ホロの4thライブが来たぞおおおおおお!(本編と全く関係ないけど)
──という事でやって来たぜ、ショッピングモール!
お婆ちゃんの家に行くという事で、まずやるべきは『水着を買うこと』だと定めた俺。
それから日を置いて俺と楓、ミオは水着を買う為に、近所で一番でっかい複合商業施設に来ていた──因みに怜音さんはどこからか見守っているらしい。
「買い物をするのも何だか久しぶりですねぇ」
「そうなの? てっきり、柚茉辺りと行ってるものだと思ってたけど」
俺がそう言うと、楓は『全くもう』みたいな表情を浮かべてきた。
俺、なんかした?──と考えていたのだが、心当たりはない。
自分で答えを出せない僕に痺れを切らしたのか、楓は整然と言った。
「柊仁君と同じで、柚茉ちゃんも毎日補習なんですからそんな暇はないでしょう?」
「ああ……確かに」
楓が買い物に行っていると思ったのは、俺が文系教科の補習を受けている日は楓の手が空くからだ。
だから、友達と遊びに行ってるんだろうなぁ……と思っていたが、よくよく考えたらその親友も全補習組なんでしたね。
「じゃあ、俺が補習の時は何をして過ごしてるの?」
「秘密で〜す」
「ええ〜」
「乙女の秘密は蜜の味ですよ。秘密だからこそ、気になるものです」
『良いこと言ったでしょ』と自慢げにふふんと笑って胸を張った楓。
なるほど、それは一理あるな。見つけた伏線がいつ回収されるか気になっている時が一番ワクワクするのと同じかぁ──って、なんか盛大に誤魔化された気がする。
「私はピリオドに秘密なんてないよ〜♪」
「まあ、ミオは俺に隠し事しないから……いや、あるぞ」
納得しかけた所でふと思い出した、ミオが俺に対して永遠と秘密にし続けていること。
それは──
「胸のサイ……」
「──死んじゃえ!」
「ぐはッ……!」
『サイズ』と言い切る前に胴体に叩き込まれた全力の回し蹴り。
余りの勢いに俺の身体は空中で三回転して地面に落ちた──そのあやせキック……、どこで覚えてきた……?
「全くピリオドは……!」
「いやぁ、ごめんごめん。わざとじゃないんだけどさ」
「あれが故意じゃなかったら、私の蹴りが火を吹いてなかったよ!」
ぷんすかが一番似合う怒り方をするミオに、俺は苦笑いをしながら謝る事しか出来なかった──起こった原因はお前だって? それなっ!
いやけど、わざとじゃないんですよ、いやホントに。つい口が滑っただけでありまして……。
──そんな風にミオとどんちゃんわちゃわちゃしていた所為で、楓が「もっと他の隠し事があると思いますが……」と小さく呟いた言葉は耳に入っていなかった。
「……サイズならこの後分かりますよ?」
「「え?」」
「だって私達は水着を買いに来たんですから」
確かに……と言いかけたが、確かにじゃないわ!
え、俺は俺の水着、女子は女子で分けるんじゃないの? 俺、楓達に付いて行かなきゃいけない系?──やだ〜、ちょっと恥ずかしいんですけど……。
「ぜ、絶対にピリオドには教えてあげないんだからっ!」
「じゃあ、私が教えてもらって柊仁君に伝えるのは……」
「──ダメに決まってるでしょ!」
うーん、やっぱり俺が付いていく流れは確定なのか……。
「うーむ……」
店前からでも分かるが……女性ブースに飾られてる水着、ほぼ下着みたいな物だ。
しかもそれだけでなく、試着室からは試着をしている綺麗なおねーさんが姿を覗かせてお仲間にお披露目。
──やっぱり、刺激強いっすわ。
俺の限度はミオの下着まで。
あれなら大丈夫、色気のカケラもなく気恥ずかしさを感じない……寧ろ、男の俺には色々謎だからじっくり研究したいくらい☆
「ほら、柊仁君行きますよ」
「なにぼーっとしてるの? 早く行こっ!」
これから起こるであろう緊張や居た堪れなさを想像して、俺は店前でじっと固まっていた。
しかし、そんな俺の腕を楓とミオは引っ張って中へと押し込んでしまった。
おいおいおいおい、まだ心の準備が出来てないのに何してくれちゃってんの?──最初はそう思ったのだが、よくよく考えたらそれが正解だった。
なんてったって、楓達が俺を放置していたら──水着屋の女性ブースの目の前で、ひたすら深呼吸を繰り返しては中をじっと見ているヤバい男の完成していたからだ。ヤダ、通報されちゃうっ!
「柊仁君はどんな感じの水着が好きですか?」
「どんな感じが好きって……、特にはない……かな?」
「決めてくださいよ〜! 可愛い系とか、お姉さん系とか!」
突然吹っ飛んできた無茶な質問。好きな水着って言われても、『はいこれですっ!』なんて即答出来る人なんているまい。
もしいたとしたら、それはかなりの『へんたいふしんしゃさん』なんだろう──因みに俺は水着よりも体操着派、特にブルマえっちだよね……最近ないからね、ぐへへ。
「うーんと……似合っているなら、良いんじゃない?」
「もーっ、その似合っているのがどれか聞いているんですよっ!」
「そう言われてもなぁ……」
楓に似合う水着……おっぱい以外は小柄だしやっぱり可愛い系だろうか?
それこそ、天使のようなポワポワッとした感じで──
「……うん、可愛い系かな」
「可愛い系ですね! 分かりましたっ!」
「それに温泉にグラマラスなのを着てくのは……ちょっと嫌かな」
今まで言っていなかったな!
そうさ、この水着は──温泉の為のものなのだ!
どうして水着が必要なのかって? それは──俺のお婆ちゃんが営んでいる温泉は男女別はもちろん、混浴露天風呂があるのだ。
しかも、混浴場の方から見える風景はえも言われぬほどの美しさで、是非とも楓達に味わってほしかったからなのである──けけけ決して、女子を侍らせてお代官気分を味わおう、なんて思ってないんだからねっ!
まあ、そういう事で他の人の目もあるしグラマーな水着はちょーっと嫌かなと思っていると、頻りに楓がニヤニヤし出した。
「なんですか〜、嫉妬してくれているんですか〜?」
ニヤニヤニチャニチャと揶揄うような視線を向けてくる楓。
それに対して俺は──
「──まあ、な……」
「んなっ!?」
──俺の胸の中で渦巻いている不可思議な気持ちをそのまま伝えた。
すると、楓の顔はボンっと茹でだこの様に紅くなり、視線をあちこちと動かしてもじもじとし出した。
俺の顔をチラチラ見たり、指をツンツンとして水着どころではない様子──ちょっと、言ったこっちも恥ずかしいんだからそんなに反応しないでね……。
「──ピーリーオード! これどうかなっ!」
「うおっ!」
俺と楓の間に流れ始めた妙な空気を打ち払ったのは、俺をこの水着店に放り込むだけ放り込んで自分は勝手に何処かへ行ってしまっていたミオだった。
その手には──黄色系のハイネックと水色系のスカートタイプの水着が握られていて、自分の身体に当てて感想を求めてきていた。
「うーんと、良いんじゃないかな? 明るいのがミオによく似合ってると思う」
「やった!」
楓に言われた通り、『似合っている』だけじゃなくてその理由までも添えてミオに伝えた。
すると、ミオは満面の笑みとなり、その場でぴょんぴょんと跳ねながら喜んでくれていた。
楓さん、こんな感じでいいのでしょうか?──そう尋ねるために、水着選びアドバイスの師である楓の方を向いた。
俺的には『よろしい』といった反応を見せてくれると思っていた。
しかし──
「──むむむむむむむむむむむむ……!」
「ふえっ?! 楓さん?!」
「その反応は私最初にしてほしかったのに! もーっ!!!」
褒めてくれると思っていた楓はまさかの半泣き状態で怒っていた。
しかもそれだけに留まらず、怒ったままで何処かに走り去っていった。
「ちょっ……」
「大丈夫だよ。ほらっ!」
普段、中々走るという行為をしない楓が走り去った。それはつまり非常事態という事であり、僕は思わず追いかけようとした。
しかしミオに制止されて彼女が指す方を見ると──
──走り去った楓は以外にもすぐ止まり、ラックに掛けられた水着に手を伸ばし始めた。
「あの子の頭の中は、私以上の評価を得ようと一杯になってるからね♪」
「……楓の事をよく理解してるなぁ」
あれだけ嫌い嫌いと喧嘩していたのに……いや、バトルしていたからこそ強い絆が生まれ始めている。
嫌い嫌いも好きの内というが、俺はそれが嬉しくてたまらなかった。
(やっぱり、いいコンビになりそうだ)
仕方なさそうな顔を浮かべて楓を眺めているミオを、俺はそんな事を考えながら見ていたのだった。
──因みに、その後に楓が選んできたのは、白のフリル付きビキニという楓のイメージにぴったりなエロさ控えめの可愛くて天使な水着だった。




