一握りの希望を授かりて……
アルマジェナが絶望の最中、突如として目の前に緑色に光る球体は現れ……。
ここはカランの森の奥。アルマジェナはラルクに婚約破棄された挙句、森に置き去りにされどうしたらいいのか分からず絶望し泣き崩れていた。
(ああ、私はこのままこの森から出られないのでしょうか?……ここで朽ち果てて、)
そう思いながら木に寄りかかり、いつも読んでいるロマンス小説を徐に懐から取り出す。しかし読む気力すらなく、本を抱きかかえ涙を浮かべ虚ろな目をして諦めかける。
泣き疲れウトウトとし始めたその時、アルマジェナの眼前にホワンと発光した小さな球体が現れた。
朦朧とする意識の中、目の前に現れた光に気づき、やっとの思いで重たい瞼を開く。
「……綺麗。ですが……この光は、いったい?」
その光を触ろうとするが掴めず、アルマジェナの手をすり抜け眼前で静止した。すると、ホワンホワンと光が優しく点滅する。
「わぁ、これは何かしら?」
そう思い緑色の光球を触ろうとしたが、アルマジェナの右手をスルリとすり抜け左肩に乗り静止した。その緑色の光はアルマジェナに語りかけるように優しく点滅する。
“アルマジェナ。聞こえますか?”
そう声が聞こえ、アルマジェナは周りを見回す。
「……誰ですの?」
そう言い探すも誰もいない。
「いない……声がしたと思ったのですが」
アルマジェナは幻聴だと思い、探すのを諦め下を向き溜め息をつく。
(ハァ〜、ここには誰もいるわけがないのに……聞こえるわけもない声が……)
“いいえ、私は貴女の傍にいますよ”
そう聞こえたと同時に、緑色の光球がフワフワと肩から浮き上がりアルマジェナの目の前まできた。
「……!?」
アルマジェナはまさかと思い、眼前の緑色の光球に視線を向ける。
「……もしかして、私に話しかけたのはあなたですの?」
“ええ、そうです”
その緑色の光球はアルマジェナに優しくそう語りかけた。
「あなたは何者です?」
“私はこの森の精霊、フォーレスです”
「まぁ、森の精霊なのですね。でもなぜ私に……」
アルマジェナが全てを言い切る前に、フォーレスは淡々と話を始める。
そう、フォーレスは女神からの命でアルマジェナの元へ来たのだ。
女神はアルマジェナがあまりにも不憫と思い、フォーレスにとある物を持たせることを命じた。それをアルマジェナに授けよと。
それはアルマジェナがこれから一人で生きて行くために必要なものである。
フォーレスは女神の言葉を伝え終えると、アルマジェナの目の前に、持つ部分が青い一本の筆が宙に浮いていた。
「……筆?」
“それは女神様から貴女への贈り物です”
そう言われ、アルマジェナはその筆を手に取る。
「でもなぜ、私なんかのために、ここまでしてくれるのですの?」
“それは、貴女があまりにも不憫に思えたから、と……”
「そうなのですね。私などのために……本当に、感謝しかありません」
そう思い涙を浮かべアルマジェナは、感謝し手を合わせると軽く頭を下げた。
するとフォーレスは、アルマジェナにこの筆の使い方を教えたあと別れを告げ姿を消す。
その後アルマジェナは、貰った筆を見つめる。
「この筆が、私の願いを叶えてくれる。そう言っていました。あと優しく扱うようにとも。……最初のお願いは何にしたら良いのでしょうか?」
そう考えると安心したせいか、急にお腹がすいてきた。
「そうですわ。何か美味しいものでもお願いしてみようかしら」
筆を目の前に構え、心の中で「美味しいパンをお願いします」とお願いする。するとアルマジェナが持つ筆が勝手に動き始めた。
アルマジェナは筆を持ちながら宙にパンを描く。それは、まるで本物と見間違うほど精巧に描かれている。
「うわぁ〜、美味しそうなパン。ですが、これをどうやって食べれば良いのかしら?」
そう思いながら、宙に描かれたパンにそっと右手で触れた。するとパッと眩く光が現れ弾ける。アルマジェナは、あまりの眩しさに目を逸らした。
「ま、眩しい!? いったい何が起きたというの?」
そう言いながら恐る恐るパンに視線を向けると、そこには焼きたてのパンが宙に浮いている。
「これは……いい匂い。間違いなく、本物のパンですわ。それも焼きたての、」
それを両手で取ると目を輝かせながらパンを見つめた。
「食べるのが勿体無いけれど、眺めていても仕方ありませんし」
そう思い、パンを半分にしてパクリと食べる。それと同時に、目を輝かせた。
「なんて美味しいのかしら。こんなに美味しいパンは初めてですわ。これが本当に描かれたものなんて信じられません」
食べかけのパンを左手で持ったまま、右手で筆を持ち見つめる。
「この筆があれば欲しいものが手に入りますわ」
そう思い、筆にキスをした。すると筆が微かに赤くなる。しかし、アルマジェナはそれに気づかなかった。
その後、筆を見ながら、次は何をお願いしようかと考える。今日できるお願いはあと六つだ。
「そうですわ。もう暗くなり風も吹いてきましたし」
そう考えがまとまると、筆を持ち「私が住める家をお願いします」と願った。すると、筆がアルマジェナの手からスルリと離れ宙に浮き家を描き始める。
そして筆は、一軒の平屋建てを描き切った。その後、その家は眩く光ったあと、本物へと変化する。
「……これって一応は家ですのよね。見たことのない造りですわ。中はどうなっているのかしら?」
そう思い、立ち上がって家の方に歩み寄った。そして扉を開けると中に入る。
「……」と絶句した。
そうそこには何もなく、ただの箱のようだったからだ。それを見たアルマジェナはガクッと肩を落とした。
「どうしましょう。これではただの箱ですわ」
そう思い悩んだ。
そう思っていると、ふと手に持っている筆が視界に入る。
「そういえばまだ希望は残っていましたわ」
目を輝かせ、筆をギュッと握り締めた。その後、魔法石によるランプ、ベッド、暖炉、テーブル、椅子、残りの五つのお願いをそれらで使い果たした。
「ちょっとだけ不満ですが。仕方ありませんわよね。寝る所があるだけでも良しとしないとバチが当たりますもの」
そう思い、ベッドに歩み寄る。
そしてその後ベッドに横たわり、筆を枕元に置いて眠りにつく。__その時、なぜか筆は赤く染まっていたのだった。
読んで頂きありがとうございますヽ(^o^)
『これで生きる希望が持てますわ。それもこれもこの筆をくれた女神様のおかげです……(*´ω`pq゛』…byアルマジェナ
『……⸝⸝⸝♡』…by筆
と、いう事で……∩^ω^∩
では、次話もよろしくお願いします(*^▽^*)
★★★★★
次回の更新は不定期ととなりますが時間は16時に投稿しますのでよろしくお願いします。