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厨二病が治ったら、可愛くておっぱい大きくて可愛い君に出会えたってマジ?  作者: ゆみねこ
元厨二病に楽しい夏休みがやってきたってマジ?(前半戦)
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実際のナンパ男を見てみたい今日この頃……いや、やっぱいいや

「──それで、この後どうしようか」


 ショッピングモールの水着店にて、俺達は温泉用の水着を購入した。

 その後、超有名ファストフード店『ワクドナルド』にて昼食を摂っていた。


 一年以上、本場であるアメリカに住んでいたというのに、こういった店には行ったことがないと目を輝かせるミオ──怜音さんの目は冷たかったが……。

 色々な種類のハンバーガーを食べては『美味しい、美味しい』と頬を綻ばせていた。


 そんなミオを見て微笑ましく思っていたのだが、ハンバーガーに噛み付いた時、俺は自分の無計画さに気付いた。


──水着買ってワック行って……その後、何するか全然決めてなかった!


 昼食を摂っている所から分かるように、現在の時刻は正午ちょい過ぎである。

 このまま家に帰るのも何処か味気ない……けれど、何をするればいいのか思いつかない。


 思いつきたいけど、思いつかない。

 それ故に俺は『何をしようか』と言ったのだが──


「──予定がないならプールでも行きませんか? 近くに大きめの所がありますし」


 無限に等しい一瞬、もしくは一瞬に等しい無限の時間で悩んでいた問題に対して、楓は一瞬にして最適解を生み出していた。


「温泉ならそこまで燥げないでしょうし、食後の運動にもなりますからね」


 温泉で燥げないって完全に盲点だった。楓さんマジパネェっす、感服っす!

 え? なんで温泉で燥いじゃいけないのが盲点なのかって?──幼少の頃、利用時間外にプールのように使っていたんだけど……それはここだけのナ・イ・シ・ョ。


「ピリオド、勝負しよっ!」

「おっ、『時空神(笑)のカッパ野郎』の異名を持つ俺と勝負するとは命知らずだな?」

「……なんで、そんな名誉そうで不名誉なあだ名で胸を張ってるんですか」


 厨二病時代は他人から褒められたり、尊敬の眼差しを向けられる事は全くなかったが、唯一水泳だけは他とは抜きん出ていたのだ。

 故に、この異名は俺にとっては不名誉よりも名誉なものなのだ。楓はそれが分かっていない──あれ? 誇らしいはずなのに涙が……。


「それに水の中ならその眼も役には立つまい!」

「ふっ、それはどうかな! 私の中に封じられた大海龍(リヴァイアサン)を呼び起こせば私の圧勝だよっ!」

「な、なんだと? 貴様、あの伝説の龍を……?!」

「何をバカな事を言ってるんですか……」


 大海龍(リヴァイアサン)は神により創造され、神により滅された暴虐の龍!

 そんな奴をその身に封じているとは、貴様はどれだけ強くなったのだ──と久々に厨二病(ピリオド)になってみると、キラキラとした目を向けてくるミオに対して、楓は呆れたような視線を向けてきた。


「それで、プールに行くっていう事で……」

「「──良いよっ!」」


 ここまできて、はいやっぱ止めましょうはあり得ない!

 二人で熱中しているこの空気を払拭しようと、改めて尋ねてきた楓に対して俺達はそう元気よく返したのだった──



★☆★☆★☆★☆



「──で、プールに来た訳だが……」


 大型ショッピングモールを出て、怜音さんの運転する車に揺られること十数分。

 それから入場して、水着に着替え、こうしてプール場とご対面したのだが──


「──何じゃ、この人の量は!!!」


 視線を右へ移動させても人人人、左へ移動させても人人人。

 何処を見ても人人人人人人──ゲシュタルト崩壊起こしちまうよっ!


「──ま〜、夏休みですからね。多少は予測していましたが……これは多い!」

「おっ。楓とミオも来た……か」


 全ての服を脱いで下を履くだけの男とは違って、上や下やと着なければならない女性陣は総じて時間が掛かる。

 例には漏れず、早く着替え終わった俺は楓達を待っていたのだが……。


 やって来た彼女達の方には──花園が生み出されていた。


 純白のフリルビキニを身につける楓は、一面に咲き誇る白き花々、もしくは凛と咲く高嶺の花を幻視させる。

 黄色のハイネックに水色のスカートを纏うミオは、楓が形成している花畑の周りを舞う溌剌で美しい蝶のようだった。


「そ、そんなまじまじと見られると照れますよ……///」

「惚れちゃっても良いんだよっ!」


 購入時点では身体に当てるだけで、実際に身に付けて試着する事はなかった。

 故に、サプライズの如く現れた彼女達の瑞々しい肌と水着のコントラストは激しい衝撃を呼び起こした。


 名画を見ている様な感覚に陥った俺はかなり長い間無言で二人を眺めていたようで、楓は少し頬を赤らめ、ミオは満面の笑みでそんな反応を返してきた。

 その声で俺は我に返り、拙くもはっきりと言葉を発した。


「ああ……えっと、とても……似合ってるよ。本当に」


 可愛い、美しい、綺麗、素敵、無敵──そんな全てが重なり合い、混ざり合っている楓とミオに送る言葉は『似合っている』しか俺の中にはなかった。


──しかし、どうやらそれを思っているのは俺だけではない様で……。


「──おねぇ〜ちゃん達、かわうぃねぇ〜! どう、これから俺達と遊ばなぁ〜い?」


 ギラギラに染まった金髪に、今時珍しい鼻とへそピアス、それに加えて首から下げるネックレスも金と、金金金なチャラ男軍団が俺の存在を無視していらっしゃい。

 楓達を取り囲むと、ねっちょりとした口調で言い寄り始めた。


「ねねっ、聞いてるぅ〜? 話しかけてるんだからシカトは無くね?」

「ちょー、マサっち〜。威圧掛けるとか怖すぎ〜。おねぇちゃん、俺は優しく手取り足取り腰取り胸取り……ってちょー、言い過ぎたわっ!」

「最初からカラダ目当てってキモすぎー」

「ちょー」


 男達は楓の巨っぱい、ミオのちっぱいをジロジロと見ながらそんな品のない事を次々と言う。

 それを見て俺は──


(──うわっ、ラノベとかでよくあるやつやん)


 完璧美少女を取り囲む、絵に描いたようなチャラいナンパ男達。

 主人公達は格好悪くもカッコよくナンパ男達を撃退し、ヒロイン達を守るのがお約束。


 そうするのがこの場の最適解である、最適解であるとは分かっているのだが……身体が動かない。

 めちゃめちゃマズイ状況な筈なのに、目の前の光景が非日常すぎて動けない。


 しかし、そんな情けない俺とは違って──


「──さっきの『りばいあさん』? って、どうやったら思い付くんですか?」

「思い付いてるんじゃないよっ! 大海龍(リヴァイアサン)は私が色に従って放浪した先で出会った、それはそれは凶暴な邪龍で……」

「元ネタは?」

「も、元ネタなんか……」

「も・と・ネ・タ・は?」

「……聖書」


──楓とミオはそこに何も居ないかのように、どうでも良いような会話を繰り広げていた。


 『ちょーちょー』言ってるちょーちょーさんのフォローは何処へやら。

 そんな楓達の様子には、流石のチャラ男さん達も呆気に取られていたようだが、すぐに目の端をピクピクとさせて激昂し始めた。


「ちいせぇのに良い度胸だな」

「ちょー、無理矢理ヤっちゃう? ヤっちゃう?」


 激昂したチャラ男さん達は遂に楓達の方へと腕を伸ばし、その豊満な果実に触れようとして──その瞬間の事だった。

 ギラギラと俺達を照り付けていた太陽がより一層激しく輝き、下隊の住人たる俺達の視界を奪った。


「ぐおっ……!」

「ちょーッ……!」


 あまりに激しすぎる輝きに目がやられている中、楓達の方から聞くだけで恐ろしい打撲音とチャラ男達のものらしき苦悶の声が聞こえてきた。

 それが続いたのが──僅か十秒。


 三十秒やそこらが経過すると俺達の視界が晴れてきて、楓達の方を見てみると──


──楓達の周りには怜音さん率いる屈強な男達が、そして近くの小プールにはチャラ男達が浮かんでいた。


「ありがとう、怜音」

「いえ。お嬢様にお怪我がないようで何よりです」


 そう言うと怜音さんは何処かへ消えて、近くの屈強な男達もゾロゾロと立ち去っていった。

 どうやら怜音さんが臨時で雇っているのか、お抱えのSPだったらしい。なら、さっきの目眩しは怜音さんが放った閃光弾か……。


 俺の理想は──格好悪くもカッコよくヒロインを助ける主人公。

 しかしここに居るのは、格好悪くてカッコ悪く女子達が助けられるのを見ているだけのマヌケだった。

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