乗り込んで、いざ出発!

 ☆

 歴史的なことなら、響子ちゃんや紙織ちゃんが頼んでもいないのに幾らでも解説してくれるはずだけど、残念ながら別行動だ。だから、今回の旅行先については自分なりに事前学習をしておいた。

 “錦帯橋”は日本三名橋、もしくは日本三大奇橋に数えられている橋で、世界的に見ても珍しい木造アーチ橋として知られる。全長は193.3メートル、幅員は5.0メートルだ。創建は1673年、岩国藩主吉川広嘉によって建造された。石積の橋脚に五連の太鼓橋がアーチ状に組まれた構造で、この形状は錦川の洪水に耐えられるようにするためだ。

 主要構造部は継手や仕口といった組木の技術によって造られており、釘は1本も使われていないそうだ。

 ・・・って・・・はぁ~、響子ちゃんだったら何も見ずにこれの4~5倍の内容を解説してくれるんだろうなぁ。私の歴史的な知識は、吉川広嘉さんて誰?ってレベルだからなぁ・・・。

 そんなことをつらつらと考えている内に、バスは錦帯橋の袂にある河川敷の駐車場に到着した。広島からおよそ一時間、結構近かったんだなぁ。午前中はここ岩国で班別行動だ。早速皆で錦帯橋を渡ることにした。

 錦帯橋は実際に渡ってみると素晴らしい橋だった。アーチになっているから歩き難そうだと思っていたけど、全然そんなことは無く、むしろ歩き易かった。橋の上から観る風景も素晴らしかった。

「うーん、うちらの地元にもこんな橋があったらなぁ。」

 そう、私達が住んでいる地域には、ここ錦川のような手頃な幅の河川は無く、いずれもしょぼいか恐ろしくデカいかのどちらかしかない。だからこんな素敵な橋は望むべくも無かった。

「確かに・・・って、ドルフィンちゃん、研修旅行中くらい自分の眼で風景を見てみたら?カメラ越しじゃなくて、自分の眼で見ることに価値があると思うんだけど。」

 花音ちゃんにそう言われてはっとした。そう、何時もの癖で私は出発した時からずっと撮影が可能な場所ではビデオカメラを回し続けていた。

「ご、御免ね。何かの番組作りに使えるんじゃないかと思って、つい撮っちゃうんだよ。」

「気持ちは判るけどさ・・・でも、自分の肉眼で見て、皆と想い出を共有するって事はそれ以上に大事だと思うんだ。研修旅行は二度と無いんだから。」

 まるで頭をハンマーで殴られたようだった。花音ちゃんの言う通りだ。

「御免なさい・・・花音ちゃんの言う通りだ・・・撮影はほどほどにして、ちゃんと自分の眼で見るようにするよ。」

「謝ることはないよ。私がさ、ドルフィンちゃんと想い出を共有したいって思ったから言ったまでだよ。言うなれば私の我儘だ。」

「ううん・・・我儘なんかじゃないよ。有り難う。花音ちゃんがお友達で本当に良かったよ。」

 花音ちゃんは頬を赤く染めて、斜め向こうを見ながら自分の頬を指で掻いた。

「あぁ、いや、生意気なことを言って御免。へへへ、お友達かぁ・・。」

 ☆

 さてと、渡り終えたぞ。・・・うん?うちの生徒達が何やら一軒のお店に群がってるぞ。何?って思っていると、花音ちゃんが突然私の手を引いた。

「ドルフィンちゃん、ソフトクリーム!ソフトクリーム、食べようぜ!」

 えっ?ソフトクリーム?そもそも花音ちゃん、あんだけ朝ごはん食べたのにまだお腹に入るの?そんな風に戸惑っている私にはお構いなしに花音ちゃんはぐいぐい私を引っ張って行った。

「えっ!?な、何、このお店!?」

「このお店、テレビ番組でも度々紹介されてる有名店なんだよ。」

 い、いや、そりゃ紹介もされるわ。店頭のディスプレイだけで圧倒されてしまった。窓口の上下左右に商品名がずらりと貼られているが、一体何種類あるんだ?

「えええー、どんだけ種類があるの!?」

「落ち着いてよく見なよ。看板にちゃんと書いてあるよ。」

 言われてからお店をよく見直してみると、壁に貼り付けてある看板に“ソフトクリームの種類 日本記録更新中!!ただ今のソフトクリームの数”と書かれていて、その横に張り替えが利く文字で“222種類”と書かれてあった。

「に、二百二十二ぃ!!」

 思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

「凄いだろう?研修旅行で岩国に行くってことが判ってからずっと楽しみだったんだぁ。ここまで来て食べないと言う選択肢は無いよね?」

 確かにこれは経験しておかないと損だ。・・・しかし、買うにしても一体どれを選べばいいんだろう・・・とにかく種類が多過ぎて決めれない・・・。

 そんな私の心を読んだかのように花音ちゃんがアドバイスをくれた。

「ドルフィンちゃん、こういうのは直感だよ、直感!ざっと見て、目に止まったものを注文すればいいんだよ。目に止まったものが、ドルフィンちゃんが心の底で食べたいって思ったもののはずだからさ。」

 うむ、一理あるな。で、でも、そうは言ってもこれだけあると一通り見るだけでも随分と時間がかかるよぉ・・・って!花音ちゃんがもう注文してる!

「え、え、花音ちゃんはもう決めたの?」

「うん。私はさっき言った通り、ざっと見て目に止まったものを注文したよ。」

 わ、私も早く決めなくっちゃ・・・。うん?これ!“瀬戸内レモン”!美味しそう!よし、これにしよう。

 ようやっと注文すると、すぐに作って渡してくれた。うん、美味しそうだ。

「おっ、ドルフィンちゃんも漸く買ったかぁ。私は食べちゃったから、もう一つ注文してくるね。」

 えっ!?花音ちゃん、まだ食べるの!?

 ☆

 ソフトクリームを堪能した後、私達は岩国城址を訪れた。

 ロープウェイで山頂近くまで登った後、鬱蒼とした木々に囲まれた道をしばらく歩くと目の前が開け、天守閣が現れ・・・ん?これ、どう見ても天守の石垣だよね?なのに、少し離れた所に天守が建っている。何故?

「何で石垣と建っている場所が違うんだろう?」

 思わず疑問を口にすると、花音ちゃんがスマホを取り出し、その謎について調べてくれた。

「“昭和三七年、麓からの見栄えを重視し本丸のあった位置より約三〇m南側に天守構造図を元に、鉄筋コンクリート構造の復興天守が建てられた。本来の天守台の位置には平成七年に発掘復元された天守台があり、山上には、他に石垣や堀の遺構がある。”って説明されてるね。要は、岩国城の元の配置を意図的に無視して再建した、って言うのが答えだね。」

 なるほど、見栄え重視って言うところが如何にも昭和的だなぁ。今の時代だったらオリジナルを重視して再建するだろうからなぁ。

 折角だから天守閣に入ってみた。最上階からは錦帯橋を始め岩国の街が一望できた。

「ん?なんか、あそこだけ何も無い平地があるね。何だろう?」

 私が指摘すると、再び花音ちゃんがスマホで調べてくれた。

「あそこは岩国飛行場だね。“米軍基地と共用”って書かれているよ。」

「ああ、飛行場なんだ。道理で何も建ってない訳だ。」

 飛行場の向こうには瀬戸内海、そして島々が遠望できる。素晴らしい!内陸に住む私達にとって、“海が見える”ってことはそれだけでテンションが爆上がりするのだ。

「海が見えるっていいね・・・。」

「ははは、ドルフィンちゃんは結構ロマンチストだね。でも、午後はもっと間近で見れるはず。今の季節でも足を漬けるくらいはできるんじゃない?」

 そうだ!昼からは宮島に行くんだった!海をもっと間近で見られるぞ!やっほー!


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