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厨二病が治ったら、可愛くておっぱい大きくて可愛い君に出会えたってマジ?  作者: ゆみねこ
元厨二病に楽しい夏休みがやってきたってマジ?(前半戦)
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最近まーじで電気代高いからエアコン使うの渋る

──柊仁が一人すごすごと風呂に向かう姿を見届けると、ミオはその目線を怜音に向けて言葉を発した。


「──急だったのに対応してくれてありがとね、怜音」

「いえ、お嬢様のお役に立つ事こそが私の役目ですので。急な呼び出しだった為に、転んでびしょ濡れになってしまったのは落ち度でしたが……」

「あ〜……服が濡れてたのってそういう事だったんだ」


 お嬢様ではなくて、あくまで悪いのは自分であると反省する怜音にミオはその肩をぽんぽんと叩いた──自分に非があると言っても認めない事は経験から分かっているのだ。

 だが、見落としては若干の心苦しさがある。柊仁が空気を読まずに話に割り込んできたと思った怜音の行動、実際は全てミオの指示で動いていたからだ。


 流れとしては──状況の劣勢をすぐさま感じ取ったミオは、防犯用に持たされている超小型無線機で怜音に信号を送った。風呂場の隅々まで掃除していた怜音はそれを受けて、すぐに助けに向かおうと思ったのだが……床に置いていた石鹸を華麗に踏み抜いてすっ転んだ。それでも、冷静さを崩さずに状況を一瞬にして判断すると、柊仁の黒歴史ノートを持ってミオの元に向かったのだった。


「でも、やっぱり流石は怜音だね♪ この場に居なかったのに、交渉材料(ノート)を持ってきてくれるなんて」

「全ては経験から来る勘のお陰ですね。お嬢様にお仕えし始めてから、これで五年になりますし」

「そっか、あれから五年かぁ……時が経つのは早いねぇ」


 ミオと怜音が出会ったのは五年前──まだ、財閥やら何やらとは無縁のちょっと大きめな企業の娘として生活していた頃だ。

 その頃の怜音は今でも感情の起伏は感じづらいが、それ以上に人形の様に静かで何の感情も窺わせない──当時のミオに言わせれば『氷のお手伝いマシン』だった。


「あの頃は私も大変だったからねぇ……本当に助かったよ」

「いえ、私もお嬢様に多大なる影響を与えていただきましたので」


 天井を見上げて『大変だった頃』を思い出すミオと、自身の心の前に拳を当てた怜音。


 十年前のミオはとある事情で大変な日々を送っていた。それを支えたのが怜音であり、そんな中で今のような信頼関係を築いていった。

 そのお陰で、今や怜音は親のような温かい視線でミオを見るようになったのだが、それまでの話はまた別の機会に。


「ただあの物静かなお嬢様が、これ程に奔放なお方になられるとは思ってもいませんでしたけどね──やはり、恋というのは偉大ですね」

「……べ、別に恋なんかしてないしー」

「え?」

「え?」


 『いや、まさかまさか』という表情を浮かべる怜音に対して、『まさかまさか』と返したミオ。

 二人の終わない舌戦が始まろうとしたその時──部屋と廊下をつなぐ扉が開かれた。


「──たっだいま〜」

「おっかえり〜!」


 怜音の沸かした極上風呂で完全に完全にリセット……どころか完全回復を果たした柊仁が部屋に戻ってくると、ミオは怜音から瞬時に視線を外して柊仁にダイブした。


「なんか……ほっぺもちもちしてる!」

「怜音さんの沸かしてくれたお風呂が極上だったからね。どうやったらあんなに変わるのか……」

「お褒めに預かり光栄でございます」


 柊仁とミオの邪魔をしないように、一礼をすると怜音は気配や存在諸々を完全に消した。

 やはり、忍びの所業。消える瞬間を見ていた筈なのにタネがわからなかった柊仁は、今度習えるか聞こうと思ったのだった。


「──じゃあ……俺はこれで寝るけどミオはどうする?」

「私も寝る〜。今日は色々あったから疲れた……はあぁぁぅ」


 夏休みだというのに学校へ登校せねばならない柊仁には、そろそろ寝ないと厳しいお時間。

 それ即ち、ミオにとってもおねむな時間であり、ミオは眠気を表現するように大欠伸をした。


「それじゃあ……ミオはこの部屋で寝てね」


 柊仁は部屋に引きこもる為、先にミオに寝室を紹介した。

 その部屋は柊仁の両親が使っていた寝室。例の件で一時期、部屋にはベットが無かったが、今は新しく購入してたのが置いてある。


 ただ、置いてあるだけで放置されていたから一回も使っていない新品状態。

 柊仁が怜音に諸々の掃除を頼んでいた為、埃一つない完璧な状態だった。


「──えー、ピリオドと一緒じゃないのー?」

「一緒な訳ねぇだろ!? 俺をどれだけ信用してるんだよ?!」

「うーん、信用はしてないよ。受け入れる準備が出来てるだけで」

「信用されてないのね……」


 楓相手に暴走しかけた過去があるとはいえ、ミオのぺったんボディに興奮する訳ないだろうに──そんな口を滑らせたら、再び締め上げられそうなことを考えた柊仁。

 ただ、それ以上に彼の頭に引っかかっていたのが──


(触れたら火傷しそうだったから流したけど……一体何を受け入れる準備が出来ているんだろうなー。あは、あははは……)


──他意があったのかなかったのか、何気ない一言が柊仁を苦しめたのだった。


「それじゃあ……おやすみ、ミオ」

「うん、おやすみ〜」


 新婚みたいな調子で挨拶をして別れようとしたその瞬間、柊仁は思い出したかのように「あっ」と声を上げた。

 ミオが何かと思って振り返ると、柊仁は少し照れくさそうに頭を掻きながら言った。


「ミオの料理……すごく美味しかったよ」

「ひゅっ……!」


 柊仁から発された端的な言葉はミオの乙女な心に深く突き刺さり、彼女の頬をボンッと紅く染めさせた。

 それは自分でも自覚出来るほどであり、ミオは頭をブンブンと振るといつもの飄々とした笑みを取り戻して言い返した。


「も、もー! 急にそんなこと言うのは反則だぞっ!──それじゃおやすみーーー!」


 自分では取り戻せたと思っていたいつもの笑み、しかし実際は照れを全然隠しきれなかった。

 心の底から嬉しみが溢れ出して堪らない。


 最後には、呆然とする柊仁を残してピューッと走って浴室へと逃げていった。

 柊仁の目が届かない所まで逃げたミオは顔を覆ってしゃがみ込んで、一人静かに呟いた。


「あ、あれは……反則でしょ〜〜〜〜///」


 対女性経験値ゼロだった当時の柊仁しか知らないミオには、楓によって女の子の何たるかを仕込まれた今の柊仁は刺激が強かった。

 薄い胸板であるが故によく感じる心臓の高鳴りを噛み締めながら、ミオはしばらくその場でバタバタとしていたのだった──



★☆★☆★☆★☆



「──ふんふふ〜ん♪」


──時は進んでミオ襲来の翌朝、楓はご機嫌に鼻歌を歌いながら柊仁の宅へと向かっていた。


 楓との同居を理性崩壊的な問題で断ってしまったお詫びとして、『なんでも一つ願いを叶える』とメッセージアプリRainで夜に伝えていた柊仁。

 それに対して楓は『夏休みの間だけで良いから一緒に学校に行きたい』と頼んだのだった。


「柊仁君とがっこう♪ 柊仁君とがっこう♪」


 楓は柊仁と一緒に下校した事はあれども、登校した事はただの一度もなかった。

 これが初めての登校なのだ、そりゃテンションも上がる。


 しかも、途中まで父である武雄に送迎してもらった関係で時間はかなり早い。

 『泥棒猫』とそのメイドが居る事が唯一の難点だったが、それでも寝起きの柊仁をお世話出来るこの機会はなによりもご褒美だった。


(今朝のご飯は……日本人らしく和食でいこっかな? 白米と味噌汁に、焼き魚とほうれん草のおひたし……もう一品何か付けたいな)


 頭の中で朝の献立を組み立てていく楓、昨日は柊仁に何も出来ずに帰ることになってしまったから、楓の尽くしたい欲が最高潮まで高まっていたのだった。

 そんな調子で柊仁の家へと辿り着き、インターホンを鳴らした。


「──はい」

「あ……あ、貴女は……」

「一楓様ですね、柊仁様よりお話は伺っております」


 ウッキウキな楓を迎えたのはしゃっきりとしている怜音だった。

 その身体からはうっすらと調味料の香りがして、今まさに料理をしていたのだと楓は感じた。


「柊仁様はまだお部屋でお休みになられています。お会いになりますか?」

「あ……はい」


 色々と突っ込みたい事は満載だったが、出鼻をくじかれた楓は怜音の提案に素直に従った。

 寝起きの柊仁に料理を振るまったり、色々したかったのだがそれは出来ない……なら、せめても柊仁の寝顔を見て心を癒そうと思ったのだった。


 怜音に荷物を預けた楓はずんずんと柊仁宅の中を進んだ。

 その途中で『ここでお嬢様がお休みになられている筈です』と怜音に教えられて、別々に寝ている事に安心した楓は多少心に余裕を持ち直して柊仁の部屋の前に立った。


「──すぅぅぅ……はぁぁぁ」


 深呼吸をする事で全ての感情を落ち着けて、いつものスマイルを作った。

 いつ柊仁に見られても大丈夫な自分で接する──それが楓のモットーだからだ。


 全てがいつも通りとなった楓は部屋をノックした……が、返事がない。

 小さく「失礼します……」と言って、部屋の中に入った。


「うっ……寒い」


 胸以外に余計な脂肪が一切ない楓には少々寒すぎるくらいに、柊仁の部屋はクーラーによって冷やされていた。

 肌をすりすりと擦り合わせながら部屋の中に足を踏み入れると、柊仁のシングルベットの上には一つの膨らみが掛け布団によって包まれていた。


(こんなに冷やして……流石の柊仁君も寒いのでしょう)


 掛け布団に(くる)まっているのだろう柊仁の気持ちを考えていた。

 柊仁君が熱で倒れた時はクーラーを点けていませんでしたし、両極端ですねぇ──そんな風にも思いながら、その顔を拝もうと掛け布団を捲り上げた──すると……。


「ん?──なななな、なんですかこれはああああ!」


 掛け布団をめくり上げたその下には赤子のように穏やかな表情で眠る柊仁と──タンクトップ一枚にショーツいうとんでもなく無防備……では言い表せない、もういっそ裸に近い状態のミオが出てきたのだった。

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