春は名のみのか
零下に落ちた弥生夜
殯宮に籠って
吹きすさぶ風の音を聞く
虎落笛の時季は終わっただろうに
氷雨は窓を叩き
眠らせてもらえそうにない
ソファの上で君の愛称を
翻訳ソフトに投げ込むと
「自分の鍵」と返ってきた
ならば相方の私は「錠前」
ずっしりとソファに沈み込み
「鍵穴は錆びるのね」と苦笑してみる
君の名をスマホに打てば
予測変換は楽しげな
カラオケの絵を上げてくる
君に音痴と笑われた私は
ソファの上に不貞腐れ
「もう困らせないよ」と口を尖らせる
雨が降ろうが寒かろうが
「いい天気だ」と笑顔を作った君
下手な書き物の誤字が後押しする
ーー春花の美の香ーー
夜が明けたら杏の花の下
君の影に出逢いに行こう
亡き夫の名前がわかりましたでしょうか?
クイズ代わりにどうぞ。