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クロエの魔導書 ナギサと魔導書の出会い篇  作者: 雪見
1章 魔導書との出会いと始まり
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3頁 気まぐれ魔導士の魔法レッスン

 魔導書と一口に言っても、その種類は何千何万とある。


 一流の魔導士や、世界に数人しかいない魔女が書いた魔導書もあるし、最近では魔法学を研究している企業も出していたりする。


 その中で、最高峰と言ってもいいのが、この『クロエの魔導書』である。


 習得はかなりの難易度だが、魔術の数もそこらの魔導書より遥かに多く、また威力、効果も絶大という、まさに究極の魔導書。


 そんな魔導書を、正真正銘の本物の『クロエの魔導書』を、私は見つけてしまったのである。



 …………夢じゃないよね?これ?



 未だに信じることが出来ない。あの伝説の魔導書が、今私の手元にある事が、未だに信じられない。



 しかし、私は魔法使いとしてはまだまだ未熟なので魔導書を使うためにこれから修行を積んでいかなければならない。


 その修行が、今日から始まるのである。



「んー…………」


 日曜日の朝、今日も昨日と同じく休日なのに早起きすることが出来た。


 このまま平日も早起き出来ればいいんだけどなぁ……そこんとこどうにかなりませんかねわたしの身体さん。


 体をのばしゆっくりとベッドから出る。


 窓の外を眺める。今日もいい天気だなぁ。



 とりあえず適当に朝食を食べ、家を出る。


 流石に日曜日の朝なので、昨日ほど人はいなかった。


 市街地を自転車で駆け抜ける。ここからは昨日と同じルートなのでカットしますね。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 先生の家に辿り着いたのは数十分後の事だった。


 2日連続のこの距離の自転車はきついわ。



 通学は基本的に徒歩だが、距離的に自転車に変えるのもありかもしれない。

 なんで今は徒歩なのかって?そりゃあ自転車のメンテがめんどくさかったから。以上。



 家の前の呼び鈴を鳴らす。……が、当然反応はない。


 ドアノブに手をかけ回そうと……したが、ガチャっという音が鳴った。

 珍しく鍵がかかっているようだ。


 まだ朝の10時、しかも日曜日なので、寝てても不思議ではない。


 とりあえず待ってみるか……



 家の壁に寄りかかって座り、待つこと2時間。


 ……2時間も経っていた。途中私も寝たぞ。


 12時になっても先生たちが起きた気配が全くしない。まあ休みだから仕方ないとはいえ。


 さすがにこれ以上待つとこのまま1日終わるとかありえなくもない。先生は起きない時は本当に起きない。


 叩き起すしかないか……



「音魔法『サイレン』!」


 この魔法はその名の通り馬鹿みたいに大きな音を出すだけの魔法。威嚇にはちょうどいい。

 この魔法は手を叩くことで発動する。


「せーのっ!」


 バァン!!!という風船が割れるような音が鳴った。サイレンと言う割には音がしょぼい。


 それでもまあ近くにいる私が下手すれば鼓膜破れるぐらいにはうるさい。魔法名「バルーンブレイク」とかにしない?さすがにダサいか。


「……んあ〜〜……」


 ベッドから落ちたような音ともに、先生の声が聞こえた。


 そして数秒後、先生が玄関のドアから出てきた。


「んあ、ナギサ。おはよー」


「おはようございます、先生。もうお昼ですよ」


「え〜マジで〜」


 寝起きだからか気の抜けた声で先生は話す。


「あっそうだ、魔法の練習だったね〜、準備するから待ってて〜」


 そう言いながら先生は家の中に戻って行った。



 数分後。


「よし!お昼も食べたし早速やっていくか!」


 外に出た先生が元気よく言った。


 寝起きからものの数十分でえらい変わりようだ。


 そして隣には、黒いローブを着たまだ眠そうなレールさんがいた。


「……とりあえず、まずは体力強化ですね……人間の魔力は体力にも依存するので…」


 声まで眠そうなレールさんがそう言った。


「まあ体力強化っていっても、私もあまり得意じゃないので……無難にランニングから始めてみましょうか」


「どこからどこまで走りますか?」


「うーん……とりあえずミラルの市街地まで行って帰ってくるでいいですかね?」


 こっから!?あそこまで!?


「ここからだと約1.5kmぐらいなので、往復で3kmですね」


「うへぇ……しんどいですね」


 思わず心の声が漏れてしまった。


「これでも世の中の魔導士さんの修行に比べたら足りないぐらいですよ。さあ、行きましょうか」


 そういいつつレールさんは黒いローブを脱いだ。ローブの下にはジャージを着ていて、明らかに運動態勢だった。


「行きましょうか……って、レールさんもついてくるんですか?」


「たまには体を動かさないと、です」


「へ、へえ……」


 とても今まで引きこもってた人とは思えない発言。


「ではナギサさん、準備はよろしいですか?」


「え、あ、はい、いつでも」


 そしてレールさんは、走る体勢になり。


「ドン!」


 という掛け声とともに、走り出した。


「えっちょっ待っ……速っ!!!!」


 私の自転車より少し速い速度で、レールさんは走り出した。


 あれ?あの人本当に引きこもり?????


「ま、待ってくださいー!!!!!!」


 私も慌てて走り出した。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「はぁ……はぁ…………」


 コースを一周する頃にはもう呼吸がまともに出来ず、立ち上がることも出来ないくらい足が痛くなっていた。


「久々に走りましたが疲れましたね……速度を出しすぎました」


 家の壁にもたれかかったレールさんが息を切らしながら言った。


「いや……レールさん……速すぎませんかね…………」


「あー……これ、実は身体増強魔法のおかげなんですよ」


「は?????」


「私本来には走る体力はないので、魔法で無理やり私の体を走らせたんですよ」


「な……なるほど……」


 疲れすぎて受け答えすらまともに出来ない。


「まあでも、いきなりこんな距離を走るのはあまりにも無謀なので次からは少しづつ距離を伸ばしていきましょうか」


「マジでなんだったんですかこの時間」


 思わずツッコミが声に出てしまった。


「さてと、体力面は後々やるとして、次はナギサさんの魔法がどんなものか見せてくださいね」


「そ、その前に水くれません……?」



 500mlペットボトル2本分の水を飲み干したところで。


「では、そこにカカシを用意したので、軽く痛めつけてみてください」


 軽く痛めつけるって……。


 家の敷地から少し離れ、レールさんはカカシを召喚した。なんでカカシなんですか。


「家からは離れてるので、思いっきりやってもらって大丈夫ですよ」


「じ、じゃあ遠慮なく」


 カカシといえば燃えやすいはず。


「火炎魔法『フレイラ』!!!」


 手をカカシに向け、火炎の弾を放った。


 ものの数秒で火炎弾はカカシに当たった。だが、カカシはなんともないようだ。


「あれ?燃えてない?」


「やっぱり。学校で教えられているのは火力が最小限まで抑えられた魔法だから、この『魔法のカカシ』は燃えなかったんです。」


「『魔法のカカシ』?」


「そう、このカカシはその辺の脆いカカシと違って、ある程度の魔法には耐性があります。ナギサさんが放った『フレイラ』は、今言ったように火力が最小限まで抑えられています。」


「え?そうなんですか?」


「いくら魔法を教える学校でもその魔法で事故を起こされたらたまったもんじゃないですからね。でも、火力が最小限まで抑えられているとはいえ、すこし魔力を加えたら──」


 そういいレールさんは、私の右手に触れた。


 触れられた右手は、少し光っているように見えた。


「はい、これで少しは火力が上がってるはずです。もう一度、あのカカシに向かって『フレイラ』を放ってみてください」


「は、はい。」


 さっきと同じように右手をカカシに向けた。


「『フレイラ』!」


 右手から放たれた火炎弾は、先程より少し火が強いように見えた。


 そして、火炎弾がカカシに当たると共に、カカシは燃え始めた。


「す、すごい……」


「これを、ナギサさん自身で出来るようになれば、いずれ『クロエの魔導書』の魔法術式も使えるようになると思います。」


 レールさんは微笑みながら私に言った。


「魔力を……」


「とにかくまずは、ナギサさんの魔力を上げることからですね。さっきみたいに運動したり、あとは私考案のトレーニングを続ければ自ずと魔力は付いてくると思いますよ」


 すごい……さすがは魔導士……


「継続は力なり、ですね」


「そうです。ナギサさん、私と一緒に頑張りましょう!」


「はい!」



 そこから、私の2週間に渡るトレーニングが始まった。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 その少し前、日が暮れた頃。


「見えた?」


「いや」


 とある廃ビルの屋上。遠くにはミラルの夜景を眺めることが出来る。


「やっぱ見えないかー」


 2人の男は、双眼鏡越しにミラルの街を眺めていた。


「ほんとにこんな所にあんの?」


「あるはずなんだけどねー」


「適当かよ……足で探すこっちの身にもなって欲しいね」


「ごめんなあ、お前の友達全く動かなくて」


「全くだよ」


 双眼鏡を構えたまま、2人は会話する。


「てかミラルってお前の故郷じゃねえの?なんでお前がここのこと全く知らねえんだよ」


「俺がいた頃と地理が変わってるからな……そりゃ知らないに決まってるだろう」


「あー、12年前だっけ?そりゃあ変わってるし覚えてないわな」


「だから、アル。今回は君にこの件を片付けて欲しいんだ。あまりあの国には近づきたくないからね」


「適当なこと言いやがって。まあいいけどよ、お前の事情知ってるの俺だけだし」


 アルと呼ばれた黒いローブを着た背が高い男は、双眼鏡を下ろすとフードを取った。


「それじゃあ行ってきますかねー。俺がいない間に余計なことするんじゃねえぞ?」


 アルはビルの細いフェンスの上に飛び乗った。


「俺を誰だと思ってるんだい?もう()()()も生きてるこの俺を」


「あーはいはいそういうのいいんで。んじゃ、行ってくるわ」


 そう言いアルという男は地上20階建てのビルの上から飛び降りた。


「無茶しやがって……」


 しかし、もう一人の男がビルの下を覗いた時には、もう既にアルの姿はなかった。


「魔法、ねえ……」


 その男は踵を返し、ビルの階段へと向かった。


「そんなものがなければ、俺は今こうなってないのにな」


 誰にも聞かれない独り言をこぼし、男は階段を降りていった。



 ナギサの運命が動くのは、少し先のことである。

火炎魔法って結局何に使うんでしょうね?目玉焼きを焼くのに使うんですかね?

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