表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/57

23

翌朝、紅茶の香りに目覚めると、テーブルには、ヘスティナさんが腰かけていた。


「おはよう、ヘスティナさん。」


「おはようございます。お嬢様。」


私がテーブルに座ると、私とヘスティナさんの紅茶が置かれた。


「お嬢様は、いつも自分で起きるのですか?」


「お嬢様は紅茶の香りで目覚めます。」


「素敵ですね。貴族とはそういうものなのでしょうか?」


「いえ、お嬢様だけです。お嬢様は、人に起こされるのが苦手ですので。」


ふみゃふみゃ。

私は、眠いので目をこすった後、紅茶を口にした。


うん、今日も美味しい。


「この紅茶、美味しいのですが、宿にあったのですか?」


「いえ、茶葉は持ってきました。」


「凄いですね。」


ふと、私は昨夜の事を思い出す。

ここに、ヘスティナさんが居るって事は、この部屋で寝たのだろうか?


「ヘスティナさんは、結局、何処で寝たの?」


「はい、お嬢様の隣のベッドで。」


はて・・・、するとリリアーヌは?

何となく、昨晩は、お母様と一緒に寝た時の感じ、所謂、誰かにギュッとされた気がするのだが・・・。


「リリアーヌは、何処で?」


「お嬢様はプニプニしておりました。」


こ、こいつ!私を抱き枕代わりにっ!

ていうか、側仕えが一緒に寝るってどうなの?えっ!?


まあいいか・・・。


「今日は、何するんだっけ?」


私は、リリアーヌに聞いた。


「町の中の散策です。」


「鉱山の町って、観光名所とかあるのかしら?」


「露店で未加工の宝石や、小さなアクセサリーなんかが、売っていますよ。」


ヘスティナさんが答えてくれた。


という事は、今日はショッピングか。


私は、平民っぽい服に着替えた。

昨日の探検家風で良かったのに、リリアーヌに却下された。


2日くらい同じの着たって大丈夫だろうに・・・。


朝食をとる為に宿屋の1階の食堂に行くと、既にドワーフ達が居た。

さすがに、朝っぱらから飲んではいなかったが。


「どうだい、よく眠れたか?」


ディグレットさんが私たちに聞いてきた。


「普通に。」


私はいつもと変わることなく睡眠がとれたので、素直に答えた。


「大した肝っ玉だ。」


「私はあんまり・・・。」


どうやら、エンリさんは寝不足の様だ。


ティグレットさん以外のドワーフは、いつも通り、鉱山に向かうようだ。


散策組の私たちが宿を出ると、宿の入り口には、ヒャッハーなボスが待機していた。


「おはようございます、お嬢様。」


相変わらず、中身イケメンだ。


「おはよう、パーシヴァルさん。」


私が名前を間違えずに言えたことに、驚いたのか、パーシヴァルさんは絶句した。


ふっ、横文字は確かに苦手だが、聖杯の騎士の名は、覚えているのだよ。


前にガウェインと間違えたのはご愛敬。


「仲間内では、パーシと呼ばれていますので、パーシとお呼びください。」


「わかったわ、パーシさん。」


短いにこしたことは無いので、素直に受け入れた。


「私は、一般市民ですので、さん付けは不要ですよ。お嬢様は、貴族ですから。」


ええー?そういうもん?

使用人なら、まだしもねえ・・・。


「じゃ、じゃあ、パーシで。」


「はい。」


「お嬢様、私にも、さん付けは不要です。」


何故か、ヘスティナさんまで、言ってきた。


「下賤な冒険者ですし。」


下賤って、A級は別格だと思うんだけど・・・。


「下賤なハーフエルフですし。」


まだ言うか・・・。


「はいはい、じゃあ、ヘスティナで。」


「お嬢様、私も呼び捨てで構いませんよ。出入りの業者ですし。」


エンリさんまで言ってきた。


「はいはい。」


もう面倒になってきたので、適当に返事をした。


「お嬢様、私も。」


「いや、あんたにさんを付けたことないわっ!」


何故か乗っかってきたリリアーヌに思いっきり突っ込んでしまった。


「あんたらは、寝てないんじゃろ?後はわしらに任せて休んでくれ。」


ディグレットさんが、寝ずの番をしていたパーシ達を労った。


大人だ・・・。


私、リリアーヌ、ディグレットさん、エンリ、ヘスティナの5名で、町を散策する。


リリアーヌが何やらよからぬものを取り出すのを私は見逃さなかった。


ガシっとリリアーヌの両手首を掴む。


「何をなさるのですか、お嬢様。」


「それは、こっちのセリフよ。」


こいつ、町中の散策なのに、迷子紐をつけようとしてやがった。許せんっ!


「昨日は、私の視界から消えてしまいましたので。」


「昨日は昨日、今日は今日でしょ?」


「一度ある事は、二度あると言いますし。」


まったく引き下がる様子がないリリアーヌ。


「わしとヘスティナが居れば、大丈夫だろう。なあヘスティナ。」


「昨日は、私が先見に出ておりましたので、あのような失態は致しません。」


「お嬢ちゃんも嫌がってるようだし。」


そう言ってディグレットさんが、リリアーヌを諫めてくれた。


「わかりました。折衷案です。」


そう言って、リリアーヌは私の左手をとった。


くっ、仕方がない。

恥ずかしいが、手を繋ぐ事は妥協しよう。


すると私の右隣に来たヘスティナが、何故か私の右手をとった。


なんで?

なんかこれ、見た記憶がある。

あれだ、捕まった宇宙人ってやつ。

トレンチコート来たおっさんに連れられた、ローラースケーターだっけ?


「これで危険はありません。」


そう、ヘスティナがドヤ顔した。


A級冒険者の事をこう思うのは不遜かもしれないが、イラっとした。


仕方ない、うん。


しかし、あれだ。

歩きにくい。


父親と母親に両手を繋いだ子供たちに問いたい。

歩きにくくね?


先頭は、ディグレットさんとエンリが歩く。

私たちは、その後ろを付いていく感じだ。

町ゆく人が、チラホラとディグレットさんを見ているのは、噂が出回ってるせいだろう。


暫く、歩いていると、ディグレットさんとエンリが足を止めた。


「ここの石は、小さいけどいい感じですよ、お嬢様。」


エンリが私にそう告げてきた。


どれどれ。


覗き込んでみると、様々な色のメノウが並べてある。


ふむふむ。


「どれでも一つ200ゴールドだよ。」


やっす、メノウやっすぅ!


「今の流行は透明色ですから、透明色じゃない石は、安いんですよね。」


エンリが説明してくれた。


私は、売ってある中で、縞模様が殆ど無い物を選んだ。


「これだけ購入するのですか?」


「ええ。」


リリアーヌがお金を支払い、購入した石はリリアーヌがポケットにしまい込んだ。


小さいからメインにはならないけど、散りばめるなら調度いい感じだ。


あちこちの露店を回り、エンリもいくつか購入していた。

石拾いが中止になったとあって、私と違い、エンリは必死だった。


昼食は、その辺の店で食べたがイマイチだ。

普段、屋敷でいい物しか食べてないから仕方ない。

たまにチープな味が、恋しくなってしまうが、こっちの世界では、チープな味には中々出会えていない。

つっても、異世界転生している身としては、チープな味がどんなもんだったのかは、舌でも脳にも記憶されていなくて、わからないんだけどね。

マヨネーズのように魂に刻み込まれてたら別だけど。


って、私、どんだけ、マヨラーやねんっ!


午後も午前と変わらず散策に。


露店も、もう飽きたなという所で、何やら出し物をやってる店に目が留まった。


参加型の出し物で、店主が投げる3つのボールを木で叩き落せば成功。ボールが体に当たったらアウトだ。


参加料は300ゴールドと若干高めだが、成功報酬は、宝石の原石とあって、ちらほらと参加者はいる。


「あれって、どれ位の価値なの?」


私は、エンリに聞いてみた。


「そうですね、ざっと見た感じでは、2、3千ゴールドという所でしょうか。」


「なるほどね。」


店主のボール投げ技術は中々のもので、宝石の原石をとらせる気は皆無の様だ。


「もし、良かったら私が宝石を取りましょうか?」


ヘスティナが言ってきた。


「えっ、挑戦できるの?」


A級冒険者が、挑戦させてもらえるんだろうか?


「人族にハーフエルフの違いは、わかりませんので大丈夫です。」


本当に?

私は不安を胸に、参加に向かうヘスティナの背をただ見つめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ