能力
「来る…!」
リオが叫んだと同時に緊張感が走る。
「…それじゃあ手筈通り頼む。」
懐から音爆弾を取り出し空中に高く放り投げると同時に金属音が炸裂する。
それを合図にリオを残して周囲に散開した。
作戦開始だ。
「来たか…遅かったじゃねぇか…?」
姿を現したそいつに僕は剣を向きながら構える。
ただ気の所為だろうか…さっきより力が増しているような気がする。
「フフッ…それは失礼。」
「ただ私を待っていた割には他の方々が見当たりませんが…」
「愛想をつかれ逃げられましたか?」
ザインは見透かしたような…そして射るような視線をこちらに向けてくる。
「はっ…な訳ねーだろ?」
「今仲間を呼びに行ってる途中だ…」
「すぐに大勢連れてもどってくるぜ?」
ハッタリだ。
誰も呼びに行ってなんか居ない。
本来ならそうしたい所だが戦力を少しでも減らすと一瞬で全滅するレベル。
いや1人減った所で大差無いかもしれないが少しでも生存率を上げたい。
「ほぅ…それは面白そうですねぇ?」
「おもちゃが増えるのは楽しみですよ?」
そう言いながら気持ちの悪い嫌な笑みをうかべる。
そしてそいつが手をかざすと空間が裂けそこから黒い剣を取り出した。
「は?」
それを見た瞬間
俺は思わずそんな声を上げてしまう。
何故ならそいつのその行動には魔力が感じられなかった。
本来魔法を使う場合魔力を使う。
つまりそいつは魔法を使ったということでは無いという事だ。
ならその力は何なのか…
俺には一つだけ心当たりがあった。
「なぁ…なんでお前が勇者の能力を使っているんだ?」
「おや?何も知らないのですか…?」
そいつは呆れたように呟く。
「まぁ…これから死ぬ相手に説明しても仕方無いですし…もう死んでもらいましょうか!」
そう言いながらやつは一瞬で距離を詰めてくる。
「チッ…!」
俺はやつに攻撃をされる前にその場から離れる。
ブン
風を切る音が響く。
「良いですねぇ…貴方の能力は素晴らしい!」
そう言いながらもう一歩踏み込んで来る。
「それは…見えてんだよ!」
予定通り。
僕は魔族が踏み込んだ先に剣を振るう。
本来なら完全な虚を突いたような攻撃。
「ほぅ…かなり使い込んでますねぇ?」
そう言いながら軽く剣を弾く。
「化け物め…!」
流れる様に追撃が飛んでくる。
鋭い一撃だ…
でもな?
それも見えてんだぜ?
俺は思い切り後ろに飛び何とか躱す。
「ふぅ…あっぶねぇ…」
「素晴らしい!今のを良く躱せましたねぇ!」
「はっ!お前の攻撃は全部見えてんだよ!」
「だからお前の攻撃じゃ僕は殺せない!」
僕はそいつを挑発する。
「ははっ!面白いことを言いますねぇ…全部貴方の能力のお陰でしょう?」
「その見通す目の!」
そいつはさぞ楽しそうにその事実を口にする
「さぁどうかな?」
一応否定しておく。
それにしてもここまでバレているとはね…
僕の能力
それは未来視だ。
ただ普段は数十秒程の未来しか見えない。
例外として夢で見た事が現実になる予知夢だけはごく稀に見る事ができ先の未来がわかる。
ただ強力な能力にはデメリットが付き物…
僕も例外じゃない。
使い過ぎると暫くは寝たきりになってしまう程体力が削られてしまう。
長期戦になればなるほど不利になる様なデメリットだ。
その上予知夢の結果を除き他の方法で見た未来は基本的に僕には変えられない。
つまり自身を除いた他の人の行動のみを見る必要がある。
だからこそここぞと言う時にしか使えないのだが今は会話以外ではフルで使い続けている。
「始勇祭出れるかなぁ…」
思わずそんな事を口に出してしまう。
「おやおや…今際の際だと言うのに随分余裕ですねぇ…」
そう言いながら再びとんでもない速さで距離を詰めてくる。
だがもちろんこれも知っている。
俺は全力で後ろに避ける。
しかしそれに対して鋭い突きが飛んでくる。
今度は僅かに体を逸らして避ける。
「本当にその避け方でよかったのですか?」
やつはそんなことを言いながら次々に攻撃を繰り出してくる。
正直接近させ過ぎるのは良くない。
いくら未来が見えても手遅れになる場合がある。
「十分だよ!」
リスク無しでは時間稼ぎすらできない。
俺はその追撃を避けるためにどんどん後ろに後退していく。
「チィッ?!」
俺は何かに躓き尻もちをついてしまう。
致命的な状況に顔を歪めてしまう。
しかもその拍子に剣がてから離れる。
最悪の状況だ
「チェックメイト…随分頑張りましたがこれで終わりです!」
その瞬間やつの勝ち誇った声が聞こえてくる。
そりゃそうだ…
目の前の敵はいくら未来が見えるだけでその未来を回避するのはそいつ自身。
そしてその術が無いなら勝ちだ。
(普通ならそう思うよな。)
(でもね?勝ちを確信した瞬間こそが最大のピンチなんだよ?)
そしてとうとう黒い剣が目の前まで迫る
「ここだ…!」
僕はそれに合わせて右に避ける。
「いてぇなぁ…」
鮮血が飛び散る。
完璧には避けきれず左腕が飛ばされてしまった。
だが単に腕を飛ばされた訳じゃない。
これも作戦のうちで木の上でガウスを待機させていた。
そして気を見て不意打ちさせたのだ。
だから魔族にもそこそこのダメージが入っている。
はずだった…
「ふむ…なるほど作戦自体は悪くは無い…」
「ただ威力が足りなさすぎます。」
「ハハッ…硬すぎるだろ…!」
そいつは多少背中を裂かれた程度でピンピンしていた。
その後ろでガウスが悔しそうな顔をしていた…
「なにかあるとは思っていましたがその切り札もこの程度…」
「非常に残念です…!」
そう言いながら奴はガウスに蹴りを入れる。
「がァ…」
ガウスは木に叩きつけられると同時に吐血し動かない…
「ガウス!」
反応がない。
今ので意識を失ったらしい。
かなりまずい。
「さて…残りはあなたです。」
そう言いながら剣を大きく振りかぶる。
誰から見ても絶体絶命の状況。
相手は今までに無いくらい油断しているだろうなぁ。
(ならこれが最後のチャンスか…)
僕は目を瞑り残った腕でできるだけ顔を覆う。
その直後背後から声が響く
『『バーニングストライク!』』
その瞬間魔族にそれが炸裂する。
それは4段階目の炎魔法。
言うなら超級に分類される魔法。
今までとは比にならないレベルの火力だった。
「チッ…」
流石にザインと言う魔族から舌打ちが聞こえてくる。
ただ至近距離にいた僕も無事じゃ済まない…全身がとんでもない熱に包まれる。
「あ"あ"ぁぁ…!」
声にならない叫びと共に僕の意識は一瞬でなくなってしまった。
「はぁはぁ…リオにぃ!」
そこには丸焦げになったリオが居た。
できるだけ彼から遠い場所に被弾させた。
それでも人の身で重症は免れない。
だから私は嫌だったんだ…
「アリス2人をお願い!」
アリスに2人の回収を頼む。
私はリオにぃの腕を回収しながらその先に居るであろう魔族に向けて無詠唱で炎魔法を連発する。
私は囮だ。
できるだけ魔族の気を引きながらアリスと離れるように展開する。
「ミラ!さっきのをもう一度!」
これはブラフ、撤退の合図だ。
私は一気に離脱する。
正直魔族がどうなったかは分からない。
ただ死んでいないことは魔力の反応から明らかだった。




