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厨二病が治ったら、可愛くておっぱい大きくて可愛い君に出会えたってマジ?  作者: ゆみねこ
元厨二病に楽しい夏休みがやってきたってマジ?(前半戦)
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女子がにゃんにゃんしている作品大好き

──第二回戦、第三回戦と続いたパーティゲームを終えて、俺と楓はキッチンに立っていた。


 第一回戦の一位二位である俺達は晴れて我が家の家事当番となり、今は夕食を作っているところだった。

 因みに今夜のご飯はカレー。以前にも楓の家で一緒に作ったのと同じだが、今回のは一味違う。


 今夜のカレーはスパイスから作る、ルーを使わないチキンカレーなのだ!──まあ、スパイスとかは楓が作業を担当するから、俺のする事はそんなに関わらないんだけど。

 怜音さんが居る以上手を抜いたものは作っていられないと、わざわざスーパーに行ってスパイスを入手してきた手間の掛けっぷり。


 因みにどうしてカレーになったのかというと──『明日の朝、この家に到着するのが遅れたら手の込んだものを作れないから、明日の朝食にもしてもらうため』らしい。

 それにカレーは一晩置いた方がより美味しいから朝食の分も、というのもあるらしい。


「──あ、そろそろ鶏肉出して良いですよ」

「ん? 良いです()?」

「くぅ〜……。い、いいですにゃん(・・・)……」

「ん、分かった」


 楓の指示で焼き色が付いた鶏肉を鍋から取り出し、その代わりに玉ねぎを入れた。

 ここまで何事も事件はなし。前回からあまりに成長した俺を見て、楓の目もキラキラと……キラキラ……きらきら?


 まるで子供が母親に自慢するかように、『すごいでしょ〜』と表情を浮かべて楓を見たのだが──彼女の手は止まっていてその目はどよ〜んと濁っていた。


「どしたん?」

「理由、分かりませんか……にゃん?」


 俺の問いかけに対して、楓は更に濁りを強くした──うわぁ、腐った魚の目みたいになってる……。

 というか出た! 巷で厄介と噂の『なんで怒ってるか分かる?』に類するやつ!


──まあ、今回の場合は楓のテンションが落ちてる理由は分かっているし、何も厄介ではないんだけど。


「えーと……その語尾と猫耳、それに尻尾が原因かな?」

「正解ですよっ、もう!」

「……けど、自業自得では?」

「──何か言いましたか?」

「い、いえ……」


 そう、現在の楓の語尾は『にゃん』。それに加えて頭には猫耳が生えていて、腰の方からは尻尾が生えていた。

 どうしてこんな事になっているか──決まっている、罰ゲームだ。


 家事が罰ゲームならぬご褒美だった第一回の後に行われた第二回。それで四位になった人の罰ゲームは猫耳と猫の尻尾を一日付ける事だった。

 そしたらご覧の通り、見事に楓が敗北。猫耳と尻尾が贈呈された。


 そこまではまだ良かったのだろう。しかし、嫌々ながらもそれらを身につけた楓はミオに相当弄られた。

 それが相当堪えたのだろう。ミオに仕返しをする為、第三回の罰ゲームに『語尾にゃん』を自ら指定してきた。


 そしたら……もうお分かりだろう?

 見事に楓が負けて、自分で掘った墓穴に見事に嵌った。


「……どうして私ばかりこんな目に遭わなきゃいけないにゃん?」

「ははは……運が悪かったんだよ」


 失意のどん底に居る楓に向かって俺は苦笑いを浮かべながら、俺は優しい嘘を吐いた。

 どうしてこんな目に遭ったのか──それは当然、楓のゲームの腕が原因だ。


 初めは俺の妨害を優先して本来の力を発揮していなかったミオに、ああいうゲームが苦手と発覚した怜音さん。

 前者は第二回から本領を発揮し出して、後者は時間を掛ける毎に持ち前の器用さで、不得手さをどんどんとカバーしていった。


 最初から全力だった楓にそんな二人に勝てる筈が無し。

 けど、『もうゲームはいやっ!』と楓になってほしくないからその事実は伏せていた──あれ? 本当に優しい嘘か?


「って楓! 焦げてる焦げてる!」

「……いいんですよ。こんな世界焦げてなくなってしまえばいい──フフ、そうしたら私は柊仁君と一緒に死ねます。ふふ、ふふふふふ」

「戻ってこい! そっち側(ダークサイド)に行っちゃダメだ! かえで、かえでぇええ!」


 今までじっくりと炒められていた数種類のスパイス達。それらが「苦しい、苦しいよぉ……」とでも言っているかのように黒煙を吐き出していた。

 しかし当の楓は濁った瞳でスパイス達を炒めて痛め続ける。


 俺は急いで楓から鍋を取り上げて、トマトの缶詰をぶち込んだ。

 そこからは緊急事態故に、料理下手ながら自分で試行錯誤して軌道修正した。


 そして、丁度それが済んだ頃、ダークサイドに堕ちていた楓が戻ってきた。


「──はっ、私は何を?」

「いや、何も無かったよ……何も」


 さっきの事は思い出さなくていいんだ……いや、頼むから思い出さないでくれ。

 俺と心中を図ろうとした楓はきっと本当の彼女じゃなかった──そう、楓はメンヘラじゃ……ないよね?


「って、凄い! カレーが出来ていますよ! あの柊仁君だけでカレーが!」

あの(・・)って気になるんだけど……まあ、いいや。楓から一通りのレシピは聞いていたから何とかなったよ」


 流石に手順さえ知っていれば、トマトの水分を飛ばした後にヨーグルトを突っ込んだり、塩を加えたりするくらいは出来る。

 俺が料理下手なのは包丁捌きと火の調整に味付け……妙にレシピ以外のものを加えたがる癖がある所為だ。


 包丁は使わなかったし、カレーはそこまで火加減に繊細になる必要もなし。

 あとは楓の言っていたもの以外は入れないように、我が左手に眠る余計な事をしたがる龍(エクストラ・ドラゴン)を完全封印していたから完璧だ──まあ、封印が解かれるギリギリを彷徨っていた所為で、手がプルプルしてたよ……禁断症状かな?


「それよりも楓……『にゃん』は?」

「あっ……はい、そうでしたね……」

「あっいや、ごめんごめん! 俺の前だけはそのままで良いから、だから綺麗な瞳を漆黒に染めないでっ!」


 余計な事を口走ったら最後、楓の目がスンッと一瞬にして闇より深き漆黒に染まってしまった。

 俺はその一瞬の転身にワタワタとフォローを入れた。また、心中しようとしてきたら困る。


「……最後にガラムマサラを入れたら完成、にゃん」

「あの、無理しなくていいんだよ?」

「無理してないにゃん。全然無理してないにゃん。全然無理してないにゃん」

「怖い怖い怖い! ホラー系に出てくる壊れたロボットみたいになってるって!」


 ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ……と同じ事しか呟かなくなってしまった楓。

 マジでホラーゲームとかのそれ。このまま続いたら事切れたように首ポキッとかなって、目から赤いの流れてくるんだて! ああ、想像しただけで怖くなってきた!──俺、ホラー無理なんだよ!


「柊仁君、配膳してください……にゃん」

「わ、分かりました」

「私はもう少し付け合わせを作っていく、にゃん」

「お、お願いしますっ!」


 俺はスパイスチキンカレーが盛られた三つの器を持って、キッチンから早々に離脱した。

 これ以上はあの場に居てはダメだ! 今の楓には会話をするという行為そのものが精神を削る!


「お二人さん、そろそろゲームはやめてくださ〜い。夕御飯の時間ですよ」

「ご飯!」

「もうそんな時間ですか。何のお手伝いもせずに遊んでいるだけですみません」

「いえ。元はと言えば、怜音さんに楽をしていただきたい一心で始めた事ですから」

「……お気遣い感謝します」


 申し訳なさそうな顔でそんな事を言ってきた怜音さん。

 しかし、それは無用なものだった。


「それよりも、随分と楽しまれていた様で良かったです」

「はい。とても楽しませていただきました」


 そう俺と楓が夕食を作りに離れた後も、ミオと怜音さんはゲームを続けていた。

 さっきまで行っていたパーティゲームのみならず、カートゲームやらもしていた。


 その表情たるや今まで見た事ないくらい熱中していて、キッチンから見て微笑んだものだ。


「ミオも随分はしゃいでたね」

「そりゃ、怜音がこうして遊んでくれる事も少ないしぃ〜」


 いじらしくも少し寂しそうに、そんな事を言ったミオ。

 しかしすぐにそんな様子も引っ込めて、口の端をニヤリと上げて聞いてきた。


「──それよりどう? あの子の様子は?」

「そりゃもう散々だけど……」


 俺が居なくなった事でどうやら闇落ちを回避した楓──ミオは彼女を眺めて面白そうにしていた。 


「料理中も大変みたいだったからね〜」

「見てたの?」

「いいや〜。けど、羞恥の赤だったり、よく分かんないけど青黒いのが漂ってたからっ!」

「あー……」


 そう言えばそうでしたね……というか、台所からテレビ前まで結構距離あるのに漂ってきたの? やっぱりそれだけ濃厚だった? 俺の命危なかった?


「噂をしてたら何とやら、にゃーにゃー猫ちゃんの登場だよっ♪」

「誰が猫ちゃんですか、猫はそっちでしょう?」


 二人が対面したら前のようなバチバチな雰囲気が再び展開される──楓さーん、言外に『泥棒猫め』って聞こえたような気がするんだけど気のせいかな? 気のせいだな!

 しかしミオはそんな事は微塵も気にしていなく、楓を指差して言った。


「──あー、にゃんって付けてなーい! いっけないんだ〜!」

「くっ……! どうぞお食べください……にゃん」

「ありがとにゃ〜♪」

「くうぅぅぅぅぅ! 死ね、死んでしまえっ!」


 ミオに揶揄われて地面に倒れバタバタと踠き出した楓。その末にとんでもない言葉が飛び出しているが……今回は仕方ないだろう。

 恥ずかしがってんだ、許してあげようぜ?


「この恨みは絶対に晴らすにゃああああんんん!」

「にっしっしっし♪」


 恥ずかしがってるなら助けてやれって? やだよ、にゃんにゃんしてる楓可愛いんだもの。

 滅多にない機会を楽しませてもらうよ〜、ぐへへ。


──因みに苦労の末に完成したスパイスチキンカレーは大絶賛だった。

 今回の話のオマケにあたる『にゃんぺろちゅっちゅで大惨事』をカクヨム様の方で限定公開エピソードとして投稿しました。していない方はユーザー登録をしたり、また『若干お金が掛かってしまう』という面倒があるのですが、闇堕ちして全然にゃんにゃんしていなかった楓が限定エピソードでは……? となっておりますので、ご興味ございましたらぜひ!

https://kakuyomu.jp/users/yuminyan/news/16817330653816880033

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少しお金掛かっちゃいますけど、それでも宜しければ……
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