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朧 OBORO  作者: 悠良木慶太
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屋根を叩く雨の音が反響している。家は屋根裏まで吹き抜ける小屋のような造りになっていて、梁に渡した板で二階の床が出来ている。同様に三階に該当する回廊のような床があり、養蚕(ようさん)をしているのか、三階の床上に梁から吊り下げてある箱型の(まぶし)が幾つも見える。各階は梯子で上がるようになっていて三階から上は暗くて見えない。二階にはガラス板をはめ込んだだけの窓が二つありガタガタと音を立てている。燻されて黒く照り輝いた木材で組まれた手摺があり、寝床や戸棚が見え、梁からつるされた裸電球が点いていた。森の中から見えたのはこの電球の明かりだったようである。一階には広い土間の端に水場があり、二連のかまどがある。かまどのある壁にランプが二つあり一階の明かりはこれだけである。石油ストーブを挟んでかまどの反対側には、いろいろな道具や石油タンクが並べてあり、二階に上がるための梯子が下りている部分に、靴を脱いで上がる床があり框で仕切られている。

脊山が床の道具箱からキャンドルランタンを出し、火をつけてストーブ上の吊り下げ金物に引っ掛けた。薄暗かった部屋がほのかに明るくなる。

二人は乾いた服に着替え、濡れた服を、草を干すために渡したロープに引っ掛け椅子に腰かけた。嵐のため気温が急激に下がったのでストーブに近寄りアウターのジャケットを肩にかけて暖をとる。脊山が干し草を幾つかつまんできて指先でもみ潰し、急須に入れ、ストーブに乗せていたやかんからお湯を注ぎお茶を入れてくれた。礼を言って受け取り一口飲む。渋みが強く苦い液体が喉を通り抜けた後、ほのかに甘い後味がした。胃まで落ちると体温が上がるのを感じる。

「このお茶。何が入っているんですか?」聡史が聞く。

「柿の葉と、クマザサにドクダミ、スギナが少々とイグサかな。温まったろ。」

脊山も飲み、渋い顔をして笑った。

激しい風が建物を揺らし、窓を豪雨が叩く。古い建物にもかかわらず雨漏りは無い。

「あの・・・脊山さん。伯父から東丹沢で山住をしながら生活する人と交流を持ったと聞きました。よかったら、父の発見時の事を教えていただけませんか。」

翔がカップと両手に持ち脊山を見ながら聞く。

言われた脊山は真っ暗な屋根裏を覗くようにして考えてから口を開いた。

「和尚にも聞かれたことなんだが。一応、当時の警察官から証言を止められていたんだよ。まあ、和尚にも話しちゃったし、その警察官も君が聞きに来ることがあった時には伝えて欲しいと言われたから、今を持って解禁だな。」

脊山はもう一口お茶を飲み、暗い天井を見ながら語り出した。


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