表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
厨二病が治ったら、可愛くておっぱい大きくて可愛い君に出会えたってマジ?  作者: ゆみねこ
悩みを聞いたら、学年一のイケメンとクズ男の因縁が見えたってマジ?
65/92

教師だって成長していく、にんげんだもの

──事件の全てに決着をつけたあの日から丸々一週間が経過した。気付けば夏休みまであと二日となった本日だが、今日に至るまでには色々あった。


 まず、溝口さんが学校に来られる様になった。

 どうやら楓は俺に甘噛みをされた後に速攻溝口宅に突撃したらしく、俺は現場に立ち会えなかったのだが──


『本当にごめん、ごめんねぇ……かえで……っ!』

『ううん、私も気付なかった……ごめん』

『友達なんてならなければ良かったって、酷い事言っちゃったけど……、本当はあれは違くて……』

『うん、分かってる。私の為に言ってくれたんだって』

『本当……? じゃあ私達……』

『うん! 友達……いや、親友だよ♪』

『かえでぇ〜……!』


──からの全力ハグ……みたいな事があったらしい。


 想像するだけで、実にてぇてぇ……ゴホンっ、感動的な光景である。

 現場に立ち会えなかったと言ったが、寧ろ俺はいない方が良かったのだろう。


 そして、学校に来た溝口さんとは反対に塩谷メイは学校に来なくなった。

 斗弥の活躍後、事前に示し合わせていた通りに銀堂先生は速攻で上に報告を上げ、塩谷メイは滞りなく無期限停学となった。


 本人や家族は相当抵抗したようだが、見事に突っぱねたらしい。

 その時の手腕たるや……その場を目撃した先生一同に銀堂先生は崇め奉られていた……というのがもっぱらの噂だ。


 そして最後に──


「──点数に間違いがあったら報告しに来い。なければ、このまま結果が出るぞ〜」


 ホームルームの始まりで配られた異様に横に長い紙。そこには教科の名前の下に20点や30点そこらの数字が書かれている。

 そう──期末考査があったのだ。


 結果はご覧の通り、惨憺たる有様。血のような赤点だらけの出血大サービス──あれ? 使い方違うような……。

 まあ、とにかく期末考査は死んだ。理由は色々あるが、斗弥の件で色々動いていたから……嘘です、単純に能力不足でした。


 しかも何とも悔しい事に、全教科赤点の俺に対して楓は数学と理科系統だけなのだ。

 散々な結果を前に慰め合おうとして彼女の元に向かった時の絶望たるや……真面目に不正を疑った。


 しかし──


「──まあ、ココ(・・)の差ですよ♪」


 頭を指先でちょんちょんと突きながらそんな事を言われてしまったら、俺はすごすごと引き下がるしかなかった。

 一緒に勉強をしていて、楓だけが理解出来る問題というのは確かにあったのだ。


 イラッとするよりも『まあ、確かにそうか……』とみょうに納得してしまい、割と普通に落ち込みながら席に戻ったのを思い出す。


 この点数表を見ていると嫌な記憶を思い出す。

 点数の間違いだけないか確認して、すぐさまテストを纏めてあるファイルに確認用の点数表を綴じて封印した。


 そんな封印の様子を見ていた銀堂先生はフッと笑って、正面に向き直った。

 大体皆んな、確認し終えたのだろう──銀堂先生は今まで閉じていた口を開いた。


「──中学から高校へと大きく環境が変わり、その変化に慣れる為の最初の一学期がようやくこれで終わる。お前達は沢山の困難と苦難を乗り越えてここに立っている筈だ──そこで、だ」


 いきなり俺たちを褒め始めた銀堂先生はそこまで言うと、勿体ぶるように一呼吸置いた。

 まず間違いなく良い事が告げられる──俺達は言われた言葉からそう読み、ワクワクという雰囲気が教室中に一気に広がった。


 そのワクワクが最高潮に達した時、銀堂先生は言った──


「──席替えをしようと思う」


 その言葉が告げられた瞬間、教室中で歓喜の声が上がった。

 聞こえる声の全てが「やっとキターー!」や「次も近いと良いね!」と皆んなが皆んな待ち望んでいた事が伺える。


 当然といえば当然だ──このクラスを担当している公民教師が『名前と顔が一致するまではそのままの席で』と言った所為で、入学式から七月終わりの今日までずっと咳は名簿順だったのだ。

 三ヶ月余りも周りが同じメンバーだと流石に飽きるし、ずっとまだかまだかと言われていたのだ。


 そんな状況だったが故に、このクラスの中で席替えというのは極上のご褒美なのだ。


「席替えに関して、ようやく関谷先生が了承してくれた。……という事で、席替えするぞ!」

「「「おーーーーー!」」」


 クラス中が『席替え』に沸き立つ中、一人の男子がとある事を尋ねた。


「くじ引きとかですかー?」

「え? こっちで全部決めたが?」

「「「え?」」」


 くじ引きであるか否か、それがはっきりした瞬間──沸き立っていた空気が凍りついた。

 瞬間冷凍魔法が使われたのかと錯覚するくらい、本当にピタッ……と空気が止まった。


「え? くじ引きの方が良かった?」

「いやまあ……、普通はくじ引きかなって……」


 意外なものを見る目でこちらを見てくる銀堂先生だったが、逆に意外な目で見返されていた。

 まあ、生徒側からしたら席替えくじ引きは学校生活においてもかなり重要な位置付け。


 それが無いというのはなんともまあ残念な事なんだろう──因みに俺は、中学から誰が隣になろうと自分の世界に没頭しているだけだったからあまり思い入れはない。


「そっか……くじ引きの方が良いのか。結構頑張って作ったんだけどな……」


 銀堂先生はあからさまにガッカリとした様子で今まで手に持っていた紙を見下ろしていたのだが、やがてそれを教卓に置いた。

 それを見てクラス中が「ほっ……」となっている中で、俺は少し疑問に思って席を立って、そのまま銀堂先生の元へと歩みを進めた。


 怪訝な目をクラス中から向けられる中、銀堂先生の隣を通ると教卓に置かれた紙を見た。


「──こ、これは……!」


 そこに書かれていたのは銀堂先生が決めたという新しい席順。俺はそれを見た瞬間、目を見張った。

 何故なら──俺の名前が書かれている後ろには楓の名前が……しかもそれだけでなく右横には照示、右後ろには斗弥の名前が入っていた……何故か左隣は空席になっているんだが。


──他の所に目を向けてみると、どこも普段仲良しグループとして普段固まっているメンバーが近くの席になっていた。


 目を見開いて動かなくなっている俺を不審に思ったのか、黒板ド真ん前に座っていた男子が紙を覗き込んで……絶句した。


「どうにかこうにか、仲良い奴らが固まる様に作ったが……くじ引きが良いならそっちで決める……」

「──いえっ! 俺はこのままが良いと思うっす!」


 新しい席順が書かれた紙はいつの間にか俺の手を離れて、生徒の手から生徒の手へとどんどん渡されて教室中を回った。

 その結果、それを見た中の一人の男子が『これで良い』と声を上げた。


 一度(ひとたび)上がったその声はどんどん波及していき、クラス全体が肯定派へとひっくり返った。

 だが、あまりに早すぎる掌返しに、気を遣わせてしまったと思ってしまった銀堂先生にある女子達は言った。


「銀堂先生、サイコー!」

「先生、あまり私達に興味無いと思ってたけど、こんなにしっかり見てくれていたんですね!」

「よっ、気遣い日本一!」


 本人も気にしていた事だが、銀堂先生はあまりに生徒と打ち解けられていなかった。

 先生としてのどう振る舞えばいいか分からない──と、俺に言ってきたくらいだ。


 しかし、それでも銀堂先生は俺ら生徒と打ち解けるにはどうしたら良いのか、ずっと考えてきたのだろう──『銀ちゃんで〜す♪』とか迷走もしていたし、本当に苦心したんだろう。

 そして、その苦心の末に辿り着いた始めの一歩が──この席替え。


 それが見事にハマり、クラス中からの評価を高める事に無事成功したらしい。

 クラス中から歓声を受ける銀堂先生は戸惑いながらも嬉しそうだった。


 その様子を見て、子供の俺がこんな事を言うのは烏滸がましいと思うが──良かったじゃんと内心で告げた。


「あ、あと席替えの他にもご褒美……とは少し違うんだがビックイベントが一つ──明日、アメリカから転校生が来るぞ」

「「「アメリカ!?」」」


──銀堂先生はあたかもついでかの様に、そんな重大なイベントを告げたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

少しお金掛かっちゃいますけど、それでも宜しければ……
↓下のタイトルを押すと限定エピソードに飛べます
にゃんぺろちゅっちゅで大騒動(81話おまけ)
水風呂混浴で「楽にしてあげるね♡」ってナニ!?(91話おまけ)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ