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夢境

「ん……もう朝か…?」


光の気配を感じて目を覚ます。

むくりと体を起こすが寝ぼけているせいか視界が白くぼやける。


「ふぅ……」


段々と視界が明瞭になり、この世界が純白になっている事に気が付く。

白以外の物は見当たらない様子。


目の前にはそんな味気のない世界が広がっていた。


「……?!」


思わず自分の手に目をやる。

そこにはあるはずの物が無く……

なんて事も無く、硬い皮膚に覆われた俺の手が目に入る。


(ここは何処だ?何が起こっている?)

(いやそれよりも俺はここに来る前何をしていた?)


色々な疑問が頭を駆け巡るが答えらしきものは思いつかない。

代わりにここが本来、来るべきでは無い場所。

それでいて大切な場所だと直感的に感じる。


「チッ…とりあえず出口を探すのが先決か……」


何の躊躇もせずに歩を進める。


歩く…ただひたすらに歩く……

1歩足を進めることに少しづつ記憶が明瞭になる。

それと共に頭の中をまさぐられる様な、嫌な感覚に陥る。


「そうだ俺は旅に備えて寝てそれから……」


それ以降の記憶が無い。

疲れと共に意識が落ちた所までが俺の最後の記憶のようだ。


「これは夢なのか?」

「いや、違う…地面?をふむ感覚はある。」

「それに夢ならあまりにも世界に色が無さすぎる。」


俯きぶつぶつと呟きながら足を進める。


「いッ……」


変わらず進もうとした時だった。

頭の中をかき混ぜられる様な感覚に襲われ、次第に握り潰されるような痛みも混じり、耐え難いレベルに変わる。


思わず頭を抑えるしゃがみこんでしまう。


「痛い痛い、いたぁ……あぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛………!」


その痛みに思わず叫ぶが世界はその音すらも吸い込みすぐに消えてしまう。


痛みは治まらないどころか酷くなる。

そこら中を転げ回り視界がぼやける。



―――――――――――――――――――



「あ゛あ゛あぁぁ……ハァハァ……」


どれくらいたっただろうか…

気が付けば痛みは耐えられるレベルにまで引いていた。


「ははっ…何だよこれ……」


痛みの代わりに、とんでもない孤独感の混じった絶望感に襲われる。

まるで人の負の感情が流れ込んで来るような感覚…


「お゛ぇ……」


思わず嘔吐いてしまう。


「何だよ…なんなんだよ…これ……」


何とか立ち上がろうとするが、とてつもない倦怠感に襲われ力が入らない。


身体が動か無い……


(いつもこうだ…希望を見つけた思った途端に消える)

(はぁ…どうでもいいか…もう…どうでも……)


その不快感に自身の感情も引っ張られ良くない事を考えてしまう。


そんな時だった。


「あらあら…?ここに人が来るとは珍しいですねぇ…」


どこからか透き通った美しい声が聴こえる。

心地良い響きだ。


「お前は…誰だ……?」


「あぁすみません…」

「申し遅れました…私は『 』と申します。」


彼女の名前は良く聞き取れなかったが、本能的に敵では無いことを察する。


「それよりも……早く戻して差し上げましょうか」

「もしまた会えたら……その時はおもてなし致します」


彼女がそう言うと意識がゆっくりと沈んで行く。

それと同時に先程までの嫌な感覚がゆっくりと抜ける。




―――――――――――――――――――



「ん…朝か……」


眩しい光に当てられ目が覚める。

気が付けば朝日が登っていた。


「……?」

「何だ?」


ベッドから立とうとした瞬間とてつもない違和感に襲われる。


何か大切な事を忘れている様な感覚……

思わず窓の外を見つめる。


「いや…忘れている事は無い…のか……?」


ズキン


「うっ……」


何かを思い出そうとした途端頭痛に思考の邪魔をされる。


「この痛み……そうだ、俺は何か夢を見ていたはず……」


コンコン


扉をノックする音が響き渡る。


「レイさーん?」

「起きてますか〜?」


「……?!」


どうやら思っていたより寝ていたらしい。

ほんのりとパンの香ばしい匂いが鼻につく。


「わりぃ……今起きた!」

「すぐ向かう!」


とりあえずそう返事をしてベットを整える。


「分かりました。」

「早く来てくださいね。」


その言葉の後にトントンと軽い足音が廊下に響く。


「ふぅ…とりあえず準備するか……」



―――――――――――――――――――


「おはよう」

「……今日も美味そうだな」


リビングに到着するとテーブルの上にはパンとコーンスープにミルクが用意されていた。


「おはようございます。」

「今日の朝食は上手く出来ましたよ。」

「暖かいうちにどうぞ。」


彼女は上質そうな黒いグローブをまとって居る。

どうやら彼女は既に色々と準備を整えていた様だ。


「ありがとう。」


俺も席につく。


シオンの料理はここ数日間食べていたが

かなり美味しい。

楽しみだ。


「「いただきます。」」


まずはスープを掬う。

コーンの甘い香りが鼻腔に充満する。

口に運ぶと濃厚でクリーミーな味わいが口いっぱいに広がる。


「今日も美味いな。」


「ありがとうございます。」

「それで……食事中で悪いのですがこれを忘れない内に渡しておきますね。」


彼女はパンを口に放り込みながら、懐からカードの様な物を取り出した。


「これは…俺の冒険者証か?」


冒険者証……

冒険者カード等の色々な呼称のあるカードで、冒険者がどこにいるか、一定範囲内での通話と言ったことが出来るカードで冒険者の身分証のような物だ。


「その通り…貴方のカードです。」

「今……元々持っていたカードがどこにあるか分かりますか?」


そんな不思議な事を真剣な表情で聞かれる。


冒険者カードは冒険者である事の証明証だ。

まともな奴なら肌身離さず持っている。

もちろん俺もそうだ。


「そんなのいつも懐に…」


そう言いながら服の中に手を伸ばしてそれを取り出す。


「はい!」

「間違いないはずだ。」


そう言いながらそのカードを彼女に渡す。


「拝見しますね。」


彼女はそのカードを手に取ると、まじまじとそのカードを見つめる。


「なるほど…そういう……」


妙に納得したような声でつぶやく。


「何かあったか?」


「いえ……」

「大丈夫です」

「とりあえず新しいカードの方を持っておいて下さい」

「古い方は回収します」


「ふむ…そうか……」

「シオンが言うならそうしよう。」


カツン


「む……」


気が付けば皿の上から料理が消えていた。


(まぁ腹八分と言った所か……)

ちょうどいい塩梅だ。


シオンの方を見ると丁度彼女も食事を終えていた。

彼女も互いに食事を終えた事に気がついたようだ。


それと同時に彼女はポツリとつぶやく

「それで…結局向かうのは、『北極』で良いんですね…?」


北極

北の果てとされる場所。

氷に覆われて居て厳しい寒さが特徴の土地だ。

ほとんどの生物が生きていけない厳しい環境で、そこに生きる生物の危険度も果てしない。


環境が厳しい分そもそも生きるのが難しい。

それだけで、旅の難易度が上がる。


逆にそんな中で生きる生物の危険度が計り知れない。

そのせいもあって情報も少ない。


「あぁ…そうだ……」

「過去の勇者の足取りや地方に残っている伝説、それらを加味したら、北極が最も装備がある可能性が高い。」


俺の予想では、神滅の篭手と契の指輪のどちらかがあるはずだ。


「……分かりました」


それを聞いた彼女はスっと立ち上がり食器を片付けた。

その流れで地図を取り出し机に広げる。


「これを見てください…」


「これは……?!」

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