待望の勉強会……がなんかカオスなんだけど!?
大変お待たせいたしました。
後書きでお知らせがあるので、是非是非お読みください!
「──ね〜、ピリオド♪」
「ん、何かあった?」
「えへへっ、何でもな〜い!」
──なんか、ミオの機嫌が物凄く良い。
俺は昨夜、Vtuber『ミオしゃ』の記念配信を見て暴れ回っていた。
ご丁寧にノイズキャンセリング機能を備えたヘッドフォンを装着していて、部屋の外で何があったかは分からない。
だが、昨日は口も聞いてくれなかったミオの機嫌がここまで良くなったのは、恐らくその裏で怜音さんが頑張ってくれたのだろう。
俺はミオに気付かれないようにこっそりと、「ありがとうございます」と怜音さんに両手を合わせた、合わせたのだが……。
「──ぷいっ」
「えぇ!?」
俺が手を合わせた瞬間、今度は怜音さんが俺から顔を背けた──まるでミオの不機嫌を怜音さんが吸い取ってしまったかのように。
それを見て俺は──
(そ、そんなに大変だったのか……!?)
怜音さんに許可された事とはいえ、自分だけひたすら楽しんでいたのを少し申し訳なく思った。
──まあ怜音さんとしては、自分は直せなかったミオの機嫌を最も容易く、それに無意識的にやってのけた俺にちょっとした敵対心を抱いていただけだったらしいのだが……この時の俺に知る由はなかった。
直接やったらまた顔を背けられてしまうだろうから、俺は心の中で手を合わせて感謝の意を伝えた。
心を読まれて再び顔を背けられてしまった気がするが……。
そうこうしていると俺のスマホが突然震え出した。
そしてそれと同時に、久しぶりに聞く音が流れ出した。
「──電話? 掛けてきたのは……楓か」
昨日今日と体調を崩していて我が家に来ていない楓。
最近はずっと直接会っていたから久しぶりの電話なのだが、楓からそんな久しぶりの電話が掛かってきたのだ。
「──もしもし?」
『もしもし〜♪ おはようございます、柊仁君!』
ミオに邪魔されないようにソファを離れて電話を取ったのだが、スマホからは元気そうな楓の声が響いてきた。
「割と元気そうだね。良かった」
『心配かけてごめんなさい。今は殆ど調子も戻っているのですが、万全を期してお家に居る事にしました』
「いや、楓が元気なのが一番だから」
『……そんな気恥ずかしい事を容易く。だから厨二病は困るんです』
「今、厨二病は関係なくない?!」
何の前触れもなく厨二病と言い放ってきた楓は、流れを変える為か軽く咳払いをすると「とにかく、私は元気です」と言って、電話の向こうで力こぶを作ろうとしていた──まあ、彼女の細腕にそれは無理だろうが。
「ふんっふんっ」と頑張って腕に力をこめている楓を想像して微笑ましい感情を覚えつつも、俺は話の本題を尋ねた。
「それで急に電話をしてきて、何の用かな?」
『……意味もなく電話をしちゃいけないんですか?』
「い、いや……そういう訳じゃないけど」
そんな可愛い事を言われてしまっては今の俺にはどうする事も出来ない。
ここは『HAHAHA、俺も意味もなく君の声が聞きたかったよ(キリッ)』とでもやるべきだろうか……いや、それはキモキモの能力者だな。
「…………」
『──ふふっ、意地悪しちゃいました。本当はありますよ、電話をした目的』
「HAHA……良かったよ」
『HAHA?』
おっと、一応の為に待機状態にしておいた笑い声が出てしまった。
これでは俺が変な奴になってしまう……いや元から割と変な奴か──自分で言うのも何か引っかかるけど。
「それで、目的って?」
『それはですね──柊仁君のお持ちかねがとうとうやってきましたよ!』
「……?」
俺、何か待っていたっけ? 記憶にござらんのだが……?
突然心当たりのない事を言われて戸惑った俺、だがすぐにその戸惑いは氷解した。
「勉強会ですよ、勉強会っ!」
「おおっ! 本当にやるの!?」
「はい! 斗弥君が柊仁君が望んでいるのならやろうって。望んでいませんでした?」
「いやいやいやいや、望んでいるとも!」
憎き厨二病の所為で、塵ほども俺の手の中に残らなかった中学時代の青春イベント。
その一つである勉強会っ! 時を超えて、ついに俺はそんな青春らしいイベントをしてしまうのかっ!
「それで、いつやるの?」
「明日です」
「明日!? 随分急だなぁ……いや予定ないから良いんだけど。因みに何処で?」
「聞きたいですか? 勉強会の開催地ですが……」
★☆★☆★☆★☆
「なんで……なんで──俺んち!?」
「いやぁ、すみません。家主に代わって勝手に許可を出してしまって」
「いや別に良いんだけどさ、良いんだけどさぁ」
──昨日、楓に開催地を告げられて俺はマジでびっくり仰天した。
俺の知らないところで勉強会の日程が定められていて、俺の知らないところで俺の家を貸す約束がされていたのだから。
いや、夏休みに入ってから楓はこの家に入り浸ってるから第二の家主と言っても過言……ないし、協力して超綺麗にしているから良いんだけどさ。
「すまないな、柊仁。別件で話をしていた最中に決めた事だったから、急になってしまった」
「あぁ……うん、大丈夫だよ? 斗弥……くん」
「斗弥、だろ? ちょっと会わなかっただけなのに随分余所余所しくなったな」
「ごめん……斗弥」
「謝られる事じゃないけどな?」
斗弥は「ちょっと」なんて言っていたが、俺にとっては随分おひさ……だって三週間だよ?
つまり、マジモンの陽キャと関わるのは随分と久しぶりで……距離感忘れた。
あれ〜? 俺どうやって斗弥と話してたっけ?
「ウェ〜い」とか言ってたかな……いや、それはないか。せめて「ちょり〜す」までか。
「ところで──照示も来たんだね?」
「……俺は来たくなかったんだが」
「こんにちわ……ですっ!」
「斗弥に呼ばれたからって、どうしても行くって聞かなかったんだ」
我が第一友達──神代照示とその妹の神代天乃ちゃんも、お勉強会会場である我が家に集まっていた。
こんなに楽しい楽しいお勉強会だというのに、メチャメチャむす〜っとしている兄貴が一人──だが、その理由がようやく分かった。
(シスコンを発揮されたんですね……シスコンお兄様?)
照示が不機嫌な理由……天敵である斗弥と空間を共にしているのもあるのだろうが、それは間違いなく比重が軽い。
一番の理由は──大好きな妹が他の男に尻尾を振っているのが気に食わないのだろう。
しかもその男が妹の昔の彼氏であり、斗弥に直接的な非はないにしても妹を苦しめた元凶。
俺や楓が居るとはいえ、おにーちゃんとして斗弥と天乃ちゃんが二人になるのは気が気ではなかったのだろう。
「素晴らしい妹愛だねぇ」
「そうですねぇ。普段との差を考えると微笑ましいです」
「──なんか言ったか?」
「「いえいえいえいえ、何でもないですっ!」」
『お可愛いこと』な照示を楓とニタニタ眺めていたのだが、キッと睨まれて視線を外した──いや、怖っ! 二、三人殺した人の目だったけど?!
そんな照示の殺人眼から急いで逃れた俺達の視界には……。
「とうや〜、ここわっかんな〜い」
「うん? ああ、そこは……」
「──ああ! お二人、距離が近いですよ! 離れて離れてっ!」
「ふっ、ぎゅ〜〜!」
「あああ! ダメです、ダメです〜っ!」
──柚茉と天乃ちゃんが斗称を取り合っていた。
そしてそれを照示が知覚した瞬間、殺人眼から狂殺人眼へと変貌させて物凄い形相で睨み付けていた。
今にも斗称を刺し殺しそうな雰囲気──怜音さん! 今すぐ家中の包丁及び刃物類を粉々に破壊しておいてくださいっ!
「まあ……俺は普通に課題を終わらせるか──っと……これ、どうやって解くんだ?」
「「柊仁君! 私が教えてあげますよ!」」
俺の発言を皮切りに同時に声を上げてしまった楓とミオ。
意見の衝突を察知した二人は互いをキッと睨むと──
「いや、私が教えますから貴女は自分の宿題をやっていてください」
「いやいや、ピリオドを支えるのは番たる私の役目だよっ! ねっ、ピリオド?」
「──ヒイイイィイ! こ、来ないでぇ!!!」
楓と争っていたミオが突然俺の方へと近づいてきた瞬間、俺は彼女から全力で離れた。
何でかって?──そりゃあ……ねぇ?
「私が居ない間に柊仁君に何かしたんですか?」
「え〜、何の事かな〜?」
「柊仁君、何があったんですか? 言ってみてください?」
「それが、それがねぇ……」
「──あーあー! でかおっぱいは向こうに行きましょうね〜!」
俺が楓との通話をした後にあった出来事を話そうとした瞬間、ミオが楓の身体を押して連れていってしまった。
しかし、楓は抵抗しようとした。
だが──抵抗していた楓はいつの間にかミオに押し倒されていて、果てには胸を揉みしだかれていた──Oh、おっぱい。
「っていうか……カオスだな」
恐怖を振り払って冷静になってみると、混沌とした現状に気付いた。
だって──あっちでは照示が斗弥を刺し殺そうとして、こっちでは取っ組み合いの喧嘩が始っている。
う〜ん、カオス!──レイえも〜ん、どうにかしてよ〜!
──お知らせ二つ!──
① カクヨムさんの所のサポーター限定SS『水風呂混浴で「楽にしてあげるよ♡」ってナニ!?』という楓との電話の後、お勉強会の前にあった、ミオとのちょっとえっち(?)な小話をサポーター限定で投稿してみました。柊仁のミオへの態度の変化の原因が明らかに!?
ちょ〜っとお金掛かっちゃう上にサイトが変わってはしまいますが、ご興味お有りの方はぜひぜひ下のURLから読んでやってくださ〜い!
→https://kakuyomu.jp/users/yuminyan/news/16817330656347544700
②新作「萌え成分100%の超『てぇてぇ』Vtuberコンビが裏でも仲良く『てぇてぇ』してるなんて思うなよ!? これはビジネス……そう、ビジネスフレンドなんだからなっ!」という二人のVtuberのお話を始めました。Vtuber好きのVtuberによるVtuber好きの為の作品です!(もちろん、Vtuber知らないよ〜って方も大歓迎です)
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