表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朧 OBORO  作者: 悠良木慶太
35/125

35

会話を終え、診察室に三人は入った。先ず、翔が診察台に座り服の上から背中を触られる。両肩に楓が触れると、肩甲骨が開き体内で何かが(うごめ)く感覚があった。その何かが体中を巡り、また肩に戻ると違和感は無くなった。

「うん。元気になってるわね。感覚分かった?」楓に聞かれ、ありのままを答えた。

「大きな危険を感じたら、頭に浮かんだその子の名前を呼ぶのよ。助けてくれるから。」

『楓さんは誰かに教わってやっているのではないから、表現方法が独特なんです。』深山の話しに出て来た叔父の史隆が宗麟に話したという内容を思い出し、そういう比喩的な事だと理解した。

代わって聡史が(うつぶ)せになり腕を上げて力を抜くように言われた。言われるままの姿勢を造り、身を任せる。楓が両足を持ち、(かかと)を合わせて開閉する。聡史の大きな足を事も無げに楓の小さな手が動いて行く。左足の(くるぶし)の下に親指を差し込むと聡史の右腕が浮かんだ。暫くの間その状態が続き右腕が下がると楓は指を離し、「曲線」「中瀆(ちゅうとう)」「(よう)()」と動き「命門」を押さえ「ほい!」と言って指を離した。「えい!」と言って、聡史の左足を両手で持ちあげる。海老反りのような姿勢、プロレスのハーフボストンクラブをかけられている状態になった。「どう?」と言われた聡史は「あ、気持ちいいです。違和感なくなりました。指先の痺れも無いです。」と言った。さらに右足も同様にしたが何の痛みも感じなかった。仰向けになり前屈をすると信じられないくらい腰が伸びた。

「あとは、癖になっている腰をかばう歩き方を意識して直していけば筋肉が着き直すよ。心配なら鍼や電気治療でほぐしながらリハビリ療法で矯正すれば完璧。またバスケットボール出来るようになるよ。今後の君次第。」

「本当ですか?できますか?バスケ。」また聡史の目から涙がこぼれている。

「翔君も同じころには違和感が完全に無くなると思うよ。二人で頑張ってね。」

窓の外、オリーブの木にメジロの群れがやって来て枝にとまり、羽を休めてさえずっていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ