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クロエの魔導書 ナギサと魔導書の出会い篇  作者: 雪見
1章 魔導書との出会いと始まり
2/9

1頁 「クロエの魔導書」と魔法使いの日常

 目覚まし時計のジリリリリ………という音がうっすらと聞こえた。


 部屋の窓の外から、太陽の光が差す。


 気持ちのいい、朝。


 めちゃくちゃに眠いことを除いては。



 ………眠い。眠すぎる。


 今日は月曜日なので学校だ。だけどまだ眠いからあと少し……もう少し寝させて………



 ん?学校?月曜日?


 目を擦りながらゆっくりと身体を起こし、ベッドの隣にある小さい机の上に置いてある眼鏡をかけ、その隣にある目覚まし時計を見る。


 8時。


 えーっと。


 いつも起きるのは7時半。今は8時。


 起床時間から30分も過ぎている。


 要するに、寝坊だ。


「いや、どうすんだよこれ」


 毛布を投げ、急いで身支度をする。


 新学期の2日目から遅刻はさすがにまずい。今から出ればもしかしたら間に合うかもしれない。いや、始業が20分だしギリギリか……?


 昨日買っておいたパンを急いで食べ、そのまま外に出た。


 制服が乱れているかもしれないが、今はそんなことを気にしている余裕はない。


 とにかく急いで学校に行かないと。



 簡単に自己紹介。私は魔法使い見習いのナギサ。

 絶賛遅刻中の17歳!てへ☆


 ……魔法少女的なノリを想像したがこれはキツい。なんなんだこれは。


 私は今言った通り魔法使い見習いだ。なんで見習いなのかって?そりゃまだ修行が足りないから。魔法習ったの13の時だし。


 ちなみに今私が向かっている学校が、「私立クロエ魔法学校」。昔いた「ハズキ・クロエ」という魔法使いが作った学校らしい。


 魔法使いになりたいのも、この「ハズキ・クロエ」への憧れ。あと、母さんの影響もある。母さんも凄腕の魔導士なのだ。


 制服に入っている懐中時計を見てみる。8時15分。このペースだと余裕で間に合わない。やばい。


 魔法使いといえば、普通はほうきで空を飛ぶ魔法使いを思い浮かべる人がいると思う。しかし、それはあくまで空想の話。この世界では少なくともほうきで空を飛ぶ人なんて見たことがない。

 この話も空想の話ということはさておいて。


 私の住んでいる「ミラル王国」の市街地は、今日も多くの人が行き交っている。

 平日なので仕事に行く人が主だろう。


 ここミラル王国は、数十年で急速に発展した国だ。市街地にはビルが建ち並び、車が通り、電車も通っている。まさに大都市、と言った感じだろうか。私が読んでいる小説にもこんなところあったな。


 その市街地を走り抜けていく。すれ違う人に当たりそうになりながらも走る。


 やばい。急がないと。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 始業の鐘が遠くからでも聞こえた。


 無事に学校には着いた。……が、既に時刻は8時30分。10分遅刻してしまった。


 まあ今日は良い方だろう。酷い時は1時間も遅刻することあるし。


 正門から入り、校舎の中へと入っていく。


 ここ「私立クロエ魔法学校」は、そこらの学校とは違って敷地面積がかなり広い。下手なショッピングモールよりも広い。


 また義務教育という訳でもなく専門学校、という扱いになるらしい。そこら辺はややこしくてわかんないや。


 いつもの教室へと向かっていく。もう既に1限目が始まっている時間なので廊下を歩いていても教師の声が聞こえてくる。


 そして、いつもの教室前へと着いた。


 あ待って。今日の1限数学じゃん。

 中から聞こえてくる声で察した。あの教師苦手なんだよな……


 教室の後ろから、ゆっくりと扉を開けほふく前進で入り込む。


 これならバレないだろ───


「あれ?ナギサじゃん」


 あっさりバレた。1番後ろの席にユイがいたの完全に忘れてた。あるよね、新学期特有の席順忘れる問題。


「こら!ナギサ、また遅刻か!何度やれば気が済むんだ!!」


「さ、さーせん……」


 クラスメイトの皆が笑う。


 いやまあ、いつもの光景なんで慣れてますけどね。

 さすがにそろそろ生活リズム改善しないとな……


 私の席はユイの隣だった。昨日の席替え思いっきり寝てたからね仕方ないね。


 とりあえず席に座り数学の教科書を開く。うう、もう既に頭が痛い。



 魔法学校とはいえ、完全に魔法の勉強だけをする、という訳では無い。


 普通科目5教科、体育などの科目3科目に加え、専門の授業として魔法学が入る、というシステムだ。正直魔法学以外全く興味ないんですけどね。


 興味が無い授業は寝ることがほとんど。おかげで授業の内容は何も入ってこない。テストで毎回ギリギリ赤点回避してるし大丈夫でしょ。多分。



 4限までを適当に寝てやり過ごし、午前中の授業が終わった。遅刻に居眠り、不良なのか私は。


 昼休みだが、いつも通り特にやることはないので昨日のうちに作っておいた昼食を食べ、即座に図書室へと向かった。


 この一文で大抵の方はお察しのことかと思いますが私、ぼっちなのです。そうです。


 唯一友人と呼べるのも、私の隣の席のユイのみ。あまり他人と関わるのが苦手な私にとっては友達作りとかしんどいんですよね。


 そんなユイだが、クラスの中では結構人気らしい。特に男子には。


 しょっちゅう告白とかされてるし。まあ全部断ってるらしいけど。メンタル強すぎんか。



 そんな訳で基本学校に居る時はほとんど一人でいることが多い。ユイとも授業中とか下校の時とかに話す程度だし。


 そうして毎日のようにぼっちな私は、昼休みをほとんど図書室で過ごす。



 図書室に入るとまず大きな本棚が目に入ってくる。2フロア分吹き抜けで、本棚も天井まで届くくらいの大きさだ。

 その本棚が8列程並び、その周りの壁も本棚が設置してあり、四方を本で埋め尽くされている。まさに楽園。

 この広さの図書室は、ミラル中を探し回ってもここしかない。

 また、休日は図書館として無料で一般公開もされている。本も借りることが出来る。ミラル(いち)の図書館と言っても過言ではないだろう。


 そんな図書室だが、文芸、文学、エッセイ、参考書、図鑑から魔導書、更には有名な魔導書や歴史上存在する魔導書のレプリカまで取り揃えている。一学校の図書室とは到底思えない品揃えだ。


 受付に置いてあるモニターを見ると、今日のニュースがひと目でわかる。どれどれ、今日は……


 ◆マドラ地方に新たな魔女が誕生

 ◆ミラル王国王都ライゼンにて新たな遺跡が発見される

 ◆台風5号が発生 魔法使いの方は至急援護を


 とまあこんな風に毎日ニュースが入ってくる。普通に読んでみても面白い。



 そしてこの図書室の大目玉と言ってもいいのが、受付の左に綺麗に飾られ、ライトアップされている魔導書。


 そう、それこそが「クロエの魔導書」。


 この魔導書は、この魔法学校を作った魔女「ハズキ・クロエ」によって書かれた魔導書。その魔法の数と強大な魔力はどの魔導書にも劣らず、魔法使いたちの間では「これ以上ない究極の魔導書」と称されるほど。


 ハズキ・クロエはもう何年も前に亡くなっている。この魔導書が出たタイミングとほぼ同時期に、ある病気で亡くなったらしい。

 そしてこの魔導書も、彼女が力尽きるまで力を振り絞り書いたものだそうだ。


 しかし、そんな「クロエの魔導書」だが、ハズキが生前にどこかへ飛ばしてしまったそうだ。現代においても、未だに見つかってはいない。


 本体こそ見つかっていないものの、その魔術やページの欠片と思わしきものが発見されており、それを元にこのレプリカが作られたらしい。


 私はいつかこの魔導書を見つけてみたいと思っている。

 まあ今の魔法学を持ってしても見つからないらしいから到底私に見つけられるとは思わないけど。



 先程も言った通りこの図書室にはありとあらゆる本が揃っているので読む本には困らない。


 ちなみに私は1年生の頃からこの図書室に通っているが、入学当初よりも本がかなり増えている。このペースで行ったら本入り切らなくなるのでは?


 私は普段からよく小説を読んだりしている。フィクションの話にしかない魅力ってあるよね。


 あとはその辺の魔導書なんかも読んだり。まだ難しい魔法はあまり使えないが、読んでるだけでも楽しい。


 何を読もうか迷っているうちに昼休みも終わりが近づいていたのでとりあえず今日も適当に魔導書を借りることにした。


 こうして毎日魔法の勉強をしている。この勉強だけは熱心に出来るんだよね。楽しいから。


 受付で貸出を済ませ、教室に戻る。



 さて、5限の授業はなんだったっけな。


 鞄の中に入っている日程表を取り出し、見てみる。


 ……そうだ。今日の午後は魔法学の授業だった。



 学校での楽しみの1つ、魔法学。


 この授業こそ、魔法学校に入った目的である。



 魔法学の授業では、主に魔法の種類や使い方、実習などがワンセットで行われる。


 ちなみに1年生の時には魔法の種類を覚えるので精一杯でした。あれはもう二度とやりたくない。



 授業はグラウンドで行われる。広い敷地の中にダミー人形が何体か設置してある。


「えー、本日は火炎魔法の実習を行います」


 今日は属性魔法の授業らしい。楽しみだ。



 魔法は主に属性魔法、援助補助魔法に分けられる。

 属性魔法は火、水、風、光、闇と言った基本中の基本の属性。またこれ以外にも様々な属性があるがそれはまた後々。

 一口に属性魔法と言っても術は様々あり、全てを使いこなすのは至難の業。

 なのでたいていは1つ、または2つの属性に絞って習得することが多い。だが、学校では一通りの属性魔法は習うことが出来る。

 ただ、ミラルでは戦争もほとんど起きないし魔物もほとんど出ないため、属性魔法を使う場面はほとんどない。たまにちょっと生活で役立つ程度だ。


 次に援助補助魔法。

 これは主に自分や他人への援助をする魔法で、治癒魔法、身体増強魔法などがある。

 治癒魔法も日常ではほとんど使う場面は無い。だが、大きな怪我や身体の疲れなどには有効なため、今でも需要は結構ある。

 身体増強魔法は例えば運動などする場面においては活躍する。無尽蔵のスタミナを手軽に得ることが出来たり、あとは空を飛ぶことも出来たりする。それなりの勉強は必要だが覚えていると結構便利だったりする魔法。

 この他にもまだ色々あるが詳しくは覚えてないので是非調べて見て頂きたい。


 とまあダラダラと魔法について説明してみたが、今は平和な世なので魔法を覚えることにメリットはほとんどないと言ってもいい。

 だが、戦争などが起きないとは言えどこれはあくまでミラル内での話。他の地方ではまだ戦争が起きている所もあるし、魔物も結構出ていたりする所もあるらしい。


 なので魔法使いを志望する人は多い。私の場合は完全に憧れ一筋なんですけどね。



「火炎魔法『フレイラ』は高温になるので発動時には周囲に注意してください。術式は、テキストから習得してください」


 魔法の覚え方は至ってシンプル。使いたい魔法の術式を手にかざす。これだけで魔法を半永久的に使うことが可能になる。


 ただこれはあくまで学校でのやり方。学校では特殊な魔法でこんなに簡単に魔法を習得する事が可能だが、普通は何かを介さなければならない。例えば杖だったり魔具だったり腕輪だったり。


 ちなみにこの魔法を習得する魔法を作ったのもハズキ・クロエだったりする。本当に凄いなあの人。



「では、早速ですが実習に入りたいと思います。『フレイラ』をあの人形めがけて放ち、燃やして下さい」


 始め、という声とともにクラスメイト達が散らばった。



「火の魔法ってなんか怖くない?」


 隣にいたユイが話しかけてきた。


「ちょっと手が熱くなるけど燃えないから大丈夫でしょ」


「まあねえ。でも他人に当たりそうで怖い」


「大丈夫、当たってもせいぜい服が燃えるだけ」


「いやそれ結構ヤバいから」


 そうこうしてるうちに私の番がやってきた。


 魔法の発動方法は色々あるが、今回は炎魔法なので手のひらを対象に向けてこう。


「『フレイラ』!」


 そう叫ぶと、手のひらから火炎の弾が放たれた。


 数百メートル先の人形に1秒も経たずに命中し、人形は燃え始めた。


「よーし」


「こういう時()()ナギサはかっこいいんだから」


「何だよこういう時だけはって」


 冗談交じりに話す。


 これで一通り魔法についての知識はお分かりだろう。てかさっきから誰に向けて解説してるんだ私は。



 とまあそんなこんなで今日の授業は終わった。午前中しっかり居眠り決め込みましたけどね。


 特に用事もないので、さっさと帰ることにした。ユイは相変わらず多忙なので今日もぼっち帰宅。帰宅部って最高だなあ。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 市街地より少し離れた住宅街に経つ可もなく不可もない普通の一軒家。そこが私の家。


「ただいまー」


 ドアを開けて呟く。誰もいないので当然誰にも聞かれていない。


 私の両親は私が小さい頃に離婚した。父親は現在行方をくらまし、母親はここ数年仕事で多忙のため家にはあまり帰ってきていない。


 そのため基本は家に1人。家に呼ぶような友人もいないため家でもぼっちなのである。


 寂しさは感じていない。もう何年もこんな状態だから気にすらしなくなった。


 とりあえず今日も適当に家にある食材で夕飯作るか。


 鞄を自分の部屋に置き、部屋着に着替えて夕飯の支度を始める。



 すると、家の固定電話がプルル、プルルと鳴り出した。


 誰だろう。学校かな。


「はい、もしもし」


『あ、もしもしナギサ?』


 母さんだ。


「どうしたの?」


『この間、今週は帰れるかもって言ったでしょ?少しこっちの事情が伸びちゃって、また帰れそうになくなっちゃったのよ』


 ……そんな気はしてた。


「いいよ。私は大丈夫。それよりお母さん、身体は大丈夫?」


『最近は結構疲れてるけど大丈夫。ナギサも気をつけなよ』


「うん。ありがとう」


『じゃあ私はまた戻るから。ごめんね、いつも帰れなくて』


「大丈夫だよ。仕方ないもんね」


『あと、もう1つ。本当はナギサまで巻き込みたくなかったんだけど───』


 母さんは深刻そうな声で何かを伝えようとした。


『──ごめんなさい。やっぱなんでもないわ。』


「そうなの?」


『うん。でもナギサ、もしかしたら近いうちに、あなたの人生が大きく変わってしまうかもしれない』


「え?」


『もしかしたらの話だけど……なんでもないわ。とにかく、そっちも元気で』


「うん、お母さんもね」


 プチッという音で通話は終わった。


 今日の母さん、何かありそうだったな。

「もしかしたら近いうちに、あなたの人生が大きく変わってしまうかもしれない」か。気には留めておこう。


 そう思いながら夕飯の支度に戻ろうとした。



 ──その時だった。


「あいて!!!!!!」


 何かに引っかかり、強烈な勢いで転んでしまった。


 顔面を強く打ったためかなり痛い。眼鏡は割れてないようだけど。


「いてててて…………何に引っかかったんだろ」


 腰をさすりながら立ち上がり、後ろの地面を見てみると。


「なにこれ?」


 ぼんやりと光った取っ手のようなものが、地面に刺さっていた。


 17年この家に住んできてこんなもの初めて見たわ。さっき帰ってきた時もこんなのなかったし。


 こういう時は無視するのが得策なのだろうが、私の中の好奇心が勝ってしまい、気付けば取っ手のようなものに手をかけていた。


 そして後ろにグイッと引っ張ってみる。……が、重すぎてビクともしない。そもそもこれは何かの扉の取っ手なのか?それともただ刺さってるだけ?


 きっと何かの扉の取っ手だろうと信じながら、ひたすらに取っ手を引っ張る。


 やはりビクともしない。運動があまり得意ではない私は体力がほぼ無いに等しいため、かなりキツイ。


 それでもまだ諦めない。ここまで私を苦しめるのだから何かあるに違いない。



 そう信じて取っ手と格闘すること十数分。


 遂にその時は来た。


「ひらけ………………!」


 地面が少しミシッという音を立て浮き始めた。


 やっぱりこれは何かの扉だ。


「あと……もうちょっと…………!」


 強く力を込め引っ張る。そして。



 ……扉が開いた。



 思いっきり引っ張ったせいで、扉は勢いよく開き、その反動で後ろに倒れてしまった。


「あいた!!!!!!!」


 本日2度目の怪我である。今度は後ろ頭を猛烈な勢いで打ったのでものすごく痛い。


 打った頭をさすりながらゆっくり立ち上がる。まさか家で2回もこんな大怪我するとは。とほほ。



 開いた所を見てみると、床の下に階段が続いていた。


 こんな隠し部屋がこの家にあったのか…………



 恐る恐る足を踏み入れる。階段がかなり急なので、落ちそうで怖い。


 ゆっくりと、ゆっくりと降りる。


 下に行くにつれ暗くなってくる。暗い所は苦手なんだよな…………



 そうして階段を降りていくと、やがて最下層に着いた。


 辺りは真っ暗で、何も見えない。上からうっすらと光が照らす。


 電気とかどこかにないかな……と、私の後ろの(恐らく)壁を触ってみる。


 ……と、なにか突起のようなものに手が当たった。


 これは……恐らく電気のスイッチだ。


 試しにそれを押してみる。



 押した瞬間に、目の前に吊るされていた電気が付き、ようやく部屋の全貌が見えるようになった。


 地面と壁は石で出来ている。恐らくこの空間自体が地下のためだろう。


 広さは浴室より少し小さい程度。四方の壁には本棚が設置され本が並べられていた。


 何この部屋。ロマンの塊じゃん。


 本棚の近くまで寄りゆっくりと眺めてみる。


 そして、何となく見えた本を手に取ってみる。表紙は多少汚れていたが、「魔導書」の文字が見えた。


 うちにこんなものあったのか……


 本を戻そうと、持ってる本があった場所を見てみると、その隙間からも「魔導書」の文字が見えた。


 もしや……と思いほかの本棚も見てみる。「魔導書」。こっちも「魔導書」。


 これ、もしかしてほとんど魔導書なの!?


 そうしてゆっくりと四方を見渡してみる。



 すると、階段真正面の本棚に、表紙を表にして立てかけてある本を見つけた。


 その本の前に立つ。


 …………なんだか、見覚えがある。


 手に取って見る。すこし埃を被っていたので、手で払う。



「こ、これは………………」



 思わず声に出てしまっていた。無理もない。



 その本の表紙には、「クロエの魔導書」と書いてあった。



「これって…………本物?」


 中を見てみると、学校のレプリカでも見られない術式などが多く記されていた。


 長い時間が経っているためか、所々に汚れや破れた部分が見られる。



 これは本当に、本物の「クロエの魔導書」なのだろうか。




 とりあえずその本を持ってリビングに戻ってきた。


 床の扉を閉めると、取っ手のようなものは元々存在していなかったかのように消滅していた。


 夢を見ていたのか、と思ったが、「クロエの魔導書」は確かに存在していた。


 うーん。果たしてこれは本物なんだろうか。


 とりあえず、明日知り合いの先生の所に見せに行こう。




 この時の私は知る由もなかった。


 この魔導書との出会いが自分の運命を大きく変えてしまうことを。


 この魔導書が、私にとって()()()()()()になるということを。

本の角と机ってどっちが痛いんでしょうね。


ということで「クロエの魔導書」、再編集して再始動です。

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