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高校入学!さぁ!部活に入るぞ!今度こそ部活を楽しむのだ!

 皆さん、こんにちは!

 初めまして!

 田鶴瑞穂と申します。

 さて、放送部と言う名前はご存じでも、いったい何をしているのか、具体的な活動内容は知らない、と言う方も多いのではないでしょうか?この物語は、放送部活動とはいったいどのようなものなのかを皆さんに紹介するために書き始めました。主人公、入鹿の活躍を通じて、このマイナーな部活動のことを一人でも多くの人に知って頂ければ幸いです。

 リアル系青春ストーリーなので、基本バトルなど血沸き肉躍る展開はありません。高校生たちの日常の様子をお楽しみいただけたら・・・と思います。

 仕事もありますので、途中で投げ出さないよう無理はせず、更新は週一回(※毎週土曜日の予定)行うつもりです。エタらないよう、まったりと連載していきますので、気長にお付き合いください。よろしくお願いします。

 それでは、物語を始めます!是非、お愉しみください!

 

 4月10日は、それは見事な快晴だった。

「良い天気で良かったわね。」

「うん。」

 上機嫌の母に対し、私は微妙な返事をしてしまった。

「(これが漫画やゲームなら、桜が満開なんだけどなぁ・・・。ちょっと残念だなぁ・・・。)」

 そう、桜はとっくに散っていたのだ。私の住んでいる地方では、桜は3月下旬に咲き始め、4月頭には散ってしまう。卒業式ではまだ咲いておらず、入学式にはすでに散っている・・・誠にタイミングが悪いのだ。しかし、自然の営みに文句を言っても仕方がないか・・・私は気を取り直すことにした。

 生徒昇降口で受付を済ませると、母は先に入学式の会場である体育館に、私は受付で教えてもらった自分の教室へと向かった。教室には既に半数以上の生徒が集まっていた。見渡してみたが、知り合いはいないようだった。それも当然か。高校では県内各所の中学校から生徒が集まってくる。中学校は150校以上あるのだから、知らない人の方が多いのは当たり前だ。

 黒板に今日の席順が書かれたB4判の用紙が貼ってあった。それを見て自分の席を確認して座る。すると、隣の席に座っていた女の子が私に対し、話かけてきた。

「ねぇねぇ、貴女何中出身なの?私は、西市中よ。名前は『入之波花音しおのはかのん』よ。」

 突然声を掛けられたので、少しの間固まってしまい返事が遅れてしまった。

「えっ、えっと・・・私は京東中よ。名前は『栗須入鹿くりすいるか』、よろしくね。」

「へえー、ドルフィンちゃんね、よろしく。」

「ど、ドルフィン?」

「そう、『海豚』だからドルフィンちゃん。かわいいね!」

 なんか、勝手にそういうことになってしまった・・・(汗)。

 やがて、教室は人でいっぱいになり、出席簿を持った先生も入って来た。出席確認に続いて、入学式の段取りが説明された。その後間も無く、廊下に出席番号順に並ぶよう指示があった。並び終わると、1組から順に移動が始まった。廊下の窓から下を覗いてみると、1組の先頭は体育館の入口で止まっていた。320名が一列になって並んでいるのだから、凄く長い。そのまま、5分が経ち、10分が経過した。まだ、列は動かない。こうやってしゃべることも無く、ずっと立ったまま待たされているとだんだん緊張してくる。ひょっとしてそれが狙いなのか?と言うようなことを考えていると、漸く列が動き出した。

 体育館の入口では係の先生が、

「いいか!早く歩くな!式典では、ゆっくり歩くのだぞ!前の人にぶつから無いように、間を開けて歩きなさい!」

 と、繰り返し生徒達に指示していた。ゆっくりと言われても、どのくらいゆっくり歩けばいいのやら・・・。

 体育館に入ると、大勢の保護者が拍手で迎えてくれた。小学校や中学校では、これほど多くの大人に拍手されたことはなかった。高校って凄いって改めて思った。

 校長先生と育友会長さんのお話は、文言が難しくて内容はあまり頭に入ってこなかった。でも、入学許可で呼名されて、漸く高校生になったんだと、自覚することができた。

 ☆

 翌日、一年生は未だ授業は無くて、体育館に集まって『新入生オリエンテーション』を受けた。内容は、教育課程の説明、校則の説明、進路状況の説明などなど、難しい話しが延々と続いた。いい加減頭が疲れてきた頃に、生徒会主催の部活動紹介が始まった。先輩達が順々に舞台に上がり、自分達のクラブを紹介していく。その熱量に思わず聞き入ってしまった。中学校とは異なり、高校の部活動は種類が多く、見たことも無かった部活が結構あったことも驚きだった。

 放課後、クラスの皆は、各自が気になったクラブの練習を見るために、それぞれの活動場所へと向かった。

「ドルフィンちゃんは、部活はどうするの?」

「えぇ・・・っと、未だ決めてないよ。」

「私はハンドボール!小学生の頃から続けているんだ!インハイに出るのが夢なんだ。・・・ねぇ、一緒にやらない?」

「それは駄目。私は運動音痴なの。花音ちゃんの足を引っ張るだけだから・・・。」

 そのとき、私の脳裏には中学時代の悪夢が蘇っていた。私が運動音痴なのは事実だ。地元の中学校では全員が部活に所属する決まりで、私もバレーボール部に所属していた。でも、三年の間、公式戦はおろか練習試合にも出させてもらった事は無かった。万年球拾いだったのだ。勿論、自分でも納得はしていた。明らかに下手だったから。そもそも、スポーツに向いていない者を強制的に運動部に入れるのってどうよ!好きで入っている訳でも無いのに、怒鳴られ、叱られ、馬鹿にされ・・・。私は、この悔しさを忘れてはいない。高校では、絶対に運動部には入らないと決めていた。

「まだどのクラブかは決めてはいないけど、私は文化部に入りたいなぁ。これから見学して回るよ。花音ちゃんは私に遠慮せず、ハンドボール部の方へ行ってよ。」

「そう。残念だけど・・・仕方ないわね。じゃあね!」

 花音ちゃんは、そう言うと元気よくグランドへと走って行った。さて、私は文化部の見学廻りに向かいましょうか・・・。

 高校には文化部もたくさんあった。美術部、書道部、写真部、茶道部、華道部、軽音楽部・・・いろいろな活動を体験させてもらったけど、どれもピンと来なかった。さて、次のクラブはどうだろうか、とそんなことを考えながら廊下を歩いていると、外から大きな声が聞こえてきた。

「「「あ・え・い・う・え・お・あ・お。か・け・き・く・け・こ・か・こ。・・・」」」

 なんだろう?発声練習?演劇部かなぁ?そう思って窓から覗いてみると、十名ほどの先輩が一列に並んで、大きな声を出していた。

「「「青い家、兄と姉、青い絵、あかいえか、雨に降られて、あわてて家に帰った。」」」

 そのまま練習風景を眺めていると、一通りの発声練習を終えたところで、長身の美人さんがこちらに近づいて来た。

「貴女、ずっと熱心に練習を見ていたけど、興味があるの?」

 そのように問いかけられて、私はふっと我に返り、自分が抱いていた疑問を口にした。

「あ、はいっ。えーと、演劇部の皆さんですか?」

 美人さんは、軽い溜息を吐いてから質問に答えてくれた。

「いいえ、違うわ。私たちは放送部よ。」

「えっ?でも、今の練習って発声練習ですよね?放送部も発声練習をするんですか?」

「そうよ。アナウンスや朗読をするために、日々の発声練習は欠かせないのよ。」

「ええっ?でもマイクを使いますよね?マイクがあれば、演劇部のような声量は必要ないんじゃないですか?」

「いいえ、それは違うわ。マイクはあくまでも声をより大きくするための補助器具に過ぎないの。元々の声が小さいと、たとえマイクを使っていても相手には明確には伝わらないのよ。」

 吃驚だった。私は今の今まで、マイクがあればどんな声でも相手に聞こえるものだと思っていた。違うのか?!

 初めて知った事実に呆然としている私に、美人さんが再び問いかけてきた。

「で、最初の質問に戻るけど、貴女、放送部に興味ある?」

「えっ!?あ、はいっ!たった今、凄く興味が湧きました。」

 目を丸くして私の顔をしばし見つめた後、美人さんは、ぷっと噴き出し、笑い始めた。

「あはははははっ・・・。貴女、面白いわね!是非、放送部に入って頂戴。歓迎するわよ。」

「はいっ、判りました!よろしくお願いします!」

 自分でも吃驚したけど、なぜか私は即答していた。でも、これも何かの縁だと思い、そのまま入部することにした。


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