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魔法使いとの戦い

「それにするの?」


木製のナイフをまじまじと見つめているとシオンが微笑みながら声をかけてきた。


「あぁ、これが良い。」

「それで…ルールはどうする?」


模擬戦と言っても3つ程主要なルールがある。

殺し以外なんでもありの死闘戦

アイテムや特定のエリアを守りながら戦う護衛戦

特定の環境を再現し生き延びた時間を競うサバイバル戦


どれにするかを決めないといけない。


「死闘戦、身体の欠損もしくはどちらかの投降でどうですか?」

「あぁ…腕の一二本、内蔵の一つや二つ程度であれば治せるので安心してもいいですよ。」


済ました顔でシオンが答える。

(これはかなり厳しい戦いになりそうだな…)


治癒魔法はアイテムによる回復と違い瀕死の重症でも体に負担をかけずに癒す事が出来るのが利点だがその分回復スピードは落ちるのが普通だ。


治癒魔法を扱える者は世界でもそこまで多くない上

その殆どが簡単な傷を癒すに留まり、かなり腕の経つ者でも切断された部位をくっ付ける程度だ。


一から欠損を治すとなればそれこそ勇者パーティーや国お抱えの宮廷治癒士と言った世界でもトップレベルの使い手ということになる。


そして攻撃魔法の才能もある可能性が高い。


(下手をすると治癒魔法だけでもアリス以上の使い手か…)

思わず笑みがこぼれ、力を試したい衝動に駆られる。

今の俺はリオ達(あいつら)とどれ程の差があるのか…


「良いな。ただ条件が足りない。」

「木製ナイフで人の体を欠損させるのは難しい。もしこれでそんな大怪我をする事があれば、模擬戦で留まらん」

「だから、どちらかの武器が相手の急所に当てたら勝ち、それでどうだ?」


「それもそうですね…」

口に手を当てながらシオンが答える。

「ではどちらかが降参、もしくは抵抗出来ない状態にした方が勝ちということで。」


「あぁ…!」


「それじゃあ早速始めましょう。」


「戦闘開始はこの音爆弾の破裂が合図で…」


彼女はそう言いながら懐から丸くて白い物体を取り出す。


「あぁ…わかった」

「手加減はしないからな?」


「ふふ…楽しみにしてますよ?」

「後…言い忘れていましたが、私戦闘中は性格が変わりますがびっくりしないでくださいね?」



そう言う彼女も少し楽しそうだ。

(性格が変わる…戦闘狂なのだろうか?人は見かけによらないな…)


そんな事を考えながら一言返す。

「…わかった。」


「それでは…はじめましょうか!」

そう言うと同時に彼女は天井に向かって音爆弾を投げた。


キーーーーーン


甲高い音が地下室に響き渡る。


戦闘開始


先手必勝

俺は右手にナイフを握り思い切り地面を蹴り抜く。

(近距離戦闘に持ち込み何もさせずに倒す…!)


強化(ブースト)!」

身体強化を加えながら一気に加速する。


対照的にシオンはバックステップで距離をとりながら杖を構える。


「まぁ…そう来ますよね…!」


(魔法を使われる前に一気に勝負を決める!)

魔法の発生の前に潰す。

それが対魔法使いにおける基本だ


普通の魔法使いであれば、身体強化を使った状態の俺であれば簡単に勝負を決められる。


俺は、最短距離で思い切りナイフを突き出す。

(取った…!)


しかしナイフが当たる直前…勝ちを想像した刹那。

えも知れぬ違和感に襲われる。


「チッ…!」


勢いを殺しながら咄嗟に腕で顔を覆う。


バン!


その音と同時に視界が闇に染まり耳鳴りに襲われる。


(やられた…)

一瞬で視界と聴覚を奪われる。

追撃を警戒しつつも考えを巡らせる。


あの瞬間、俺がその場所に辿り着いた時にはシオンの姿は無く代わりに火球(ファイアボール)が置かれていた。



(魔法の発生が恐ろしく速い?いや、違う少なくとも身体強化の魔法をかけてからは、魔力を感知できていない…つまり魔法を使ってない…)


魔力量には個人差があっても魔力の質には滅多に個人差が無い。


(魔法を使うタイミングに被せて魔法を使われると魔法の探知が難しくなるが…あの一瞬で…?)


普通身体強化とファイアボールでは使う魔力量に差があるせいで見落とさない。


初めての経験に戸惑う。


それを知ってか知らずか呑気な声が煙の奥から聞こえる。

「今のでノーダメか…」

「本来ならそこそこの怪我になるはずなんだけど…」

「いくら追放されたとは言え元勇者パーティーか…」


ゆっくりと晴れる黒煙の先で楽しそうに彼女笑う。

髪で目が隠れているのもあってまるで童話の悪役の様な雰囲気だ


「これならどう?」


彼女がそう言うと辺りにかなりの数の火球ファイアボールが展開される。

無詠唱な上、そこら辺の魔法使いよりも遥かに魔法の発動が速い。

しかもさっきと違い明らかに大きな火球。



「これは…まずいな」



ゴヒュウ



その1つが嫌な音をたてながら、かなりの速さで飛んでくる。


落ち着いて躱す。


しかし避けた先でまた1つ

それを避けるとまた1つ

息付く暇もなく火の玉が襲いかかって来る。


(避けれない程でも無いがまるで逃げる先を先読みしている様に飛んでくる)


(しかもこの数…)


「めんっどくせぇなぁ…!」



俺は飛んでくる火球ファイアボールを最小限の動きで、右に左に…はたまた後ろに、次々に避ける。


(1つ当たる分には大した怪我事にはならないだろうが、この様子だと恐らくはめ殺しされる…)


そうならないように確実に躱す。


(唯一の救いは新しい火球が作られていない事か…)

避け続ければ一旦攻撃が止む、その隙をつく。


(なら今は回避に徹する…!)


そんな事を考えつつ俺は、避け続け遂に、最後の一発を前にする。


「これが最後…」



慎重に、確実にそれを避ける。

(よし…今反撃を…!)


バン


背中に火球ファイアボールが直撃する。


「あっぃたぁ…!?」


最初の1発とは威力が段違い。

もし身体強化の魔法をかけていなければ燃やし尽くされるところだった。


(何が起こった!?)

俺は確かに最後の攻撃を避けた。

(最初とは違い俺は魔法を使っていない、であれば魔法を展開した時に既に…)


そこまで考えて1つの可能性に気が付く


「そうか…お前魔法の発動を途中で中断していたな?」


「正解…!」


魔法の発動には

1魔法陣の構築

2魔力の流し込み

3魔法の顕現

の3つの段階がある


魔力で察知しているのは2の段階だ。

つまり3を中断していれば魔法は顕現できず察知できない。


ただこれは普通出来ない。

行き場の失った魔力が暴走してしまう。


(魔法の練度が異次元だな…)


じぐじくと背中が痛み、辺りに肉が焦げる臭いが広がる。


「はぁ…しんどいな…」


(流石にこれはもう喰らいたくない…と言うか当たれば負けだな)


「降参でもするかい?」


シオンは距離を取って微笑し杖を構えながら、煽る様に話しかけてくる。


「はっ、まさか…ここらかだろう?」


そうは言った物のあれだけの数の魔法を連続で出したのにも関わらず疲れが見えない。


余程魔力の消費効率が良いのか魔力量が多いのか…


(ミラですら多少疲れそうな量なんだがな……)


「ふふ…そうだね、僕を楽しませてくれよ?」


俺は彼女が言い終わる前に全力で踏み込む。


「ははっ、落ち着きがないね!」


そう言うシオンはさっきと違い全く逃げない。


「…ッ!」


俺はギリギリで踏みとどまり全力で左に転ぶ。


その瞬間


ヒュッ


と言う音と共に地面からギャリギャリと言う音が響く。


横目で見ると風の塊が地面と激しくぶつかっている。


「おいおい…複属性か…」

(あれは当たれば一撃で終わるな…)


魔法には適性がある。


そして魔法使いはその適性に合わせて魔法を研究しその力を磨く。

大体は1人につき適性1つ。

中でも風属性の魔法は貴重で、他の魔法よりも火力が高い傾向にある。


(最初に俺の速度を一瞬上回ったのはその応用か…)


「勘がいいね」

「その通り、私の適性は炎だけじゃない。」

「風も属性も使える…」


「厄介な事で…」


(手の内をペラペラと…まだ手札は持っているか…)

(まぁそうでなくても簡単には近付け無いのだけど…)


「ふぅ…やるしか無いか」


俺は大きく息を吸い込み覚悟を決める。

そしてもう一度大きく踏み込む。


「フッ…!」


「また速攻?」

「他には何かないの?」


彼女はつまらなそうな顔で杖を構える。


「さぁ?」


もちろん無策ではない。

ただ確信もない。


ただこのままではジリ貧だ

やるしか無い。


そしてさっきと同じ距離まで詰めた時だった。


(ここだ…)


俺はそれを見て体をひねる。


「なっ?!」


先程まで俺がいた場所をヒュンと音を立てながら風球(ウィンドボール)が通り過ぎる。


「残念…!」


俺は既に彼女の懐に飛び込んでいた。

寸止めできる速さで、それでいて限りなく全力でナイフを両手で突き出す。


(取った…!)


刹那


「チッ…!」


シオンの舌打ちとカランと杖が落ちる音が聞こえる。

そしてヒュンっと言う音と共にシオンが吹っ飛んだ。

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