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道中2 森の中

小川のせせらぎが響き

鳥の鳴き声がこだまする。


そんな中木の上に息を潜める1人とけもの道を堂々と歩く1匹がいた。


(もう少し…もう少しこっちに……)


「フゴッフゴッ…!

フゥーフゥー!」


鼻息荒く興奮した様子のイノシシが、レイの隠れている木に段々近付いてくる。


(よし……)

ゆっくりと腰のホルダーからナイフをゆっくりと引き抜く。


(今……!)


イノシシが真下に来た途端、足場にしていた枝を思い切り蹴り抜く。


バキッ!


枝が音を立てて弾け飛ぶ。


「獲った…!」


銀閃が空を走る。

遅れて鮮血が飛散しゴトッと鈍い音を立てイノシシの首が落ちた。


「思ったよりでかいな…」


顔についた血を手で拭い、横たわるイノシシを改めて観察する。


大型犬程の大きさ、そして脂肪を蓄えながらも発達した筋肉。

適切に処理すれば1週間は食べ物に困らないだろう。


(後は拠点に戻って処理するだけ…)

(いや、ここで処理をした方がいいか)


レイはその場で毛皮を剥いでから脚、レバー、ハツ……部位ごとに分けて捌く。

最後に毛皮を袋にしてそれらを包み込み背負う。



――――――――――――――――――


「何だ…先に戻って居たのか」


レイが帰るとそこには木の枝を抱えたシオンが居た。

先に帰った彼女は拠点を整えていた。


「あぁ…レイさんおかえりなさい」


レイに気付いた彼女は浮かない表情で返事をする。


「ただいま。」

「どうした?」

「あ、もしかして水場でも見つからなかったのか?」


「あはは…まさか……」

「水どころかキノコや野草、木の実なんかも見つけましたよ。」


そう言ながらシオンは後ろの岩のテーブルに指を指す。

色とりどりの木の実や美味しそうなキノコ、香りの良い野草が種類事に分けられていた。


「おぉ…!」

「これはベリー、こっちの野草は良い匂いだ…!」

「しかもこのキノコはユキタケ……高級品じゃないか!」


量こそ少ない物の様々な種類が揃っている。

中にはユキタケと呼ばれる真っ白なキノコ、市場にで回れば一つで宿1泊分もする高級なキノコもあった。


(驚いた…まさかここまで揃うなんてな……)


レイの口からヨダレが垂れる。


「おっと…いかんいかん」

「シオンありがとう。」

「ここまで集めるのは大変だったろ?」


「いえいえ」

「私は採集だけですし……」

「それも1時間ない程ですし、運が良かっただけですよ。」


そう答えるシオンには誇らしそうな表情が見える。


レイはふと空を見上げると少し日が傾いていた。

別れた時から1時間30分程たっているだろうか。


「それよりも…共有したい事があります。」


食事の準備をしながらも真剣な表情で、淡々とそれを伝える。


「レイさん、冒険者ギルドに届いていた依頼……」

「魔物の群れは見つけましたか?」


レイは念の為魔力探知で魔物の群れを探す。

しかし別れた時同様、丁度1キロほどの辺りに居座っていた。

時間が経っているのにも関わらず動いていない。


「あぁもちろん。」

「解散した時と同じ所にずっといるな。」

「あ、その野草貰っていいか?」


シオンがコクリとうなずきながら、手に持っていた香りの良い野草をレイに渡す。


「ありがとう。」


「いえいえ。」

「それよりその通りです。」

「ではその反対側に生物の気配が無いことも気がついて居ますね?」


(反対側…あっ!)


レイはその事実を指摘されハッとしたような表情を浮かべ、食事の準備をしている手が止まる。


(そうだなぜ気が付かなかった?)

(シオンが行った方向だから警戒して居なかった?)

(いや違う群れに気を取られて反対側まで意識が回っていなかった。)

(そして反対側に気配がない理由は……ッ!)


その事実に気が付き顔がひきつる。


「まさか…主レベルの魔物がいるのか……?!」


(ヌシ)

その地域で最も強く生態系を変えてしまう程の力を持つ魔物や生物の総称。

基本的にはその森に住む魔物の最上種が(ヌシ)になる事が多い。


「おそらくは……」

「そして近頃の魔物の大量発生も(ヌシ)誕生の前触れだったのでしょう。」


シオンは真剣な表情のまま話を続ける。


(確かに……今思えばウィンドタイガーと戦うことになった場所も平原。)

(本来なら他の魔物を圧倒する程の力を持つウィンドタイガーがわざわざ生息域を離れる事はありえない……)


レイは内心焦っていた。

ウィンドタイガーですらそこら辺の人間じゃ相手にならないのだ。


それよりも強い魔物にもし不意を突かれたら?

帰る際に接敵したら?

もし魔物が今よりも成長したら?


特に魔物の強さは、魔力量に比例する。

今でも負傷覚悟であれば勝てるだろうが、もしその魔物が成長し続ければその勝ちですら怪しくなるだろう。


「つまり…ウィンドタイガーよりも圧倒的に強い……という事か。」


ウィンドタイガーの強さは、圧倒的なスピードから繰り出される爪による攻撃だ。


人の様な知恵を持つ生き物なら兎も角、知能の低い魔物がウィンドタイガーに勝つなら数で圧倒して、群れで襲うくらいしかない。


もしも一体の魔物が勝つとしたらそれは……


「ウィンドタイガーについていける程のスピードと攻撃力がある事になる……か」


「そう……そして私は魔力探知されました、つまりある程度の魔力操作もできます。」

「まぁ逆に魔力で少し脅してやりましたけどね。」


「なるほど……」


模擬戦で直に感じたのが正しければシオンの魔力量は絶大。

常識的な使い方をしていれば魔力切れまで行くことは無いだろう。

それこそ辺り一帯を焼け野原にする程度であれば半分以上魔力を残した上でやってのけてしまうだろう。


そんな魔力量で脅されたのであれば、魔族ですら本能的に逃げを選んでしまうのでとさえ思ってしまう。


(であれば今の所しっかり準備すれば脅威と言う程でも無いのか?)

(どちらにしろ今戦うのは愚策か……)


「心配なさらずとも今の所は脅威でもないですし、冒険者ギルドにも連絡しておきました。」

「ですので頭の片隅に置いといて貰えれば結構です。」


そう言葉にするシオンはかなり落ち着いていて、どこか歴戦の猛者の様な自信を感じる。

俺もそれにつられて少し冷静さを取り戻し、手を進める。


(にしても…凄い自身だな。)


冒険者ギルドの力を信じているのだろうか?

いや、もしかするとシオン自身その実力に絶対的な自信を持っているのかもしれない。


「それに…この程度勝てないなら生きて帰れないでしょうし……」


「ウッ…まぁそれもそうか……」


確かにそう言われればそうだ、目標の地は環境が厳しい分、ここと比べ物にならない程危険な魔物が居ると思われる。


もしかするとウィンドタイガーで最低レベルかもしれない。

であれば比較的環境が安定している森の、主程度では騒いでいられない。


「ふぅ…このまま目的地に行く事を優先するか……!」


気が付けば肉の仕分けも、最後の塊一つになっていた。


「えぇ……レイさんならそう言うと思いました。」

「この後はできるだけ主を…戦闘を避けつつ森をぬけましょう。」


いつの間にかそう答える彼女の声に混じって、パチパチと子気味のいい音が聞こえてくる。


目をやると焚き火の周りに、キノコ刺さった串が刺さっていた。

いい匂いがただよってくる。


「そうだな…」

「とりあえず昼食にするか……」


彼女はにっこりと微笑みながら答える。

どうやら食事をかなり楽しみにしていたようだ。


「えぇそうしましょうか。」


そう言いう彼女からかすかに『きゅう〜』という可愛らしい音が聞こえるのだった。




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