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出発

「昔の地図か……!」

「残っていたのか?」


「えぇ…それも150年前、99代目つまり3代前の勇者の時代の物です」


3代前……

つまり勇者の装備による戦争『新全戦争』が起こる前の地図と言うことによる。


「しかもこれは勇者が使っていたと言われている物です。」


広げられた地図をよく見ると、所々赤黒い文字でその地域の特徴と通ったルート等が書かれていた。


もちろん戦争や開拓によって多少地形が変わる所があるだろうが、それを差し引いても旅が楽になるのは確実だろう。


「なるほど……」

「それで…なんでこれを……」


俺はあわてて口を閉じる。


こいつは監視役に選ばれる程のギルドでも秘匿された存在、言ってしまえば影の存在…

はっきりと口にしてはいけない事もあるだろう。


「いや、何でも無い……」

「助かる!」


地図を眺めながら、これからの針路を修正する。


「であれば経由する街を減らしてこう行って…こう修正すれば……!」

「1ヶ月程度で帰って来れる……!」


(これなら魔族の侵攻が2ヶ月後として考えても半月近く余裕ができる……!)


思わぬ収穫だ。


「……この事はギルドにも内密にお願いします。」

「それでは、出発の準備をしてきます。」


「あぁ…俺もそうしよう。」


こくりと頷くと彼女はそそくさと自室に戻って行った。




―――――――――――――――――――――――



「ついに出発だな…」


あれから準備を整えた俺たちは街の北門の前にいた。

それと同時に今まで燻っていた密かな恐怖心がゆっくりと現実に顔を出し始めていた。


「スゥー……ハァー……スゥー……ハァー」


一旦俺は深呼吸をして気を落ち着ける。


…この旅は正直生きて帰れるかは分からない。

もちろん死ぬ気なんて無いがそれでも勇者の装備があるかもしれない場所に行くのだ。

これまでに無いほどの試練があると思うのが普通だろう。


気が付けば手が少し震えていた。


それを見て俺はゆっくりと目を瞑る。


そして、ここに来る途中雑貨屋の店主ジェイドや冒険者ギルド受付のライラさんと言った世話になった人に挨拶をして来た事を思い出す。


ジェイドの旦那に旅をすると伝えると、旅に関する色々を語ってくれた。

獣や虫の簡単な調理の仕方や、魔法での水分補給は最終手段しろだとか、緊急事態にならない方法からなった時の対処方何かを教えてくれた。


他にも過去の経験から、こうすると旅が楽に、便利になると言うような事をまとめた手書きのノートまでくれた。


(元名の知れた冒険者…そんな人から貰ったノートに激励……)

(大丈夫俺は生き残れる…)


ライラさんに挨拶をした時には、途中寄る予定のある街の特徴や地理別の詳しい生態系の書かれた本、今集まっている依頼の内容、何かを説明してくれた。


そこには食用になる種、食べられない種、危険度の高い種とその行動etc……


様々な情報が書いてあった。


(ライラさんからの情報…事前のシュミレーションは完璧だ)

(大丈夫ウィンドタイガーにも勝てたんだ、死にはしない)


他にも、お世話になった街の人から激励の言葉。

荒れた水面がゆっくりと静かな水面に戻る様に心が落ち着いていく。


「ふぅ……心の準備はいいか?」


「はい…!」


後ろのシオンから気合いの入った返事が聞こえる。


俺はその声を聞いて1歩踏み出す。

同時に背中から心地良いそよ風が吹き背中を押す。


(ここからだ…ここから俺の復讐が始まる……!)


その黒い希望を抱きながら地面を力強く踏みしめるのだった。


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