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瞬間なかすぃ~  作者: 中島賢二
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フルーツジュースの罠

長崎の繁華街、浜の町に徒歩で行けるぐらいのところに住んでいた子供の頃。まだ、電話代十円だけ持って外に遊びに行っていた頃の話。たまに親から百円をもらい、お菓子やジュースを買うのが楽しみだった。普段は近くの売店でお菓子やジュースを買っていたが、稀に浜の町の最大のデパート、浜屋の地下に行って、フルーツジュースを飲むのが楽しみだった。浜屋の地下のフルーツジュースは、頼んでからその場で絞って作ってくれる。子供ながら、その新鮮さは缶ジュースとは違うし、自分が頼んでから作ってくれるという高級感を気に入っていた。いつもオレンジジュースかパインジュースを飲んでいた。


今日も久々に百円貰って、浜の町までやってきた。今日はフルーツジュースな気分だ。浜屋の地下に降りて行った。


フルーツジュースのコーナーは混んでいた。僕は後ろに並んで順番を待っていた。待っているといろんなところに目が行く。気分はオレンジジュースだったけど、前の人が頼んでいる緑のジュースはなんだ?へー、メロンか。ん。なんかメロンが飲みたくなったな。気が変わった。メロンジュースは深い緑で、なんか濃ゆくて、重量感があっておいしそうだった。僕の順番だ。


「メロンジュース、ください。」

「はい。」

メロンジュースが作られ始めた。僕のために、カットしたメロンがミキサーに入れられ、スイッチが入れられた。


はっ!信じられないものを見つけた。

『メロンジュース 二〇〇円』


どおりで、深い緑で、濃ゆくて、重量感があったわけだ。どうしよう。百円しかもってない。このままじゃ万引き犯だ。どうすればいい?やばい!もうジュースができる!僕は警察に逮捕されてしまうのか?もう、おしまいだ。フルーツジュースのわくわくから一気に最悪の気分になった。


「あら、賢二。」


そこにいたのは、お母さん。お母さんがたまたま浜屋の地下にいたのだ。こんな偶然、考えられない!奇跡だ!よかった!助けを求めて、追加の百円を払ってもらった。セーフ!


思いがけず飲めた、二百円のメロンジュースは深く、豊かな味わいだった。


 間一髪の危機をすり抜けた。でも、これ、一生分の運を使ったんじゃないだろうか。僕の人生、以降は運に頼らないようにしよう。そう思った。


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