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VSシオン 1

「おいおい…マジか!?」


俺は思わず目を見開く。

あの瞬間俺は渾身の突きを放ったが、勝ちを確信したのとは裏腹に、返って来たのは思い切り手を蹴られた様な感触だった。


シオンは軽く咳しながらゆっくりと立ち上がる。


「ゲホゲホッ…あぁ〜キッツゥ…」


「おいおい…模擬戦でやる事じゃないだろ…」


彼女はナイフが当たる瞬間、彼女自身に向けて風球(ウィンドボール)を打ち俺のナイフを躱すだけでなく弾き飛ばしていた。


魔法の威力の調節はミラから簡単と聞いた事があるが自分に向けて打つのは勇気がいるだろう。

何より反撃を考慮すれば最悪の一手だとも言える。


だけど魔法が当たった後も消さずに、その場に留めることによってナイフを弾き飛ばされ体制も崩された。

それにより最悪の一手が最善の一手に変えられてしまう。


彼女の魔法の扱いの上手さあっての結果だ。


「元勇者パーティーのメンバーが相手なんだ…これぐらいはするよ」

彼女はにやりと不敵な笑みを浮かべながら答える。


「それはありがたい事で…」

(だが…これで俺が有利)


相手は魔法使い…

魔法使いにとって杖は魔力の制御装置のような物で彼女はそれを手放している。

これはチャンスに他ならない。


しかもシオンはまだ体制を崩している。

俺はその隙を見逃さない…!


(何より長引くと危ない…今…決める!)


俺はナイフを拾い、すぐさま距離を詰め首にナイフを突き付けにかかる。


しかし最小限の動きで躱されナイフは空を切る。


だがこれも予想内。

攻撃の手は緩めず急所に向かってナイフを振るい続ける。


「チッ…」


(嘘だろ?!相手は魔法使いだぞ?)

俺の攻撃は当たらない所か体制を崩すにも至ら無い。


(別に速い訳じゃない…)

(ただ限りなく無駄の無い動きで躱される)

(体格も一回り以上違う、その上俺は身体強化も使ってる…)

(なのに捉え切れない…それ程技術が洗練されている。)


「アハハッ…!」

「容赦無い戦い方をするね!」

「それに良く相手を観察してる…」


「ハッ…お喋りする余裕がある方がびっくりだよ…」

(こっちはそこそこ限界近いんだがなぁ)


状況的には圧倒的に有利なのに勝ちきれない…

心の奥底で焦りがふつふつと湧き上がるのを感じる…


ただ冷静さは捨てない。

けれども身体能力でも技術でも勝てないのが現実。

予想外の何かを起こすしか無い。


「仕方ないか…」

その一言を切っ掛けに賭けに出る決意を固める。


俺はナイフを、シオンの顔面やや右側目掛けて投擲する。

同時にさっきよりも深く踏み込む。


「なるほど…やられた…」

そう呟いた彼女からは少しの驚きと諦めが感じられる。


シオンは狙いを察した上でその方向…

予想通り体を左側に捻りギリギリでナイフを避ける。


「その割には余裕そうじゃないか?」

俺はそう吐き捨てながら、膝蹴りを放った。


―――――――――――――――――――


「なるほど…やられた…」

何処かで搦手はあるだろうと予想していた。

(これは流石に避けれないか…)


「仕方ないか…」

私は思いっきり自分で出来る限り後ろに飛ぶ。


「あがっ!」


しかし、抵抗虚しく重たい一撃が腹に刺ささり吹き飛ばされる。


ドン…

だだっ広い地下室に鈍い音が響き渡る。


「ゲホゲホッ…」

(肺でもやったか…久しぶりだね。)


私は膝蹴りと壁に激突した衝撃で吐血する。


「やっぱりな、お前目ぇ悪いだろ?」

「代わりに魔力?魔法そのものがよく見えてんだろ?」


「私の目の事もバレてるのか…」

思わず驚きが漏れる。


「あぁ、三度見てようやくわかった」


「三度…あぁ初めて会った時と、風球(ウィンドボール)の時、さっきの連撃の時ですか…」


私の目は少し特別だ。

魔法を使ったり魔力を目に集めると青く光る。

そして光っている間は魔力の流れが良く見える。


だけどデメリットもある。

それが動体視力の低下や距離が掴みにくい事だ。


もちろんデメリットを克服する為に色々試した。

薬の調合をしたり、身体強化の魔法を研究したりもした。


でもダメだった…

だから私は目を良くするのを諦めて目を使わずに戦闘をする技術と魔法をできるだけ極めた。


「その通り、おかしいと思ったよ…ミラの才能は嫌という程知ってるからなぁ」

「あいつより魔法の扱いが上手いやつはそう居ない。」

「しかも、蒼い瞳。子供の頃聞いた?様な昔話に出てくる魔法使いの話によく似てる。」

「気がする…!」


「なるほどね…」

「隠すのは、結構自信あったんだけどなぁ…」


やっぱり彼は仲間に恵まれてる。

それに運もいい…


(いや違うか…過去の経験と観察眼…それこそが彼の実力の本質か。)


「さぁどうする?」

「お前は吹っ飛ばされた衝撃で満身創痍、しかも杖もない。」

「降参するか?」


彼はそう言いながらも一気にこちらとの距離を詰めてくる。


「ふふ…やる気満々じゃないの?!」

久しぶりの切迫した戦闘に血が騒ぐ。


「確かに、状況を見れば私は負けているのかもしれない。」

あぁ…これ以上はいけない。


「でもね?」

これは模擬戦なのだから…


「この程度で勝ちを確信なんて甘過ぎるんじゃない?!」

冷静さが消え行くのを感じる。


「勝負はここからでしょ…!」

消える冷静さと入れ替わるように高揚感が心を満たしていく。


「さぁ第2ラウンドと行こっか…!」

私はその言葉と共に全身に熱が巡るのを感じた。

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