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私が目を覚ましたのはベッドの上だった。

なるほど、力尽きたか。


「お嬢様、大丈夫ですか?」


私は起きようとした、起きようとしたのだが、起きられなかった。


くっ、力が入らない。


私はあっさり、諦めた。


「今は、何時かしら?」


「もう直ぐ、夕食の時間になります。」


「そう、今日は部屋でとるわ。」


「皆様が心配されておりますので、いつも通りでお願いします。」


「起き上がれないのに?」


「私が運びますので。」


なんだかなあ・・・。


私はお姫様抱っこされ、食堂へと運ばれた。

貴族特有の長い机を前に座らされる。

まるで人形になった気分だ。


「もういいのか?アウエリア。」


義父が心配そうに話しかけてきた。


「ええ、筋肉痛で、まだ歩けませんが、大丈夫です。」


それにしても、義父、義弟は、席についているが。


「お母様は?」


「ちょうど運ばれているアウエリアを見かけてね。その場で卒倒したそうだ。今は部屋で休ませている。」


「・・・。」


なんてこったい・・・、お母様に心配をかけてしまった。


「食事が終わったら、様子を見に行っても?」


「ああ、是非、そうしてやってくれ。」


私は、両腕の筋肉痛と闘いながら食事を取った。



食事が終わると私は、お母様の個室に運ばれた。夫婦の部屋ではなく、個人の部屋だ。


リリアーヌが私を抱えたまま、エルミナを呼んだ。

エルミナが扉を開けて、私たちは、入室した。


お母様は、ベッドの上で、上半身だけ起き上がっていた。


「アウエリアっ!」


お母様が心配そうに私の名を呼ぶ。


私はベッドの前に用意された椅子に座らされた。

うん、お人形だな、私。


「大丈夫なの?」


「お母様こそ、大丈夫ですか?」


「私は問題ないわ。アウエリアは?」


「全身筋肉痛で歩けないだけです。大丈夫です。」


「紅茶をどうぞ。」


エルミナが紅茶をいれてくれた。

私は振り向くことすら出来ないので、リリアーヌが向きを変えてくれた。


「アウエリア、お人形みたいね。」


「そ、そうですね。」


「リリアーヌ。今日は、アウエリアと一緒に寝ようと思うの。準備をお願いできるかしら。」


「畏まりました。」


えっ?

お母様と寝るの?


独り寝歴、ほぼ10年。

前世を合わせると何年か、わかりません。

人と寝るのって、どうなの?

ちゃんと寝れるのか私・・・。


その心配は杞憂に終わった。

私は、自分でも驚くくらいにあっさりと眠った。



目覚めるとお母様と目が合った。


「お、おはようございます。」


「おはよう、アウエリア。リリアーヌが言った通りね。」


「リリアーヌが何を?」


「アウエリアの寝顔は天使の様に可愛いと言ってたわ。」


何を言ってるんだ、リリアーヌ。

お母様は、寝台の横に置いてあったベルを鳴らした。

エルミナが入室してきて、私を起こしてくれた。

未だ筋肉痛で、身動きできない私は、エルミナの思うままだった。


「お嬢様、お人形みたいで可愛いです。」


普段、口数の少ないエルミナが言った。


「あら、アウエリアは、いつも可愛いわよ。」


お母様が言った。


私は、身動きできないので、もう好きにしてくれっていう気分だった。


朝食をとるために、ダイニングルームへ移動するのだが、そこでひと悶着あった。


お人形化している私は、エルミナにお姫様抱っこされて運ばれるわけだが、そこにリリアーヌが立ちはだかった。


「お嬢様は、私のものです。」


こいつ、とんでもない事、言いおった・・・。


「間違えました。お嬢様のお世話の仕事は私のものです。」


うん、わざとだよね?


「邪魔です。リリアーヌ。」


エルミナは一言だけ言って、あとはリリアーヌを無視し続けた。



私のお人形化は3日間続いた。

ちょうど、その間に脳筋の授業があったので、休んでやった。というか、脳筋の授業いつ終わるん?


その他の座学は、リリアーヌに運んでもらい、授業を受けた。



そして、ようやく一人で歩けるようになった日。


「今日は、乗馬の日ね。」


「お嬢様、乗馬もお休みされては如何でしょうか?」


「今日は、コクオーの顔を見るだけよ。」


「そうですか、また威嚇されそうですが。」


「何言ってるの?私達は分かり合えたのよ?機嫌よく出迎えてくれるわよ。なんならブラッシングしてあげてもいいし。」


「相手は、馬ですよ?既にお嬢様の事は忘れているのでは?」


「コクオーは賢い子よ。きっと大丈夫よ。」


私は、意気揚々とコクオーの元へ向かった。


「コクオー、元気してたかしら?」


私は、にこやかにコクオーに挨拶した。


「ふーーーーっ!ふーーーーーっ!」


思いっきり威嚇された。


私は、厩舎から少し距離をとった。


「何故かしらね?」


「所詮、馬と言ったでしょう?」


リリアーヌに諭された。


「お嬢様、危険ですから、あの馬には、もう近づかないでください。」


兵士な人に、そう言われた。


「そうね。コクオーとは分かりあえたと思ってたのに、気のせいだったようね。」


「コクオー・・・?ですか?」


「勝手に名前を付けて悪かったかしら?それとも名前が?」


「いえ、名前はありません。人を寄せ付けないので。」


「そう。何か言いたそうね?」


「いえ、決してお嬢様のネーミングセンスに、疑問があるわけではありません。」


私のネーミングセンスに、言いたいことがあるのね・・・。


「別に怒ったりしないから、言ってちょうだい。」


「え、えっと・・・、あの馬なのですが・・・。」


凄く言いにくそうだ。


「牝馬なんです・・・。」


ないわー、ないわー。

牝馬にコクオーって、ないわーっ。


「そ、そうなのね・・・。」


さて、どうしよう。

まさか牝馬とは思いもしなかった。


私は、コクオー(元)の元へ向かった。

リリアーヌと兵士な人が止めたが。


私はコクオー(元)の前に立った。

コクオー(元)は、直ぐに威嚇はしてこず、大きな瞳で真っ直ぐに私を見つめていた。


「あなたの名前は、クロヒメよ。どう?」


「ぶるんっ。」


悪くないと言いたげだった。

あくまで私が、そう思うだけで、実際にそう言ってるのかは不明だ。


「名前が悪かったみたいね。」


私はリリアーヌにそう言った。


「そうですね。女の子にコクオーは無いですね。」


悪かったわね。

私だって、そう思うわ。


「せっかくだし、ブラッシングでもしようかしら?」


「ぶるんっ、ぶるんっ!」


クロヒメに全力で拒否られた。



私は、離れた厩舎でブラッシングしている厩番を見つけたので、そちらに移動した。


「クロヒメは、ブラッシングを嫌がってるんだけど?」


「クロヒメ?」


「あっちの離れの厩舎の馬よ。」


「ああ、あの馬には、そもそも近づけないので、ブラッシングはしてませんよ。」


「そう。ブラッシングを嫌がる馬っているの?」


「そういう馬には出会ったことはありませんね。」


「ふーん。ねえ、こっちの馬なら私でも出来るかしら?」


「ええ、こちらの馬は皆、大人しいので。台を持ってきましょう。」


厩番の人が台を持ってきてくれたので、私は馬をブラッシングした。

とても気持ち良さそうだった。


うーん、何だろうな。

クロヒメは何が不満なんだろうか?

前世では馬との接点は、ほぼ無かったので、私にはさっぱり判らなかった。


「馬具屋に行ってみますか?」


リリアーヌが言ってきた。


「何処にあるの?」


「貴族街にあります。」


「そうなの?」


「馬具を購入するのは、殆どが貴族なので。」


「なるほど。明日にでも行ってみようかしら?」


「了解しました。」


「許可は下りるのかしら?」


「貴族街なので、問題ないかと。」


「なるほどね。」



そう言えば、私が筋肉痛になった為に、レントン商会へ訪問する日程が延期になったんだった。

何だか、色々忙しいわね。



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