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朧 OBORO  作者: 悠良木慶太
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「キーワード、なんて入れて検索したの?」父親の記事を見たいと思った。

「んとな、最初はキャンプ初心者で、神奈川県。そこで海やらキャンプ場が沢山出てきたから、山って入れたんだ。そこに槍穂岳が出て、改めて槍穂岳、登山、キャンプって打ち直すと登山ルートが幾つも紹介されて、愛好家の人達の体験談や画像が見えて、興味が沸いたんだ。そのずうっと下の方に、登山道整備事業の紹介記事に整備前の事故についての記事が出てきたんだ。」

聞きながら翔が入力する。槍穂岳の登山についてのウェブサイトが沢山出てきている。聡史の言う通り「登山道整備事業」について、神奈川県のページがあった。しかしどこにも事故についての記事はない。聡史も隣に来て見ている。

「そうなんだよ。俺も何度も検索し直したんだけれど、見つからないんだ。内容分かっていたからダイレクトに槍穂岳、事故とか、山岳事故とか入れてみたんだけど、普通に遭難件数や傾向、滑落危険地域は出るんだけど、翔の事故についてはあの時に見たのが最後だった。不思議なんだよ。」

その後も検索したが結局見つからずに終わった。過去にも伯父や俊之と当時の記事を探した事があったが、神奈川地方紙に「槍穂岳。軽装で入山の親子、熊に襲われ父親死亡」の見出しで薄い記事があるだけだった。オカルト系雑誌に「山にまつわる不思議な出来事」のコーナーで槍穂岳と神社での不思議体験の記事があり、隆一の名前は出ていなかったが「異次元に飛ばされて息子だけ生還」といった茶化し記事が載せられ、憤慨した記憶がある。都市伝説界隈では、丹沢山地にある不思議な話の中に、槍穂岳周辺の神隠しなどの伝承も数多くあり、題材には事欠かない。

「無いか。当時の記事を探しているんだけど見つからないんだよ。山で見つけられて意識不明で入院した後、意識戻ってから沢山の大人が病室に押し寄せて大変だった覚えがあるんだけど大した記事にならなかったみたいで、警察からの公式記録しか見たことない。」

検索していたタブレットを鞄に戻そうとしたところ、聡史が登山ルートを考えようと提案して来た。ウェブサイトに戻り登山マップを見る。

登山口のバス停には車返しの広いバスロータリーがあり、公衆トイレが完備され小さな売店の中に、入山者用の登録タッチパネルが整備されている。ここで入山者の個人情報と予定を登録する。登録なく入山する人も多いが、テント泊や縦走するベテランの登山者は代表者が同行人数を入力し、安全に下山したときは入力時に取り決めた暗証番号でスマホから登録解除ができる仕組みができている。サイトは神奈川県が管理していて、予定日程を過ぎて解除されない者には県から安全確認の連絡が入ることになっていた。バスロータリーの登山口から少し離れたところに県が運営している砂利敷の無料駐車場があり、普通車のみ15台の駐車スペースがある。人気のある神社参道は売店横にある朱色の鳥居をくぐり、整備されたコンクリートで舗装された坂道と階段を登り、等間隔で照明がある。沿道には季節によってさまざまな花が咲き、夏の季節には紫陽花が見頃のようで写真が幾つも上がっていた。他のルートを見始めると、時計が14時を告げたためトレイを戻し大学病院へ向かう。


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