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夕食が終わり、私は義父と二人で話し合いをする事にした。


「お父様、実は、宝石いし拾いに行きたいと思いますので、許可を貰えませんか?」


「いし拾いに、アウエリアが?」


「ええ、レントン商会の職人の方が出向かれるというので、一緒に行こうかと。」


「ふむ・・・。」


「反対ですか?」


「いや、場所は王都内だから、危険は少ないので、反対ではない。ただ、まあ、あまり貴族令嬢が出向くような場所では無いからねえ。」


「貴族令嬢?貴族は出向いたりするのですか?」


「まあ、意中の女性にプレゼントする為に、出向いたりする若者は居るよ。」


「へえ。」


「どうしても行きたいのかい?」


「はい。」


「護衛がいれば許可しよう。それも女性の護衛をね。」


「女性の護衛?」


「いし拾いが出来る鉱山は、馬車で半日以上は掛るからね。日帰りという訳にはいかないだろ?」


「なるほど。レントン商会に聞いてみます。」


「ああ。」


「それでは、お父様。お母様への説明は、お願いしますね。」


「えっ?ちょっ、話しはしてないのか?お、おいアウエリアっ。」


何やら呼ばれている気がしたが、私は聞こえないふりをして、その場を後にした。





「お嬢様、宝石拾いの件、どうなりました?」


私の部屋で、リリアーヌが聞いてきた。


「女性の護衛を雇えば、いいと言われたわ。」


「奥様が?」


「いえ、お父様よ。」


「・・・。」


「何?」


「別に何でもありません。」


「明日、街に行くのよね?ついでにレントン商会へ行ってくれると助かるわ。」


「自分で行くと言われない所が成長されましたね。」


「明日は、屋敷で大人しくしてるわ。」


「是非、そうしてください。」


という事で、私は屋敷で大人しくしている事にした。


翌日。

リリアーヌが居ないので、私は一人でクロヒメの所へ向かった。

ダリアは、お茶会に向けて忙しそうだった為、私は一人なのだ。

なんという解放感だろう。


クロヒメの所に行くと、馬具屋の姉ちゃんが居た。

なに、この人・・・もう、うち専属?的な・・・。


「お嬢様、お一人ですか?」


「ええ。」


「そうですか、クロヒメが、お嬢様が騎乗すると力いっぱい走りすぎると聞いていたのですが。」


「ああ、そうね。ただ私は補助がないと乗り降りできないから。」


「それでしたら私が。」


という事で、私はクロヒメに乗る事になった。


で、結果はというといつも通り。

振り落とされないよう必死にしがみついてるだけだ。


馬具屋の姉ちゃんにクロヒメから降ろしてもらい、アドバイスを貰った。


「お嬢様、クロヒメはお嬢様に乗って貰って嬉しいのです。」


「ほぉ。」


「だから後ろから首をさすって、安心させて下さい。落ち着いて、大丈夫よと。」


「ふむふむ。」


「全力を出さずとも、あなたが早いのは判っているわとね。」


「言葉で伝えるの?」


「はい、クロヒメは賢い馬です。それで通じます。」


という事で、もう一度チャレンジ。

勢いよく飛び出そうとするクロヒメを宥める。

馬具屋の姉ちゃんに言われた通り。


最初は、落ち着きがなかったが、次第に慣れてきたのか、スピードも落ち着いた。

あとは、馬具屋の姉ちゃんが騎乗する感じで、私は背筋を真っすぐと伸ばした。


乗馬を終えると馬具屋の姉ちゃんが褒めてくれた。


「いい感じに乗れるようになりましたね。」


「そうね。自分でも判るわ。」


今日の乗馬は、満足のいくものとなった。


乗馬を終え、午後の家庭教師の授業が終わるとリリアーヌが戻ってきた。


「女性の護衛の件ですが、何とかなるそうです。」


「そう、ありがとう。宝石拾いとなると服が必要かしら?」


「服ですか?」


「ええ、まさかスカートを履く訳にはいかないでしょ?」


「鉱山ですからね。」


「メルディを呼んで頂戴。」


「畏まりました。」


翌日、メルディに来てもらう事になった。


私は口で説明するより、目で見て貰った方が解りやすいと思い、デッサンをする事にした。

宝石拾いなら、探検隊だろと勝手に思い込み探検隊の服をデッサンした。

探検隊と言えば、何故か半袖半ズボンだが、そこはあえて長袖長ズボンに変えた。

帽子は、もちろん探検帽だ。

これ大事!


鼻歌交じりでデッサンを終えた。


翌日、メルディにデッサンを見せた。


「これを作るのですか?」


「ええ、申し訳ないけど10日で出来るかしら?」


「何に使われるのでしょう?」


「いし拾いよ。」


「えっ。」


顔を顰められた。

貴族令嬢が宝石拾いに行くのは、やはり好ましくないのだろうか。


「あのクズやニートが行く、いし拾いですか?」


うん、実はこの世界にもニートという言葉がある。もちろん英語でも日本語でもなく、この世界の言葉だ。

ちなみに日本のニートとは違い、この世界のニートには年齢による卒業がない。

晴れて、ただの無職になるなんて事は、永遠に訪れないのだ。

って、卒業したかったら就職しなさいっ!


「クズやニートだけじゃないでしょ?宝石職人も行ってるはずよ。」


「それはそうですが・・・。」


「10日以内に出来る?」


「はい、それは問題ありません。」


「私も同じものをお願いします。」


後方から何かブッこんできた。


「何故、リリアーヌの物が居るの?」


「私も行きますので。」


「え?何で?女性の護衛が居れば、リリアーヌは来なくても大丈夫よ?」


「でしたら、私は、奥様と力を合わせて全力で反対に回りますが、宜しいでしょうか?」


リリアーヌが、ストレートに脅してきた。

ぐぬぬぬ・・・。


「私とリリアーヌの分をお願い。」


不承不承ながら、私はメルディに注文した。





当家で行われるお茶会の準備等で、お母様は忙しいらしく顔を合わせるのは食事の時くらいだ。

お陰で、宝石拾いに関しては何も言われない。


しめしめ。


そんな中、屋敷で飴屋の男性に出くわした。


「ほ、本日は、お、お日柄もよく。」


誰か結婚すんのか・・・。

緊張しまくっていた。


「お茶会の打ち合わせかしら?」


「は、はい。お嬢様のお陰で、この様な大役を。身命を賭して頑張りたいと。」


お茶会ごときに身命を賭けないで・・・。


「無理はしないようにね。」


「は、はい。」


恐縮したまま男は去っていった。


「可哀そうに・・・。」


後ろでボソっとリリアーヌが呟いた。


「何かあるの?」


「今回の件、ダリアは非常に遺憾に思っているはず。」


「そうなの?」


「お茶会を取り仕切るのは、ダリアですから。それをあんな飴細工の男性を関わらせるなんて、シマを荒らされた気分かと。」


どこのヤクザの話?


「ちょっとダリアの様子でも見ようかしら?」


「辞めておいた方がいいと思いますが?」


リリアーヌにそう言われると・・・。


よし、辞めとこう。

触らぬ神に祟りなしって言うしね。





お茶会当日。

私は、お茶会には参加しない。

それは私の我がままではなく、貴族では12歳に満たないものは、そういう催し物には参加しないのが通例だ。


まあ、どっちにしても私は参加しないが。


とりあえず、開始時間には、まだまだ時間があるので、気になった会場を見に行く事に。

今回は、屋外で行われるガーデニングバーティー形式で。


会場に着くと、私は感嘆の息を漏らした。


凄い、花が綺麗に飾られて、その中に、違和感ない感じで飴細工の花も飾られていた。


これは本当の花なの?

食べれるの?


って感じでクロヒメが首を傾げていた。


「ちょっ!クロヒメ駄目よ。食べては駄目っ!」


私は、急いでクロヒメに近づいた。


「ダリアっ!」


私の呼び声にダリアは直ぐに反応した。


「クロヒメには、これを。飾るときに欠けたりした物をとってあります。」


そう言って、ダリアは、私に飴細工を渡した。


「はい、クロヒメ、食べるならこれよ。」


お花?


首を傾げながらモソモソと一口。

その途端、目が細められた。


甘いのだろう。

うん、飴だからな。


美味しそうに、全て食べ終えクロヒメは満足したようだ。


「ダリア、私がクロヒメを厩舎に連れて行くわ。」


「申し訳ありません。よろしくお願いします。」


そうして、私は、クロヒメを厩舎へと連れて行った。


お茶会は大成功だったようで、参加者には、飴細工のお土産もあったようだ。


どんだけ頑張ったんだ、あの兄ちゃん・・・。

合掌。


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