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厨二病が治ったら、可愛くておっぱい大きくて可愛い君に出会えたってマジ?  作者: ゆみねこ
元厨二病に楽しい夏休みがやってきたってマジ?(前半戦)
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タイトル変更!

投稿遅れてすみません!

──怜音さんはとても優秀だ。


 完璧な家事スキルはもちろん、忍びの如く瞬間移動したり、気配を消す。

 またそれだけに留まらず、逆に相手の気配を察知する事も出来るらしい。


 それはとある日の昼下がりも変わらなかった──


「……ふむ」

『──ピーンポーン』

 

 幼少の頃より何度と聞いてきた我が家の呼び出し音、怜音さんはそれが鳴るよりも早く立ち上がっていた。

 玄関からこのリビングはかなり距離がある。故に、来訪者の存在に気付いただけでも凄い、凄いのだが……。


「どちら様でしょう?」

「柊仁様の御両親ですね。迎え入れましょうか?」

「えっ!?」


 食器を洗っていた俺は、楓の呟きに返された怜音さんの言葉に二つの意味で驚いた。

 その驚きたるや……ミオが持ち込んだ高級な皿をうっかり割ってしまう所だった、あっぶねえ。


「俺の父さんと母さんが来た?」

「はい」

「間違いじゃ……」

「──ありません」


 俺の父さんと母さん──杉久と彩仁といったら、梅雨明けに八年ぶりの再会を果たしたあの?

 いやいやまさか、あれから連絡がなかったし、まさかねぇ──って、あ……連絡先交換してねえんだった。


「私がお迎えに参りましょうか?」

「いえ、俺が行きます……それよりも、です」


 迎えに行く、行かないはさて置き……この状況、マズくない?

 休日に女子三人と過ごす男子高校生、側から見たらアウトじゃね?──まあ、怜音さんは女性の部類だが、目算俺とそんなに離れてなさそうだからここでは女子とする。


 久しぶりに家に来た両親がこんな状況を目にしたらどう思うか──まず間違いなく大問題に発展する。

 というか、今まであんまり気にしてこなかったけど、俺ってすげぇ状況に身を置いてるな!


「怜音さん達は自分達の荷物を持って、俺の部屋……はダメ、寝室……はもっとダメ。浴室に隠れていてください!」

「ええ?! 急にそんな事言われたって……」

「──お嬢様と楓様の荷物は全て回収完了いたしました」

「ナイスです! それでは隠れててください!」


 楓達を隠そうとわたわたとしている最中、もう一度インターホンが鳴った。

 流石にこれ以上は待たせられないと、彼女達が浴室に入り切ったのを確認して玄関の扉を開いた。


「──ど、どちら様でしょうか……」

「あっ……。こ、こほん、お久しぶり……お母さん、だよ?」

「おいおい距離感どうした?」


 怜音さんの超人レーダーによって誰か判明していただけだから、一応の演技として『どちら様』と聞きながら扉を開くと、そこにはガチガチに固まった母さん、そしてその背後には父さんが居た。

 久しぶりの再会。気まずいなぁ……とか考えていたら、母さんの余りのガチガチように俺は思わずツッコんでしまった──どうして前会った時よりも酷くなっているんだか……。


「急に訪ねてすまないな……連絡を取る手段がなかったもので」

「いや、それについては俺も失念してた」


 連絡先を交換するのを忘れてたし、そもそも連絡をしようとも思う機会もなかった──機会があったらお婆ちゃんにでも聞いてただろうし。

 それに、またあの家を訪ねると言っていたのに、色々とバタバタしていた所為で結局行けていなかったからな。

 

「それで……家に上げてもらっても、いいかい?」

「何でそんなにキョドキョドしているのか分からないけど……いいよ」


 気まずさは先日の再会で完全に払拭されたと思ったんだけど……そういう訳にもいかないか。

 俺には楓が居てくれたから心機一転することが出来たが、我が両親はそういう存在は居なかっただろうしな。


「元々、この家は父さんと母さんの物なんだ。そんなに緊張しなくてもいいよ」

「けど……」

「あーあー、けどもだってもいいから! さっさと上がった上がった!」


 何だか無性にもどかしくなった俺はわざわざ玄関口まで出て、二人を押し込んだ。

 キョドキョドしながら元は住んでいた家に上がる母さんと父さん。


 俺はそんな二人に「全くもう」とため息を吐いた。

 そんなぶっきらぼうとも取れる様子を俺は取った。


──ぶっちゃけ嬉しいのだ。


 両親の仕事の都合上、再会後もこの家に帰って来れないのは十分に理解している。

 しかし、それなりに寂しい気持ちはしていた訳で、故に二人の訪問は嬉しいものだった。


 そんな嬉しい気持ちを出すのは恥ずかしいと思って、呆れの色を纏わせていたのだ。


「──お邪魔しま〜す……随分と綺麗ね」

「ん?」

「特に深い意味はないのだけれど……柊仁は片付けが苦手なイメージだったから、ねぇ?」

「ああ、少し意外だ」

「どれだけ昔の話をしているんだよ……」


 俺が片付けが苦手だったのは……遅くとも小学校五年生くらいまでだ。

 そこからは得意になったのだが、そういえば知らないんだったな。


(俺がここまで成長してきた過程も知らないのか……)


 俺の成長において両親の知らない期間が長い事には色々思う所はあるが、その辺はこの前の邂逅で済ませた事だ。

 また申し訳なくされるのも厄介だし、お口チャック。


「それにしても……窓はピカピカ、床もツルツル……このソファも昔から使っているのに新品みたいに綺麗だわ」

「ん!?」

「確かに……プロレベルだな」


 いや、確かに怜音さん(プロ)がやったけども!

 俺の両親、勘が良すぎやしませんかねぇ?


「俺はあれから掃除を極めたんだよ! うん、そう!」

「それじゃあ……料理も?」

「料理?」


 オウムの様に言葉を返すと、我が母上はこくりと頷いて自分の鼻に指を当てた。


「とってもいい匂いがするわ。四川料理かしら? ……それもかなり本格的な」

「んあ……えーっと、それは……頑張ったんだよ」


 その匂い、さっき楓が作ってくれた麻婆豆腐以下諸々の匂いですねェ!

 食器やら調理道具はしっかり片付けた筈だけど、そんなに匂い残ってた?!


 もう、俺が頑張って料理も身につけたという事にするしかない。

 どう話を逸らそうか考えていたら、再び母さんの口が開かれた。


「柊仁って、いつの間にか髪の毛の質も変わっていたのね」

「うん? どゆこと?」


 そう言うと母さんは膝を折って腰を屈めると、何かを拾い上げて見せてきた。


「ほら、柊仁っていつの間にこんなに綺麗で長い髪の毛になったのかしらね?」

「あーね……」


 母さんが拾い上げたのは──キューティクルたっぷり、長く美しい楓の(ヘアー)

 「本当に凄く綺麗ね』と言いながら俺の髪の毛と見比べてくる母さん──これは言い逃れ出来ませんねぇ……。


 怜音さんが掃除を担当していたら絶対になかっただろうミス。

 この時ばかりは、怜音さんから家事を取り上げた過去の自分を呪った。


 俺は落胆で肩を落とすと、その様子を面白がるかの様に母さんは笑った。

 さっきまではキョドキョドしていたのに優位に立って笑い出した母さんに、『何だこの人』と思っていると我が母は笑いながら言った。


「──そんなに絶望しなくて良いのよ。私達は別に責めようと思っている訳じゃないから」

「……?」

「私達はその人にお礼が言いたいだけなのよ。だから、責めるつもりはない」


 なんてお礼を言いたいのか──そんな無粋な事は聞かなかった。

 聞くまでもなく、分かる。


「それにほら、この前言ってくれたじゃない──俺には最高の料理人が居るって」

「ああ……そう言えばそうだったかも」


 じゃあ俺は鎌をかけられている様に見えて、その実ただ遊ばれていただけ……という事か。

 別に怒る気はないらしい両親に安堵していると、父さんは部屋を見回して言った。


「今もこの家に居るんだろう? 呼んできてくれないか?」

「……分かった。少し待ってて」


 楓の作った髪の毛と料理の残り香……特に後者がある以上、どうせもう誤魔化しきれない。

 俺はため息を吐きながら脱衣所から浴室に向かい、その扉を開いた。


 するとその中には──湯の張っていない湯船に腰を落ち着ける怜音さんとその膝の上に座るミオ、そして外の椅子に座る楓が居た。

 俺の来訪に気付いた楓は浴室の扉から顔を出す俺を見て、不思議そうに尋ねてきた。


「──もうお帰りに?」

「いや、まだだけど……ちょっと来てくれない?」

「私が、ですか?」

「なんか、父さんと母さんが楓に挨拶したいみたいで……」


 俺は楓を浴室から引っ張り出すと端的に事情を話した。

 それを聞いた楓は『しょうがないなぁ』と呆れ半分な表情だったが、それでも快く引き受けてくれた。


 よし、これなら話は丸く収まる──そう思った束の間だった。


「──その子が挨拶するなら私もするっ! というか、私だけしたい!」

「ミオ!?」


 怜音さんの膝を飛び出し、浴室を飛び出し、ミオはそんな事を言ってきた。

 その表情は明らかにプンスカしていて、とても話を聞いてくれそうじゃない。


「親への挨拶って、それもう結婚前じゃん! 狐にだけはそんなことさせたくないっ!」

「いや、狐て……」

「確かに、そうとも捉えられますか……なら譲れませんね」

「なんで楓も好戦的に!?」


 交わす視線の間でバチバチと火花を散らし、今にも取っ組み合いを始めようとする楓とミオ。

 緊張から何十倍にも引き伸ばされた静寂の時間。それを破ってミオは楓に飛び掛かった……のだが。


「──柊仁〜? 随分遅いけどどうしたの?」


 ミオが楓に飛びついた瞬間、痺れを切らした母さんが脱衣所のドアを開けた。

 そのタイミングの良さと言ったらもう……開けられた扉から楓とミオは飛び出して、綺麗に床に転がりこんだ。


「あら、これは……ハーレムかしら?」


 そんな二人と脱衣所に居る俺、浴室に居る怜音さんに視線を送ると──母さんはぽつりとそんな事を呟いたのだった。

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