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「アウエリアは別に太ってはないわ。ちょっとポッチャリしてるだけよ。」


お母様が、そう慰めてくれたが身内のそれは、太ってると同義語だ。


「お嬢様は太りました。」


リリアーヌが止めを刺してきた。


「ダリアとお菓子を食べるようになったのが原因かと。」


なるほど、それも一理あるが。

10歳と言えば子供だ。

子供は己の体力も考えず、走り回る。

その消費カロリーは大人が考えている以上に多い。

しかし、私の中身は、多分大人だ。

子供の様に駆けずり回ったりしない。


くっ・・・、今更、ダリアの美味しいお菓子が止められるものかっ!


「お母様、私もビルと一緒に剣術を習いますっ!」


ビルは私と一緒に勉強しているのとは別に、剣術を家庭教師に習っていた。


「「えっ?」」


お母様とリリアーヌが声を上げた。


「貴族令嬢が剣術を?」


「剣術が得意な貴族令嬢もいるでしょ?」


いるのかな?


「そういえばあの女も・・・。」


そう言って、お母様の表情が険しくなった。

お母様、あなたがあの女っていうのは、きっとあのお方ですよね?

頼みますから、そういう言い方をやめてください。


「万が一の時、剣術を習っていれば、身を守れます。」


万が一の時なんて来て欲しくはないが。


「でもねえ・・・。」


「お母様、私がこのままおデブちゃんになっても?」


「・・・。わかったわ。その代わり剣術の先生に向いてないと言われたら、やめること。」


「はい。その時は、別の手段を・・・。」


「乗馬はいかかでしょう?ダイエットにも最適ですよ。」


メルディが提案してくれた。


「では、剣術と乗馬を習います。」


「乗馬は、屋敷の兵の誰かに言っておきましょう。」


うちは領地なし貴族ではあるが、私兵は大勢いる。

領地持ち貴族と比べれば数は少ないが、それでも屋敷を守れるだけの兵を抱えている。


私のダイエット計画の草案は終了し、服の試着に戻る。

メルディの服には、余計なものがない。

コルセットはあるが、他の余分なものは、全て排除していた。


「こんなに少なくていいの?」


「コルセットを薄く丈夫なものにしていれば、デザインに関係のない衣服は不要です。」


すばらしいっ!


「姉さん・・・貴族には貴族の・・・。」


「意味のない衣服を重ねることに何の意味が?」


おおーっ!メルディ。あなたは本当に素晴らしい。


「そんな事いうから、キャンセルなんて目に合うのよ。」


「私は、私の服を求めてくれる人だけでいいの。」


「感動しました。メルディ、是非、私の服を作ってください。」


「畏まりました。」


さっそく私は、自分の意見をメルディにぶつけた。

それは前世から、私が抱えている大いなる不満な部分を!


「メルディ、私の服なのだけど、全部、右ボタンに変えてくれるかしら?」


「それは駄目です。」


なっ!!

さくっと却下された。

えっ、なんで?


「貴族令嬢たるもの、左ボタンは常識です。」


な、なんてこったい。

貴族の常識に囚われない素晴らしい人だと思ったのに・・・。


「お嬢様は自分で服が着たいのですね?」


「そ、その通りよ。」


「駄目ですよ、それは。」


くっ・・・。


そもそも左ボタンは、服を着させてもらうのが前提で作られたもの。それをアメリカの権威ある雑誌が、載せた事により、女性は左ボタンとなってしまった。

が、日本は違う。

日本は鶴の一声、いや、すけべ禿の一言で決まった。


そもそも日本で、人に服を着させて貰うなら、和服だろ?何故に洋服まで、着させて貰う必要があるの?


くっそ、すけべ禿めっ!


女体盛を考案した、すけべ禿は、当時こう言ったらしい。


「欧米では女性は左ボタンですが、如何いたしましょう?」


「ふむ、ええんじゃないか?脱がしやすいじゃろ?のう。」


そう言って、下卑た笑いを浮かべたとか、浮かべたとか。


全くけしからんっ!時代が時代なら女性の敵間違いなしっ!



ああ、憧れの右ボタン・・・、異世界でも駄目か。



「お嬢様、デザインは、どういたしましょう?」


「出来るだけ動きやすく・・・。」


「普段用ですものね。ご希望にそえる様に致します。」


「あと、平民街に行っても、目立たないような服も欲しいのだけど?」


「平民街に行くのに、どうしてそのような服を?」


「護衛が居ないし、気軽に街中を歩きたいのよ。」


「平民街と言っても王都ですから・・・、しかし悪人もゼロではありませんよ?」


「だからこそ、目立ちたくないのよ。」


「うーん・・・、奥様、如何いたしましょう?」


「平民街へ行くのは、主人も許可しているわ。アウエリアの希望に沿う物を作ってくれる?」


「畏まりました。では、何着か、作ってまいりますので。気に入った物をご購入下さい。」


うあ、楽しみだなあ。

特に、平民っぽい服がっ!





ダリアとお茶会中に私はダリアに聞いてみた。


「ねえ、ダリア。孤児院に持って行けるような、お菓子はないかしら?」


「うーん、そうですねえ。いつも食べているような物は相応しくないと思います。」


そうだね・・・、材料がそこそこ高価なものを使ってるしね。


「持って行きたいのですか?」


「ええ、出来れば。」


私の様な大した役に立たないような人力だけでは、役に立ってるような気がしない。


「しかし、サントンが休日も手伝いに行っているようですし、そこまで孤児院を気にかけなくてもいいのでは?」


「ちっ」


背後から舌打ちが聞こえた。

言うまでもなくリリアーヌだ。


しかし、サントンやるわね。

人妻だったら、どうしよう・・・。

リリアーヌが喜ぶだけだ。


「孤児院に持って行ってもいいような物があれば、教えて頂戴。」


「わかりました。考えておきましょう。」


「お嬢様、あまり食べられますと、太りますよ。」


リリアーヌが背後から刺してきた。


ぐぬっ、おのれリリアーヌめ。


「大丈夫よ。剣術と乗馬を習うんだもの。」


「お嬢様は気にするような年齢ではないと思いますが?」


「ダリア。10歳っていうのはね。デブになる為のゴールデンエイジって言われているの。正念場なのよ。」


「始めて聞きましたが・・・。」


「普通の10歳っていうのは、その辺を駆けずり回ってるでしょ?」


「そう言われれば、確かに。」


「私は駆けずり回ってないわ。だから剣術と乗馬でカロリーを消費させるのよ。」


「なるほど。しかし、あまり無理はなさらぬように。」





さて剣術の授業初日。


「姉さん、大丈夫?」


ビルが心配そうに話しかけてきた。


「大丈夫よ。多分・・・。」


そんなに怖い先生なのかな?

それにしてもビルは可愛い。

ソネアのメインターゲットになった暁には全力で応援してあげよう。

うんうん。


家庭教師の先生は、何故か王宮騎士の人だった。

何で、外部から?


「お嬢様も今日から始めるとの事ですが、最初に言っておきます。俺は厳しいですよ。」


「・・・。」


うん、乗馬に専念するか・・・。


30分後。

キン、キン、キン。

私は防戦一方。


おい、おっさん。

(と言っても20代後半だと思われるが。)

厳しいにも程があるだろっ!


私は必死になって、家庭教師の攻撃を剣で受けていた。

剣の持ち方や構えなど、最初の基本は10分程度、実践あるのみの脳筋家庭教師めっ!


「よし、いいでしょう。」


何がいいんだよ、この脳筋がっ!


たった一日だが、私は辞める。うん、無理だ、これ。


「お嬢様は筋がいい。」


「え?」


おい、向いてないと言ってくれ、頼むから。

自分からやると言い出した手前、私が剣術の授業をやめることは出来なかった。


くっ・・・、これが自業自得という奴かっ!


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