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道中1

――――――――1日目―――――――――


街の外へ出て3時間・・・

平原を超え森に入っていた。


北極まではこの森を超え

街3つ

平原2つ

砂漠1つ

山1つ

を超えないといけない


だと言うのに・・・


「ハァ……ハァ……なぁ少し休まないか?」


俺は既に疲労していた。


「・・・そうですね、ちょうどお昼時ですし。」


涼し気に答える彼女も心なしか疲れている様に見える。


シオンは答えるや否や地面に突き刺した。

途端に淡い黄色の光が漏れ出る。

それを合図魔法が発動し、穏やかな森には似つかないズゴゴゴッという音ともに背もたれが生えて来た。


「悪い・・・助かる・・・・・」


平原を超えた時は簡単に次の街までたどり着けると思っていた。

実際1時間程度の行軍で、予定よりも早く平原を超え戦闘もなく、大して体力も消耗していなかった。


でも森に入った途端全てが一転。

森に入って20分もしないうちにゴブリンの群れに襲われ、そこからと言うものずっと戦闘が続いている。


ゴブリンやアーススネーク、フタマタコンドルにリーフタイガーの他にもオーク・・・・・・

1日も経たないうちに、森と言えばと言われて思いつく魔物や動物とあら方戦う事になった。


今思えば彼女は俺よりもずっと早く、魔物の存在に気がついていた。


(運動量の少ない魔法使いでも疲れるのも当たり前か。)

(幾ら勝てるからと言っても、ウィンドタイガーの様な最上種の魔物と遭遇しなかったのは救いか・・・)

(まぁあんなのポンポン出てくるもんでも無いが)


「とりあえず俺は獲物を捕まえる、シオンは火起こしと水の確保、道中に食べれそうな物があればそれの採取をしてくれ。」


「ありがとうございます。」


それを聞いたシオンは周りをキョロキョロと見渡す。

よく見ると彼女の目の色が青く光っている。

恐らく何らかの魔法で周囲を観察しているのだろう。


俺はそれを横目に座り込み岩の背もたれにもたれ掛かる。

そして腰に着けたポーチから水筒を取り出し口に含む。


「ゴクゴクッ……ふぅ……」


俺は水筒の水を豪快に流し込む。

しばらくしてシオンはおもむろに一点を見つめ歩き出した。


「見つけた……」


2.3歩進んだところでポツリと言葉が漏れる。


「ここから300m程行ったところに水場があります。」

「少々魔物もいますが……まぁ問題ないでしょう。」

「10分後には戻りますので、しばらく待っていてください。」


「わかった。もし何かあればデカイ音でも立ててくれすぐに向かう。」


それを聞いたシオンはその方向に駆け出した。

俺はそれを横目に立ち上がり体を伸ばす。


本来であれば1人で行動するのは死亡フラグだがライラさんからの情報、シオンの実力を考えれば全く問題ない。


(出てもウィンドタイガーレベル。)

(それ以下で魔物の群れの情報もあるが、彼女なら問題無い。)

(と言うか勝てないところに突っ込む程バカじゃないか。)


平原を進んでいる時に、魔物の情報は共有してある。

完全に不意を突れなければ死にはしない。

そもそも完全に不意を突かれる様な状況になれば何人居ようが即死だ。

2人で行動する合理的な理由がない。


「人の心配よりも、自分の心配するとしようか。」


俺は立ち上がりゆっくりと深呼吸する。

集中

気配を消し、魔力をゆっくりと慎重に広げる。


魔力による、魔力を持つものの探知。

冒険者には必須スキルだが高等技術。


魔力操作が苦手な俺には探知相手に気付かれないように1km圏内の気配や地形を感知するのが精一杯だ。


広がった魔力は魔力を含んだ障害物・・・

つまり魔物含む生きた物の形が明瞭になる。


「なるほど……道理で魔物が多いわけだ。」


シオンが向かった反対方向1km程……

探知圏内ギリギリに複数の魔物の気配がある。

恐らく討伐依頼が出ていたハイゴブリン魔物の群れだろう。

ちょうど森の浅い所に陣取っている。


魔物は核の周りを全ての生物の源である魔力が形取って形成された特殊な生物。

そして魔物は他の生物と違い、自力で魔力を回復する術を持たない。


その為より魔力効率が悪い魔物ほど、より多く魔力を取り込むために行動する。


つまり魔物のターゲットはその魔力量と魔力の変換効率から基本的に、魔物>その他生物の順になる。


そのせいで追われた魔物が俺達の方に流れてきたのだろう。



そしてその間にイノシシの気配。

真横に200m程ズレた所に鹿の気配もある。


「猪と鹿か……鍋もいいし、香辛料もある……ステーキも捨て難い。」



――――――シオン視点―――――――――


「やっぱりそっちに行きましたか……」


魔力探知で最小限の範囲にある、気配を把握しつつ木々の間を駆け抜ける。

それと同時に、キノコや野草の目星をつける。


ここから300m先に水場がある。

違和感・・・その間と水場付近に魔物と動物の気配が無い。


「水場なのにねぇ…」


レイさんから教えて貰ったのは、冒険者ギルドの情報からは魔物の群れと相変わらず森で魔物の活動が活発な事……


それなのに魔物がいない、ぽっかりと空いた空間がある。

魔物だけなら兎も角、クマやイノシシ何かの動物もいない。


(主が居るのは確定ね……)


とは思いつつも今は相手なんかしない。

今は何よりも勇者の装備を集める事が先決。


レイさんからの情報とは別に、私達の組織の掴んだ状況によれば、魔族の侵攻が数ヶ月後に来る予定……

今ここの主を見逃すよりも装備を手に入れれなかった時のリスクの方が大きい。


「よし…着いた……」


水源に到着する。

淀みの無い澄んだ水が岩の裂け目からチョロチョロと流れている。


透明な大きめの容器の口をサッと開け水を汲む。


(よし後は…戻るだッ……?!)


ヌルリと身体中をまさぐる様な・・・不快感に襲われる。

魔力に当てられた時…中でも魔力感知に引っかかった時特有の感触。


「チッ・・・気付かれたか・・・・・・」


舌打ちが響く。

同時に極限まで魔力を抑えながら慎重にその主を探す……。


(居た…これは流石に共有するべきか……)


魔力探知にそこら辺の魔物とは比べ物にならない、ドロドロとした魔力の塊が引っかかる。


どうやら思っていたよりもかなり強い魔物らしい。

それか魔法に長けた種類なのかもしれない。


「ハァ…襲われても面倒だ……」


魔力の制限を一気に解除し逆に魔力を放出し周囲が魔力に満たされるていく。

辺りの澄んだ空気が一変、どんよりとした魔力特有の重さが広がると共に主の魔力をかき消していく。


木々が身震いし、ザワザワと不穏な音を立て始める。


無抵抗・・・なんてことも無く、森の主の方からも魔力を上書きする様に魔力が広がって来る、がそれすらも塗りつぶす。

塗りつぶし終わった所で、森の主に魔力を集中させる。

そして全てを押しつぶすかのようなイメージを乗せていく。


瞬間

ふっと森の主の抵抗する魔力が消え、気配その物がゆっくりと遠ざかっていく。


「まぁこんなもんか……」


魔法とはイメージの世界だ。

イメージは設計図で魔力はイメージを書き出すインクの、そして術式と詠唱はそれらを現実に出力するペンの様な物だ。


相手がある程度魔法に理解があれば、魔力にイメージを乗せるだけでその先を想像させることができる。


私がやった事は言ってしまえば、わざわざ殺すと宣言してから組み伏せて、首元にナイフを突き付けた状態で二重に殺意を向けたような物……

死刑宣告に近い。


「さて…戻りましょうか」


私は目星をつけたキノコや野草を回収しながら来た道を戻っていくのだった。

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